4-3話
「お褒め頂きありがとう」
「褒めてないし。魔獣使いとしては努力と才能の無駄遣いすぎるぞ!お前なんかプロ野球ドラフト会議にかかってしまえ!」
プロ野球があるかどうかは謎だが。
「僕の凄さが分かってきたようだが、残念ながら時間だ。そろそろ君を倒さないとね。とどめはビーフジャーキー(大)だ。避けてみろ!大リーグ仕込みの俺のツーシームを!」
「なぜ大リーグを知ってる!」
俺は素早く後ろに飛びのき、すぐ左に走り、さらに斜め左後ろにジャンプし、ジグザグ走行で右斜め前に走り込んだ!これだけかく乱すればいくらコントロールが良くても当たるまい。ふっふっふ
「うがぁ!みぞおちにビーフジャーキー(大)がぁ!息できない・・・はあはあ、あんなに動いたのに、俺の避けた先を読んでビーフジャーキー(大)を投げるとは!恐ろしい奴だ!」
「いやいや、お前、動き回って最後に元居たところに戻ってきてるぞ」
「あれ?本当だ!」
そして、足元に犬が飛び込んできた。そのままビーフジャーキー(大)を咥えて逃げて行った。
「ぐぁ!」
味方の女性兵士はお約束とばかり、俺を袋叩きにした。ヤバイ、もうだめかも。
「はあはあ、犬に触ってもないし、食べる邪魔もしてないし。何なんだ!お前らそれでもこの国の兵士か!」
俺は、周りを取り囲んでいる女性兵士達に言った。
「ざーんねーんでした!私達はこの国の兵士ですけど最優先されるのはイケメン様の命令なのよ。筋肉バカ王よりイケメン様の方がかっこいいからあたりまえでしょ」
「え?」
「まだわからないの?私たちはイケメン・ブリーダー様のしもべ。ファンクラブナンバー60811番から60820番よ!今まで気づかなかったの?ばーかばーか!(笑)」
「おのれ!女性だと思って反撃しないでやったのに!」
本当は、反撃する力が無いのだけど。
「さあ、イケメン様!勇者は私達が弱らせておきました。いつも通りトドメをお願いします」
「ありがとう。君たちのことは覚えておくよ!(ウインク)」
「「「「「「キャー!」」」」」」
どこのアイドルコンサートだ。こいつ、いつもこんな感じでファンクラブ会員にやらせていたんだな。くそう、こんな上辺だけのインチキ魔獣使いに負けるわけにはいかない!
その時、俺のメガネの内側に文字が浮かび上がった!
【スキル】[コンビニ]発動。
やっと、きたーーーーー!
「ピッ」
左手に浮かんだバーコードをスキャンすると、緑色のお皿が現れた。
「今更、盾ですか。そんな小さな盾が何の役に立つというのだ?往生際の悪い勇者だな。行け、シルバーウルフ!」
お約束のビーフジャーキーが俺に向かって投げられた。同時に犬がこちらに走ってきているが先ほどまでの勢いはない。イケメンの方をチラチラと見ながら、義務的にこちらに走って来ているようだ。今なら犬の心が俺にも分かるよ、
もう、さっきのビーフジャーキー(大)でお腹いっぱい!
俺はチャンスとばかり緑色の皿を思いっきり遠くに放り投げた!そう、転送されてきたその皿の名は
『フリスビー』
突然投げられたフリスビーを見つけた犬は、しっぽを振りながらその後を弾丸のように追いかけて行った。うむ、本能には抗えないようだな。
「ちょ!シ、シルバー!どこ行くんだ!皆、シルバーを!」
「わかりましたわ!皆でシルバちゃんを連れ戻しに行くのよ!そしてイケメン様にご褒美を頂くのよ!」
「「「「「おー!」」」」」
飛んでいるフリスビー、それを追いかけるミチュア・ダックスフント、さらにそれを追いかける女性兵士コスプレの人達。
「はっはっは!魔術使い!お前の仲間は誰一人居なくなったぞ!一対一の勝負だな!」
俺はここぞとばかり勝負を仕掛けることにした。だって、あいつひょろひょろで弱そうだし。犬と女性兵士が居なければ俺でも勝てるかも。
「いやいや!魔獣使いを魔獣が居ない時に攻撃するなんて、そんなことを勇者がすべきではないだろ!卑怯者になりたいのか!」
勇者ヨシオは元から卑怯な奴だ。勝てなくても、せめて奴のおしゃれ服をビリビリにするとか汚すとかして、嫌がらせしようと考えていたことは秘密だ。
「な、何を言っている!元はと言えばお前が卑怯な・・・」
犬がフリスビーを咥えて戻ってきた。
「シ、シルバー!戻ってきたんだね!ふははは!さあ、勇者よ、いざ勝負!あれ?」
犬は魔獣使いを無視し、俺の目の前まで来て、お座りをした。