4-2話
この世界にもミニチュア・ダックスフントが居たのが驚きだが、それなら相手は普通の犬なのになぜ男性兵士は倒れているのか。弱そうに見えるが、あのひ弱そうなイケメン、強いのか?
「せっかく城まで来たのだ。当然、お前が僕の相手をしてくれるのだろうな勇者よ」
「ああ、待たせたな。お前の実力を見せて頂こう魔獣使いよ」
「行け!シルバー!」
いきなり、魔獣使いは俺に向かって何かを投げつけた!何かが俺の顔に当たった。
「痛てぇ!なんだよ!魔獣使いが飛び道具っておかしくない?」
「はっはっは!油断した奴が間抜けなのさ」
その瞬間、ミニチュア・ダックスフントが女性兵士の足元を抜け、俺に襲い掛かってきた。俺の顔に当たって足元に落ちたモノ、それは・・・
ビーフジャーキー!(いわゆる干し肉)
「魔獣使いと言いながら、エサ投げてるだけじゃないか!お前ら全然心が通じ合ってないぞ!」
俺は足元のビーフジャーキーに喰いつこうとしているミニチュア・ダックスフントを足でガードしようとした。
「ぐぁ!」
いきなり味方の女性兵士が俺に襲い掛かってきた。
「何するんだよ!お前味方だろ!」
「うるさいわね!あなたいくら勇者でもシルバちゃんを蹴るとか酷くない?」
「そうよ、そうよ、弱い犬イジメなんて勇者の風上にも置けないわ」
「可愛らしいシルバちゃんが怪我したらイケメン・ブリーダー様も悲しみますわ」
「シルバちゃんやイケメン様の邪魔をする人は全て敵よ!みんな、敵は殲滅よ!」
女性兵士が次々と俺に襲い掛かり、今まさに、俺はズタボロにされつつある。女性兵士は女性とはいえプロの兵隊だ。そもそも単なるコンビニ店員だった俺には反撃する能力が無い。
「あはっはっは!弱いなぁ勇者は。というか僕が強すぎるのかな」
俺をズタボロにして満足したのか、女性兵士達は再び犬と戯れている。
「おい!魔獣使い!卑怯じゃないか!しかも、シルバーウルフと聞いていたのに単なるミニチュア・ダックスフントじゃねぇか!」
「おやおや。負け犬の遠吠えかい?しかも弱いからといって僕を嘘つき呼ばわりするとは情けない勇者だ。いいか、あの動物の名前は魔獣シルバーウルフだ。俺が名付けたのだ!ふはは!頭いいだろ」
「何がふはは!だ。インチキ魔獣使いめ!ペットに名前つけただけじゃないか!魔獣ですらないし!」
しかし、このままで味方の女性兵士に俺が攻撃されるだけで、相手にダメージを全然与えられていない。城内のネコ好きな味方を集めるべきか!とにかく、ここは一旦退却だ!
俺は、城に入ろうと走り出した。すると、その俺の目の前にビーフジャーキーが飛んできた。そして、足元に犬が飛び込んできた。今度は犬に足が当たらないよう超絶反射神経でなんとか避けた。
「ぐぁ!」
またしても味方の女性兵士が俺の前に立ち塞がった。
「何するんだよ!犬は蹴ってないぞ!」
「あなたがそこに居るだけでシルバちゃんが落ち着いてお食事できないわ」
「何だそれ!お前、悪役令嬢か!くそう!しかしビーフジャーキーさえ避ければ大丈夫なはずなのに。ならばあっちだ!」
俺は別の方向に走り出した。しかし、その方向にもビーフジャーキーが正確に飛んできた。そして犬が走り込んできた。犬に対応している間に女性兵士が俺に襲い掛かる。
俺はあきらめず逆の方向に走り出した。しかし、またその方向にもビーフジャーキーが正確に飛んできた。そしてまた犬が走り込んできた。女性兵士に道を塞がれる。
「くそう!魔獣使いのくせに、なんてコントロールが良いのだ!」
「はっはっは!僕は天才にもかかわらず日頃から鍛錬を欠かさないからね」
「天才にも関わらず努力も欠かさないのか。犬と一緒に血の滲む努力をこれまでしてきたのだな。敵ながらあっぱれだ」
「飯を食う暇があれば投球練習、剣を練習する暇があれば投球練習、勉強する暇があれば投球練習、魔法を覚える暇があれば投球練習、犬とコミニュケーションとる暇があれば投球練習さ」
「それ努力の方向違う!魔獣使いとしておかしいから!しかも犬とか言ってるし!魔獣の設定どうなった!そして、せめてコ犬とミニュケーションは取れ!」
努力と才能の無駄遣いすぎる魔獣使いであった。