表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

6丁目の勇者 ユリエ


 私の特技は魅了だ。

 勇者として異世界に召喚された際、そんなスキルが備わっていた。

 特技が魅了って。


 ようするに、人間も魔物も動物もこのスキルを使用するとあら不思議。敵対しててもみんな私にメロメロになっちゃうってわけ。

 だったら魔王とやらにこのスキルを使って魅了しちゃえばいいじゃんと思うだろうけど、なぜか魔王には効かないんだなこれが。


 そう、1回試してみたのよ。ぜんっぜんダメだった(笑)


 他の魅了された魔物たちを盾にしてその場から逃げ帰ってきたわけだけど。やっぱそんな怪しい技法より正攻法で行くしかない。


 そんなわけで、また魔王城へ乗り込んだ私達討伐メンバーは今まさに魔王相手に戦闘を繰りひろげていた。


「ユリエ!連携技いくぞ!」

「ほいきた!任せて!」

「マリアちゃん、ミッチに回復お願い!」

「はいです~!」

「マイルズ!そっちはどうだ?」

「大丈夫ッス!行けるッス!」

「ミッチさん回復しました!」

「サンキュー、マリア!」


『ギャガガガガ!グエッグエ!!』


「ねえ、魔王なんて言ってるかわかる?」

「「「「さあ?」」」」

「ちょっと~なんで魔王の言語おかしくなっちゃってんのよ~!?」

「前来た時は普通に喋ってましたよね~?」

「ユリエが魅了なんかするからおかしくなっちまったんじゃねえの?」

「ちょっと!私のせいにしないでよ!」

「あ、なんかヤバいのきそうッスよ!」


『グロロロロロロ!!ペッペッペ!!』


「「「「……」」」」

「…なあ、今なんか吐き出したよな?」

「き、気のせいじゃない?」

「いやいや、アレがそうじゃない?」

「うわあ~ほんとですねえ」

「ヤバいっす!アレは今日の晩御飯のおかずにと思って作っておいたやつに、ガハッ!」

「ヤバいのはあんたの頭でしょ!?思ったことをすぐ口にすんじゃないわよ、このバカチンがあ!」

「んん~?ユリエさん…なんか動いてますよ~アレ」

「なんですって!?」

「おいおい、こっちに…というか、ユリエの方に這っていってるぞ!」

「ぎゃ!なんで私!?」

「「「「…魅了?」」」」

「はああ!?あんなグロいものまで魅了しちゃうの!?っていうかアレ生き物じゃないよね?」

「さあ…?」

「どうだろう?」

「魔王の分身とかですかねえ~?」

「みんな何言ってるんスか!動いてるものはみんな生きてるってことッスよ!」

「いやああああああああ!!!!!」

「あ!待てユリエ!」

「待ってくださ~い!」

「こらユリエ!武器を置いて行くな!」

「ああ!待って!みんな薄情ッス!!」


 ハアハアハア。

 何アレ?絶対生き物じゃないし!あんなのに好かれても困るし!

 あれ?もしかして私の弱点がアレだって魔王に知れちゃった!?

 まさか…今度魔王のとこ行ったらアレがわんさか出てくるとか!?


「みんなごめん。実家に帰らせてもらいます!」

「「「待て待て待て」」」

「ええ!?待ってくださいよユリエさ~ん!」

「無理だから!アレ、もう生理的に無理だから!!」

「ううっ、わかります~!私も無理です~」

「でしょでしょ?マリアならわかってくれると「でも逃げてはダメですよ~」」

「…マリア。この裏切者があ!!」

「ひ~!」

「はい、どうどう」

「私は馬かっ!」

「まあまあ。ユリエにも苦手なものがあったんだな」

「ッスね!」

「アレを好きな奴がいるならここに連れてこい!」

「しっかし、魔王も奥の手出してきやがったな」

「え?アレ奥の手なんですか~?」

「きっとユリエのことリサーチ済みだったんじゃねえの?」

「かもな」

「さすが魔王ッスね!魅了されてない割にストーカーッスか?」

「とりあえず、一旦宿屋に戻ろう」

「だな」

「ですね~」

「ッス!」

「実家に…」

「「「「駄目」」」」

「ううっ。ぐすん」



 勇者になって初めて、心底うちに帰りたいと思った。

 ちゃんとした生き物以外は戦闘お断りよ!



---------------



 私たちは常連宿屋でお風呂に入り疲れを癒した。

 残念ながら、体は癒されても脳内は癒されなかった。



「はう~、久しぶりのお風呂気持ちよかったですね~」

「そうね…」

「お、そっちも風呂上りか?」

「はい~」

「うん…」

「やはり熱い湯に浸かるは気持ちいいな」

「そうッスね!今日の晩御飯があれにならなくてよかっ、グボッ!」

「もう!また鮮明に思い出しちゃったじゃないのよお!!」

「はいはい、どうどう」

「また馬扱い!」

「まあ、しょうがねえよ。しばらくは残像に悩まされるかもな」

「ううっ」

「ユリエさん、なるべく違うこと考えましょう~」

「そ、そうね…」

「ということで、飲みに行くッスよ!」

「「だな」」

「ですね~」

「うん。そうしようか」



 私たちはアレを忘れるために、宿屋の1階にある食堂で朝まで飲み明かした。

 そして、みんなが酔いつぶれた頃を見計らい実家へ逃亡しようとしていたところを、朝風呂から帰って来たミッチに見つかり半日お説教をくらったのは言うまでもない。乙女を馬扱いとか!

 魔王だけでなく、こいつらにも魅了は効かなかったのである。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ