表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

2丁目の勇者 ゲンジ

 俺は今、異世界に来ている。

 なぜかというと、俺は勇者で、村を襲っている魔獣を退治しないといけないからだ。


 目の前には、水牛を二足歩行にした感じの巨大な魔獣が立っている。こちらを真っ赤な目で睨み、牙をむきだしにして口から涎をたらし、俺を威嚇しているようだ。


 俺は速さと攻撃が二倍になる呪文を唱えながら、剣を両手で握り直す。魔獣が飛びかかって来たのを軽くかわして相手の懐に入り込み、すかさず喉から剣を突き刺し脳天を貫いた。そのまま背負い投げする感じで地面に叩きつける。魔獣はピクピク痙攣したあと、息絶えた。


「ふう」

「ゲンジさん、お疲れ様です!」

「おう。そっちもお疲れ~」

「今回は早く戻れそうですね」

「そうだな。日も昇り始めたし、後は聖水撒いときゃなんとかなるだろ」


 仲間たちと一緒に、聖水を撒きながら村の周辺を見回る。


 俺が飛ばされたこの世界は、ひと月ほど前に魔王を討伐したばかりだ。今はこうして生き残った小クラスの魔物を一掃している。強大な魔王という存在を失い、魔物達の力は衰えはじめてはいるが、戦闘経験のない一般人には倒せる相手ではない。


 この世界の魔物は、今のであらかた片付いたな


 そう思いながら、俺は置きっぱなしにしていたリュックを背負い、仲間たちに集合をかける。


「みんなお疲れさん。たぶんさっきので俺の手がいるクラスの魔物は最後だと思う。スキル使って世界全体を確認したから、まあ、間違いないだろ。というわけだから、俺は元の世界に戻る。後のことはよろしく頼むぜ」

「「「はい!ゲンジさんお疲れさまでした!」」」

「おう、みんなも達者でな!」


 そう言って俺は呪文を唱え、王都へ瞬間移動した。街で買い物をしてから城へ向かう。衛兵に軽く声をかけ城内に入り、途中出会った顔見知りの者に手を上げながら挨拶をして、王のいる部屋に入った。


「おお。ゲンジ殿」

「こんちわ王様。今回で俺の仕事は終了するんで、元の世界に帰ります」

「そうか!ごくろうであったな」

「またヤバくなった時に呼んでください」

「うむ。そなたには苦労をかけるが、よろしく頼む」

「これが勇者の仕事ですから。じゃ、転移の先生をお願いします」

「宰相!転移魔法士をこれへ」

「は!」


 そうして俺は、約2か月ぶりに元の世界へ戻って来たのである。


 とりあえずシャワーを浴びて小奇麗にする。むこうでためこんだ汚れた服を一気に洗濯して、埃っぽい部屋の掃除をした。たまった郵便物に目を通し、ゴロンと畳の上に寝転がる。


「あ~疲れた。何かうまいもん食ってビール飲みてえ!」


 そう呟いて勢いよく立ち上がると、財布とスマホをジーンズのポケットに突っ込み、俺はアパートの部屋を出た。

 近所の食堂に入ると、顔なじみのこの店のおやじさんが声をかけてきた。


「おう久しぶりだな」

「しばらく勇者業やってたもんで」

「そいつぁご苦労さん」

「生一つ。あと何か適当にうまいもん見繕って」

「あいよ」


 カウンター席に座り、置いてあった雑誌を何気なく手に取る。

 『月刊勇者』?なんでこんなもんがこの店に…


「それ、お前載ってるぞ」

「へ?」

「その、ベスト100ってところ」


 俺はパラパラとめくり、「国内人気勇者ベスト100」のページで手をとめた。


 『第40位 ゲンジ 勇者歴15年』

 

 おお、本当だ。俺、人気なんてあったのかよ。

 しかも40位って。すごくね?


「ほい、生お待たせ。あと、これな」

「ん。ありがとう」


 とりあえずビールをあおる。喉を潤したところで、出された料理に手を付けながら、俺は雑誌に視線を落とす。

 あ。ムネチカさん1位だ!やっぱそうだよな。あの人最強で最高だもん。マジ尊敬するわ。お、他にもうちの町の奴らが載ってるじゃん。


 俺は『月刊勇者』を酒の肴にしながら、うちの町の勇者ってすげえのな、と思った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ