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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第五章 幻の地下都市
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いろんな意味でヤバい


 正直、円卓会議で見た脳内光景は、俺自身は一部納得できない部分があったし、大半は幻のようなものだと思っている。


 ただ、あの光景からして問題の場所が地下にあるってことだけは、なんとなく想像していた。

 だから、連れて行かれた先が崩れかけの民家の中であり、そこの地下室だった――というところまでは、特に意外だとは思わなかったのだ。


 ただ、問題の地下室は広さけは相当な面積だったものの、見事に空っぽだった。

 いち早くきょろきょろしたユメが、「パパ、なにもないよ?」と先んじて意見したほどだ。

 しかし、アデリーヌがあっさり教えてくれた。




「ここはご覧の通り空っぽなのですが、わたしがマジックスキャンで調べたところ、ここのさらに地下が見通せなくなっているのです」


「見通せない?」

 アデリーヌは小さく頷く。

 ちなみに、早速サクラがなにやら小さく呪文を唱えていた。

 そう言えば、こいつも魔法が使えたな……日頃、ほとんど刀での戦いがメインだが。


「本当だわ!」


 しばらくして、サクラもぱっと俺を見た。

「地下に、奇妙な抵抗があって……見通せなくなっている。何か、こちらの魔力探知を防ぐ仕掛けがあるみたい」

「だから?」

「だから、じゃないわよっ。つまり、ここの地下には明らかに何かあるってこと。侵入者を想定して、結界みたいなのを敷設してあるんだものっ」

「それに、なにより奇妙なのは、この地下室の床です」

 アデリーヌが、真っ黒な床を爪先でコツコツ叩いてくれた。


「音の反響がおかしいっ」


「ええ、ええ。この黒い床は石床などではなく、どうも未知の金属でできているように思えます。暗いからわかりにくいですが、光沢もありますし」

「……な、なるほど」


 一応は頷いたものの、それを教えられたところで、俺も困るんである。

 どうしろと言うのか?

 しかし、アデリーヌはもちろん、ユメやサクラが熱い視線で俺を見るし、後から続々と下りてきたメイドさん達も、同じく俺に注目する。


 期待する相手を間違っているだろうと思うんだが、しかし言い出しっぺには違いない。

 やむなく俺は、あの円卓会議でやったように、周囲の石壁に手を当て、目を閉じてみた。そのままゆっくりと部屋の内側を歩く。


 これで何もないといよいよお手上げだったんだが、一カ所、どうも気になる部分があった。

 そこを通過した時、掌にぴりっと来たのだ。




「うわっち!」


 慌てて手をどけたものの、目を開けても周囲と同じ普通の石壁である。

「おかしいな、目を閉じてた時、確かにこの向こうに――」

「レージさま、失礼します」

 アデリーヌが一礼して進み出ると、俺が撫でていたところを手で何度か叩いてみてから、おもむろに大きく腕を振り上げ、気合い一発、ドガッと肘鉄をぶつけた。


「はっ!」

「ちょっとおっ」


 俺は彼女の細腕がぶっ壊れた心配をしたが、逆だった。

 今の攻撃が当たった瞬間、嘘のようにバラバラと石壁の一部が崩れてしまう。

 な、なんというハンマー肘鉄っ。

 今のを脇腹に食らったら、肋骨が全部オシャカになってるぞ……。

 だいたい、崩れた石の塊を見ても、ここは結構な厚みの壁だったみたいなのに、なんとまあ、あっさりと!


 しかし……その石壁の奥に、床と同じく黒い金属が見えて、俺は密かに息を呑んだ。

 しかも、ちょうど手が届くような位置に、白い円形が描かれていたのだ。




「ユメ、ちょっと」

「はぁい!」


 手を差し伸べてユメを抱き上げ、その白い円形に手が届くようにしてやる。

 閃いたのは、前に金属製のスーツケースを開けた時の記憶だっ。これも、ユメの掌でなんとかなるんじゃないか!

 冴えてるな、俺っ。

「叩いてみてくれ、ここ」


「いろんな意味でヤバい! きゃははっ」


 訳のわからない掛け声と共に、ユメがペシペシと円形部分を叩く。

 しかし……変化ナシ。

 なんだ、今度は違うのか……。


「プリンセスじゃなく、レージが掌を当ててみなさいよ。なんでその子が先なのっ」


 サクラが横からじれったそうに言う。


「いや、俺の手なんか当てたところで、脂汚れが付くだけ――おいっ」

「気安くパパにさわっちゃ、だめなのよっ」


 二人分の抗議を無視して、サクラが俺の腕を引っ掴み、クソ力で持ち上げて、ばしっと白丸に叩きつけやがった。



「いてっ。お、おまえなあっ」



 俺は思わず文句を言いかけたが、しかし今度ばかりはこいつが正しかったらしい。

 ガクンッと足元が揺らぎ、いきなり床が沈下し始めたからだ。

 そう、この地下室そのものがエレベーターと化したように、いきなり黒い床がぐんぐん下降し始めたのだ!


「おいおいおいっ」

「きゃははっ」


「ほら、ご覧なさいっ」


 ドヤ顔で腕組みするサクラに、俺は喚き返す。


「そんな場合かっ。ヤバい場所に直行だったらどうする!?」


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