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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第四章 聖母騎士団
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サクラの微微デレ

「あの……お気になさいませんよう」


 ワンレン水色髪のエレインが、そっと俺の手に触れた。


「私を含め、皆が感激してお勤めさせて頂きました。できればその……毎晩の入浴時にもお願いしたいのですが」

 いきなり熱心に迫ってきたりして。

「私や他のメイドにとって、本来、レージさまのお世話が一番重要なのです」




「い、いやあ」


 あまり言葉が意味を持って聞こえてこないな。ショック過ぎて。

 それより俺は、十名のメイドさんがせっせと全裸の俺を洗う光景を想像して、死にたくなっているというのに。


「ユメもぉ~、ユメも洗ったのよ! 全部、なにもかもっ」


 しかもトドメに、ユメが嬉しそうに腕をひっぱるのだった。

 君ら、俺のダメージを増やして、そんなに楽しいか? 心の中で喚いていると、またサクラが割り込んだ。

 この際、こいつの無愛想な声が有り難い。


「こんな時になんだけど、記憶も戻ったことだし、当初の予定通り、わたしも移転先についていっていいかしら」


 サクラの申し出は、相変わらず唐突だった。


「元々、ロクストン帝国の連中や、それに恩知らずの臣民達と戦うのが、わたしの望みだったのよ。記憶が戻ったことで、激しい感情も再び蘇っている。レージ達についていくのが、戦う一番の早道だと思うし」


 胸に手を当てて、珍しく俺に訴えてきた。




「ぶれいぶはーとは、敵だもんっ。だいたい、サクラは最後の最後まで敵だったし!」


 記憶が戻ったユメが早速、ベッド脇のサクラを素足でげしげし蹴飛ばした。

 ちなみに、エレインも主人を支持するみたいな感じで、大きく頷いてたりして。


「なんでよっ。今のわたしは敵じゃないでしょっ」

「知らない。あっちいけ!」


 可愛らしく頬を膨らませる。

 ……だけではなく、やっぱり素足でげしげしサクラを蹴るのだった。お陰でユメのガウン風の夜着の裾が盛大にまくれて、太股まで見えてたりしてな。


「はしたないぞ、ユメ」


 俺は見かねて止めた。


「それと、サクラをのけ者にしちゃ駄目だって。こいつは口は悪いし無愛想だし、のべつまくなしに文句ばかり言ってるが、これでも決める時はばしっと決める奴だからな。おまえには必要な戦士だと思う」

「……前半のせいで、後半褒められても、あまり嬉しくないわね。だいたい、プリンセスはわたしの力になんか期待してないし」


 サクラがぶすっと言う。


「わたしだって、必要としてくれる人のために戦いたいわよ」


 しかし本気で怒っているわけじゃない証拠に、俺を見て一瞬だけ微笑んでくれた。


「それならわたしは、自分の復讐のため以外に、レージのためにも戦ってあげる。プリンセスを守るよりは、まだやりがいあるだろうし」


 プリンセスってのは、たまにサクラがユメを呼ぶ時のあだ名みたいなものである。

 しかし……俺のためってのは意外な言葉だな。あくまで復讐優先かと思った。


「おまえは俺になんか、洟も引っかけてないと思ってたよ」


 笑って言ってやると、サクラは真面目な顔で俺を見つめた。


「本当にそう思ってるなら、最初からこの屋敷にだって寄りつきはしないわ。今だってわたしは、レージがいるからここに来てるの」


「……えっ」


 さすがにぎょっとしてサクラを見返すと、ユメやエレインまで仰け反りそうな顔でサクラを見た。

 特にユメは、俺の腕をまた抱え込み、一段とおっきな声で喚いた。


「パパをだますしょうわる女は、帰れっなのよ!」

「性悪女って……あんたねぇ」


 さすがに顔をしかめ、サクラはいつもの調子に戻った。


「真剣に話すだけ馬鹿らしいわね。……とにかくレージ、わたしも一緒に行っていいわね?」

「お、おお……どうせ俺もおまえに頼みに行っただろうから、そりゃ渡りに船だ。じゃあ、俺はユメを守るから、おまえはたまにでいいから、俺の背中に注意しててくれ。また刺されたら、たまらん」


 最後のセリフは比喩的な意味で言ったんだが、またしてもエレインとユメが俺をまじまじと見たりして。だから、これも挨拶の範疇だって。

 柄にもなく俺が握手など求めると、サクラはびっくりしたような顔をしたものの、ちゃんと応じてくれた。やたらと照れくさそうに目を逸らしつつ。

 そして、俺の手を握って適当に振った後、なぜかドヤ顔でエレインやユメを見る。


「ほら、あんた達の大事な大事なレージも、こう言ってるわよ?」


 いやおまえ、俺の後ろ盾なんかあんまり意味は――と思ったが。


「ぶれいぶはーとは、いますぐ帰れぇーーーっ」

「……くっ」


 なぜかユメとエレインは、すげー悔しそうにしているという。

 まあ、なんでもいいや。サクラは仲間のつもりでいるしな、俺は。


 とにかく、こうして俺達の拠点移動は本決まりとなった。



(昨日、書き込むタイミングずれたので、もう一回だけ)

新しい長編連載も始めたので、気が向けばどうぞ。

「魔王殺しが、王女のために出世を目指す(仮)」です。

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