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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第四章 聖母騎士団
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知らぬ間の羞恥プレイ

手の感触がしばらく消えそうにないし、胸を揉みまくった時の記憶のせいで、夢にまで出そうだが――幸い、アデリーヌは嬉しすぎる今のおわびを最後に、すぐにドレスを着込み、俺の部屋から辞してしまった。

 早速、捕虜の審問とやらに行くのだろう。


 ……あの人のことだから、その審問はかなり厳しいものになりそうだな。

 考え込んだ時、ぎらっと目が光ったし。

 まあ、俺が同情するいわれもないけど。なにしろ、後ろから人の心臓ぶっ刺す奴の仲間だしな! ユメがいなきゃ、きっと死んでたぞっ。


 あと……今更ごちゃごちゃ言っても遅いが、今ざっと確認したところ、俺は下着からなにから、全部着替えさせられている上、血の跡も残ってないんだが。

 これって、誰かが全裸にして身体を洗って、全部着せてくれたってことだよな。

 試しに自分の素肌をくんくん嗅ぐと、ソープの匂いなんかするしな。これって、どう考えてもその……丁寧すぎるほど丁寧にそういうのつけて洗ってくれたって話だわな。


 か、考えただけで、顔から火が出そうになるな! どんな羞恥プレイだよっ。


 まさか複数のメイドさんにやってもらったとは思わないが、誰の手によるものか、今度それとなくアデリーヌに訊いておこう。

 顔が赤くなるのを感じつつ、俺は密かに決意した。


 するとそこで、「ふわぁ」という可愛いあくびの声がして、ユメが身じろぎした。

 ぱっとそちらを見ると、ちょうど切れ長の瞳を開き、向こうも俺を見たところだった。





「……ぱぁぱ」

「こんばんは。おまえが無事でよかった」


 頭を撫でてやると、ぐしゅっとふいに顔が歪んだ。

 真っ青な瞳にみるみる涙が盛り上がり、つうっと流れる。


「ぶじでよかったの~……ユメ、心配して揺さぶってたら、メイドさんに眠らされちゃって!」


 ぐすぐす鼻を鳴らしながら、抱きついてきた。


「おお、そうか……まあ、俺はおまえのお陰で治ったよ。ついでに、記憶も戻ったらしい」


 そういやこの子、信じ難いことに邪神と呼ばれた女神さんなのである……ユメとして生まれる前の、前世の話だが。

 それでも俺は全然気にせず、ユメを抱き上げて膝の上に乗せてやった。とはいえ……九歳ともなると、そろそろこういう真似はいかんのかもな。

 なんて考えていると、ユメがぱっと顔を上げて、きらきらする瞳で俺を見上げた。


「ユメの記憶も戻ったのよ! ユメとパパ、なぜかはぐれちゃったんだねぇ」

「おまえもかっ」


 俺と時を同じくして戻るとは、タイミングいいなっ。


「ったく、どうせ敵……に当たるような誰かの仕業だろうな」





 なんて言いかけたところで、どばんっといきなりドアが開いて、何の前触れもなくサクラが入ってきた。 


 しかも、メイドのエレインが手をノックしようと持ち上げた姿勢で、廊下で固まっている。大方、エレインがノックしようとしたのに、お構いなしにサクラがドアを開けたのだろう。

 俺の印象を裏付けるように、後から入ってきたエレインが文句をつけた。


「先にノックをするのが、礼儀だと思いますが!」


「あ、ごめん……気安い仲だと思ってるから、つい」

 珍しく謝ったが、あまり説得力ないような気もするな、しかし。


「ぶれいぶはーとは、帰れなのよっ」


 ユメが早速、叫ぶ。


「いま、パパと仲良くお話ししてたのにっ」

「ごめんなさいね、ユメちゃん」

「……エレインはいいの、良い子良い子」


 ユメが手をの伸ばして、わざわざ謝りにきたエレインの頭を撫でた。




「ねえっ」


 サクラが和む空気を無視して俺に詰め寄った。


「目が覚めたところで訊くけど、記憶戻った?」

「おお、なんだおまえ? よく知ってるな」

「わたしも戻ったのよっ」


 なぜか腰を折り、ぐいっと顔を近付けて言われた。


「もしや? と思ったら、やっぱりレージが先に戻ってたわね」

「……どういう意味だよ?」


 なんで喧嘩腰か。あと、顔が近いぞ。


「多分、最大の力を持つレージの記憶が戻ったことで、奪われていた関係者の記憶が、全て戻ったということじゃないの? この同時タイミングは、そうとしか思えないもの」

「なにをわけのわからんことを――て、ああ、おまえが前に主張してた、俺=ユメの父ちゃん神説か。おまえも、懲りないなあ」


 なんて言った途端、エレインがさっと俺を見たのが印象的だった。

 俺が首を傾げると、思い出したようにサクラが告げた。


「それはそうと、わたしはいいけど、他の人にはちゃんとお礼を言っておきなさいよ。貴方が倒れた後、エレインさんとアデリーヌさんとその他メイドさん十名くらいで、全部脱がせて血の跡を拭って綺麗に身体洗って入浴させて、最後に着替えさせたんだから」


「うがっ」

 俺は、一気にドバッと顔面に血が上るのを感じた。

「お、おまえ、今……俺の心に一生消えないような傷をぶすっとつけてくれたぞ、おい」

 抑えようもなく、声が震えた。


「なにを今更」


 サクラが呆れたように腰に片手を当てる。


「直後に駆けつけたわたしだって、レージを運んで、脱がすところまでは手伝ったわ。洗うのはその……さすがに遠慮したけど」

「……くっ」


 あかん……心臓を貫かれたより、ダメージきたっ。

 中坊のこいつにまで全部見られたのか、俺っ。神も仏もないな、ちくしょう!


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