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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第四章 聖母騎士団
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ハンター接近

 詳しく、今のをもっと詳しくだ!


 大いにやる気が出て、俺はいよいよ熱心に掌で地図を撫でた。触れた先で脳裏に光が差し、ふいに広大な何かが見えたので、慌てて手を止める。

 今度は人差し指に切り替え、今見えたあたりを集中的に指先で触れていった。


「どこだ、今のはどこだった!?」


 そして……ついにある一点で指が止まった。


「ここだ! 地上じゃない……大事なものは、全て地下にある。忘れられた土地、そして忘れられた空間。その地下には――」




 言いかけ、俺は今見えたものに生唾を呑み込んだ。

 ……これは、マジか。

 本当にこの地にそんなものがあるのかっ。

 深呼吸してからゆっくり目を開くと、俺の人差し指はある地名をびたっと指していた。


「……ダルムート? 同じ南部でも、場所はそこだ! その地こそ、俺達が行くべき場所の気がする」


 静まり返った円卓の皆をぐるっと見回し、俺は割としっかりした声で告げた。

 ご神託のつもりは毛頭なかったのだが、少なくともアデリーヌの反応は劇的だった。


「ならば、これで決まりですね!」


 歓喜に溢れる声で叫ぶ。

 ついさっきまで、所領に戻る的なことを言ってたはずなのに。

 既に彼女は立ち上がっていたが、その場で俺の眼前に歩み寄ると、恭しく跪いた。


「我が大いなる君よ、全ては御心のままに」

『御心のままに!』

 

 女主人に倣うように、他のメイドさん達まで一斉に席を離れ、跪く。

 おぉお……なし崩し的に、今後の拠点が決まっちまったらしいぞ。俺、実際はそんなトコに行ったこともないのにっ。

 責任とってくれ、カオル君っ。





 


 頭がぐるぐるしてきた俺は、方針が決まって会議(軍議?)が終わると同時に、ユメには先に部屋へ戻ってもらい、屋敷の屋上へ外の空気を吸いに出た。

 ここは、屋根の上にも何カ所か見張り台みたいなのがあって、屋敷の周囲を見張れるようになっているのだな……俺も最近知ったんだが。


 今はちょうど、円卓会議みたいなのがあって全員集合だったので、たまたま誰もいない。

 そこで、柱と屋根のみの吹き抜け構造になっている見張り台に一人で立ち、遅まきながら頭を抱えた。

「……参ったな。到着して何もなかったら、笑って済む問題じゃないような」


『君は、ダルムートに着いた後の心配より、当面の危機を心配した方がいい』


 カオル君の声が再びして、俺はぎくりとした。

「しばらく出て来なかったのに、今日はヤケに饒舌じょうぜつじゃないか? 何か不吉なことでも迫っているのか?」


『そういうこと。アデリーヌは定期的に帝室へ使者を送って、まだ皇帝の信頼を得ているけど、その皇帝の権威を持ってしても、止められない勢力がある。……言うまでもなく、光の神を信仰する、戦士集団さ』


「それは、いわゆる光の種族ってヤツか?」


『そう。神の声を聞いて続々と新たなブレイブハートが生まれているのは、当然ながら君達闇の種族を倒すためだ。そして、彼らは君達と同じく、独自の価値観で動く。例えば、皇帝がどれほどアデリーヌに好意を寄せ、彼女のリュトランド家に敬意を払おうとしようが、そんなことは彼らには関係ない。最大の行動基準は信仰であり、闇を撲滅するという強固な使命感だからね……やっかいなことに』


 仮想敵は別にして、そりゃアデリーヌと同じじゃないかと思ったが、俺は余計なことは言わず、囁くように尋ねた。

 幸い、今のところここには他に誰もいない。


「で、当面の危機ってのは?」


『さすがに、まだブレイブハートは動かないと思うが、軽挙妄動けいきょもうどうがお家芸のような連中がいる……光の神を信仰するグループの中でも、手が付けられない無法者が多く含まれているのさ。彼らは自分達のことを、(闇の種族を狩る)ハンターと自称しているけどね』


「そいつらがどうしたっ」


『……振り返って、そこから屋敷の裏門の方を見たまえ』


 俺は慌てて振り返った。





「うわっ」


 裏門付近は、帝都バルバライズを囲む防壁のすぐそばにあるのだが。

 門の周囲はリュトランド家の私有林で囲まれ、無愛想な防壁が直接見えないようになっている。その私有林の方から、人目を忍ぶように、男女の集団が接近してくるのが見えるのだ!


 全員武装している上に、どう見ても侵入する気満々に見えた。

 裏門にも警備のメイドさんがいるが、連中が死角から接近しているためか、彼女達はまだ怪しい人影に気付かずにいるらしい。


「おーい! 敵が近付いてるぞおっ」


 俺は躊躇せず、全力で怒鳴った。 


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