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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第四章 聖母騎士団
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円卓会議


 午後から訓練のつもりだったが、なんとなく自室に戻ってユメの遊び相手をしてやっていると、なぜかアデリーヌが呼びに来た。


「失礼します……今後のことについて、実はレージさまにご相談があるのです」


「お、俺にですかっ」

 首を傾げたが、ユメを連れてきても問題ないと言われたので、俺達は彼女と一緒に、屋敷内を歩き、三階の一室へと招かれた。

 ……入ってみて驚いたね。




 なんと、この屋敷内にいるメイドさんが、おそらくは全員顔を揃えて、円卓に着いていた。

 広間が馬鹿げた面積だから入るような特大かつ重厚な円卓で、表面にはなにやら飾り彫りまであったりして。

 しかも着席していた全員が、俺達が入ってきた瞬間に立ち上がり、声を上げた。


「我が、大いなる君よ」


 そのまま深々と一礼する……むう、未だに慣れないな、これ。

 ユメは嬉しそうに手を振ってたりするが。

 俺とユメはアデリーヌに勧められ、なぜか一番北側の、一番目立ちそうな場所に座ることとなった。ちなみにユメは俺の膝の上に座った。


 す、数十名のメイドさんの視線が俺達に殺到している気がして、凄く痛いんだが。

 しかも着席するなり、隣に座ったアデリーヌが言うのだな。


「突然ですが、レージさま。我々闇の軍勢は、拠点を移して、本格的に活動しようと考えております」


 爆弾発言をしつつ、円卓の上に広げた地図を指差す。


「今いるのは……こちらですが」


 とロクストン帝国を示す四角い領域の、北部当たりを指す。


「当家の本領は南部にあるので、ひとまずそこへ向かうつもりですが、レージさまのお考えはいかがでございましょう?」

「お、俺かい?」


 日頃、「敬語はよせ」とだいぶ言われているので、タメ口で答えたが……正直、俺に訊いてどうすんだという気がする。

 しかしアデリーヌは当たり前のように言ってくれた。


「正直申し上げて、我が軍はレージさまの意志こそが、全てを決します。わたしの意見は、あくまでも参考までに留めてくださいませ」


 大真面目に述べると、彼女は恭しく頭を下げる。

 同時にメイドさん達も全員、低頭するという……。


「ユメもね、南がいいと思うのよ~」


 真剣な目でユメが俺を見上げた。


「北部は帝国ぐんのほんきょみたいなものだから。でも、パパがよいところを選ぶなら、ユメもそれがいいと思う~」

「うお、おまえまで」


 いっぱしの参謀のごとく俺に意見するユメに、一人で驚く俺である。

 なんでみんな、俺なんかに――と考えた瞬間、頭の中で声がした。






『君も、そろそろ自覚した方がいいな、レージ』


「――っ!」

 ぱっと顔を上げたが、もちろんカオル君の姿はない。

 相変わらず声だけだ。

 メイドさん達やアデリーヌが首を傾げたが、俺は愛想笑いでごまかした。

 そのうち、また彼が好き勝手に言う。


『ここでは、君が司令官なんだ、レージ。それを当たり前だと意識した方がいい。まず、地図の上に手を当てて、目を閉じるといい……君の力なら、なにか変化があるはずだよ』


 この(多分)美少年っぽいカオル君の言うことだし、確かにこの人達のためになるようなことなら、俺も協力したい。

 ユメと二人して、散々世話になってるからな。


「ユメ、ちょっとごめんな」


 そこで、ユメを膝から下ろして渋々立ち上がり、俺は地図の現在地に手を当てた。

 目を閉じ、何かを感じようとする……切実に祈ったさ、そりゃ。俺になにか力があるなら、ぜひみんなのためにどうにかしてくれ、と。


『そう、その調子だ……何が見える?』


 そう言われても、今のところは何も見えない……やむなく、そのまま掌で地図を擦るようにして南へと移動していく。多分、途中の席に座っていたメイドさんにぶつかるはずだったが、向こうがよけてくれたらしい。

 俺は何事もなく、円卓の外周を歩いて、闇の中で地図を撫で続けた。


 ――すると、見えた!

 驚いたことに、本当に見えたっ。


 俺達が、行くべき場所がっ。



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