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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第三章 レベル対応型、私邸内ダンジョン
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新旧ブレイブハートの激突

「これは失礼しました……」


 真っ白い髪を長く伸ばした少年は、優雅に一礼した。


「僕はレナードと申します。陛下の使いで、アデリーヌ様に嘆願に来た者です」

「嘆願と申しますと?」


 一人が怪しむように尋ねると、彼は苦笑した。


「いえ、最近顔を見ていなくて寂しいので、一度、アデリーヌ様に城へ遊びに来てほしいとのお話でして。使者に僕が選ばれたのは、ご挨拶と――その他の用件も兼ねているからです」


 懐から書面を出してメイドさんに渡す。

 それを一人が確認しつつ、もう一人がさらに問い詰めた。

「ご挨拶というのはどういう?」


「はい……私事ですが、僕はつい先日、神の声を聞きました」


 うお、いきなり宗教がかった話に!

 おまえはジャンヌ・ダルクかっ。


「その瞬間から、僕は自分がブレイブハートであることを自覚するに至りました」

『ブレイブハート!』


 おぉおお、そっちかよっ。

 メイドさんの声が重なったのはともかく、俺も門塀の陰でドン引きしていたが、少年――レナードはすらすらと続ける。


「僕と同じく神の声を聞いた者は、他にも大勢います。皆、新たなるブレイブハートとして目覚めたようですね。現在ロクストン城では、ここ数日で僕のような者が大勢現れたことについて、様々な見解が飛び交っているようでして、陛下におかれましては、年若き賢者と名高いアデリーヌ様のご意見もぜひお聞きしたいとのことで――」


 そこまでなめらかにしゃべった癖に、レナードはふいに黙り込んだ。

 俺とユメが観察しているのを見つけ、眉をひそめている。

 ヤバい……俺はモロに日本人の姿で、この国の平民っぽくないからな。不審に思われないうちにとっとと立ち去るかと思ったが、むしろ向こうが俺を呼んだ。


「失礼ですが、貴方達」

「お、俺っすか?」


 呼び止められたので、やむなく彼のそばまで行く。

 ただし、どういうわけかユメは最初から敵意全開の目で睨んでいるし、俺の腕を抱え込んで放そうとしない。


「気をつけて、パパ」

「え、ああ……」


 そう言われても、何を気をつけるのか。






「どうも、おはようございます」


 とりあえず挨拶などしてみたが、レナードとやらの不審顔は晴れなかった。


「なんだろうな……貴方には何かを感じる……その、小さな女の子にも。前に、どこかでお会いしましたか?」

「い、いやぁ。初めてだと思いますけど」

「そう――ですか」


 しきりに首を傾げつつ近付こうとするレナードの前に、メイドさん達がさっと立ち塞がった。


「失礼ですが、アデリーヌ様は今、不在でございます」

「用件は必ずお伝えしますので、今日のところはお引き取りください」


 礼儀正しくはあるけど、彼女達もまた敵意を隠せない声音だった。

 やっぱりここの人達にとって、ブレイブハートは仮想敵らしいっ。本気で闇の種族として潜伏しているつもりなのなっ。




「おやおや……新たなブレイブハートが現れたって、あんたのこと?」


 うわっ。

 またよりにもよってこのタイミングで、ややこしいヤツがっ。

 というのも、今度はサクラが私道の向こうからやってきて、俺達を面白そうに眺めていた。いつものセーラー服姿で!


 だいたいこいつ、この服装がよっぽど好きらしいなっ。

 どうせ今日も、ダンジョンアタックさせてもらいに来たんだろう。また嫌なタイミングで現れたもんだ! こいつが来ると、話が妙な方向へ行きそうな予感が。


「……貴女は?」


 振り向いたレナードが、これも警戒の眼差しで尋ねると、サクラはニヤッと凄みのある微笑を浮かべた。

「そうねぇ、こう言うと話が早いかしら? わたしは――」

 そこでいきなり大きく踏み込み、叱声と同時に電光石火で抜刀する。


「あなたの先輩よっ」


 まさに、抜く手も見えない早業である。


「ちょっ!」

『サクラさんっ』


 俺とメイドさん達の声が、見事に重なった。


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