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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第三章 レベル対応型、私邸内ダンジョン
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奥の手が二つとマスキング・スキル

 低頭した後、エレインは付け加えた。


「ただ、見る限りではMPの消費も激しいので、そこだけはご注意を」


「わかりました。いや、わかった!」

 元気よく答えたところで、蚊帳の外に置かれたサクラが、早くも歩き出す。

「さあ、もっと進むわよ」

「仕切るなっ」

 文句を言いつつ、それでも俺はユメを優しく押し返してやる。


「ほら、また向こうのおねーさん達といるといい。あ、俺が礼を言ってたと伝えてくれな」

「……うん。でも、次はいっしょに歩こうね」

「わかったわかった」


 何度も振り向きながら元の位置に戻るユメに、俺は手を振ってやる。

 まあ、ユメは痛みもない設定にしたって話だし、ホントに血肉が飛ぶわけじゃないから、それでもいいかもしれない。

 倒したら消えてしまうしな。


 俺は「テレビゲームは犯罪の温床」とか吐かす批評家には反対の立場である。

 そして、今度こそ俺のハイパー奥の手が唸るぜっ。





 などと期待して歩き始めたはいいが、よく考えたら奥の手のMP消費量とかチェックしてなかったな。

 よし、今のうちに見ておくか。

 俺は歩きながら、小声で「ステータス前面表示」と囁く。

 出てきた画面の中からスキルの項目を選び、目当てのスキルを調べた。


「げっ。パーフェクトタイムの、なんとエグいMP消費量!?」


 すると、横からさっとサクラが顔を突き出し、俺のステータス画面を勝手に覗きやがった。



「……パーフェクトタイムのMP消費量が600ぅ? なんでこれ、そんなとんでもない消費量なのよ?」



「俺に訊くなっ。こっちが知りたいわ!」

 ていうか、600といえば、俺のショボいMP数値からして、ほぼ半分くらいは消えるじゃないかっ。

 なんというMP馬鹿食いスキルっ。


「むむむ、最大使えても二回か……まあでも、これを何度も使えたらシャレにならんもんな。それで当然か」


「どんなスキルなの?」

「ふふふ……それは秘密だ」


 自分も初使用のくせに、俺が思わせぶりに言うと、サクラは顔をしかめた。


「だいたい、おかしくない? レージは初めてダンジョンアタックしたわけでしょ? なんで最初からスキルなんてついてるの? 普通は戦って相手から奪って、初めて使えるようになるものだと思うけど」

「え、そうなのか!?」

「そうよ! 最初からあってたまるもんですか」

 サクラは大きく頷く。

 頷きつつ、分岐のT字路を当たり前のような顔で右に曲がったが……おまえそれ、なにか右を選んだ根拠でもあるのか? 


 ていうか、不覚にも今気付いたが、さっきからこいつ、自分の好きな方を選んでるな。

 次の分岐では、断固俺が選ぶぞ!

 みみっちいことを俺が考えていると、サクラはさらに捲し立てる。


「それに、見なさい。まだ表示されていないだけで、マスキングされたスキルで、項目欄が全部埋まってるじゃない! ということは、レージは潜在的に、これを全部持ってるということよ。なぜかまだ表示されてないけど」


「表示されてなかったら、意味ないだろうが! しかし……マスキングだったのか、これ。俺は昨晩見た時、なんで既に書かれた文字の上に、いちいち太線なんか引いてるかと思ってた」

 あと、よくエレインは俺がこれを使えるって知ってたな……あ、でも彼女は、さっき俺のステータス画面開いていろいろ教えてくれたから、その時か。

 むしろ、昨晩とさっきと二回も見てるのに、ちゃんと確認していなかった俺がボンクラすぎる。今更だが、俺はまさにマスキングテープを貼ったみたいに、ずらずらと太線で消されたスキル欄を見た。今すぐ使えるのは二つしかないというていたらく。


 そのうちの一つが、これから使う気でいる「パーフェクトタイム」で、もう一つが、カオル君が教えてくれた元祖奥の手である。


「この、ソウルプリズンってなに? だいたい、スキルにかなり詳しい方なのに、なんでわたしは二つとも知らないのよっ」


「なんで俺が怒られるんだよ。奥の手については秘密だし、おまえの知識量について文句言われても、知らんっ。大方、おまえじゃ未来永劫、覚えられないスキルってことじゃ――」 

 などと言い返しかけた俺は、ぎくりとして足を止めた。

 いきなり突き当たりの角から、ひょこっと敵が現れたのだ。


 今度は普通の狼に見えるが……大きさは標準狼の三倍くらいある上に、体毛が真紅という。そんなのが都合四匹もいた。


「い、いちいち数が多いな、くそっ」

「先頭の二匹はわたしが引き受けるわ」

 早くも抜刀したサクラが、横目で俺を見た。

「自慢の奥の手の力を見せてもらいましょうか」


「は、ははは……任せたまへ」


 いかん、声が引きつった。


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