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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第二章 ご神体(のごとき)扱いのレージ
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ユメをまじえて、出発!

「いや、嘘じゃない、ないさ」


 俺は文句は喉の奥に押し込め、未だに浮き出たままの魔法陣の列を示した。


「あれがそうだ。あそこに立てばそれぞれのダンジョンに転移するそうな」

「ふぅん?」


 実に胡散臭そうな顔で、サクラが稼働中の魔法陣を見やり、そしてアデリーヌを始めとするメイド集団を眺めた。

 ちなみに彼女達、今はユメを囲んで遊んであげている最中らしい。

 ここは母親役に苦労しなくて助かるなっ。




「……で、推奨レベルはどのくらい?」


 さすがにブレイブハートらしく、鋭いことを尋ねる。

「推奨レベル1から、推奨レベル60以上まで、各種ありますわよ」

 俺の代わりにアデリーヌが答えると、サクラが大きく息を吸い込んだ。

 はっは、やっぱり驚くよな!

「レベル60以上……? そんな人、レージ以外にいるの?」


「わたくし、今のところレベル63ですわー」


 こともなげにアデリーヌが言ってくれたので、俺まで一緒になってたまげた!

 レベル50以上の四人の中の一人って言うから、その辺りのレベルかと思いますがなっ。


「……ふぅん」

 先程と同じ「ふぅん」でも、今のサクラの言い方はちょっと殺気があるような気がするな。アデリーヌはあくまで自然体で微笑しているが。

「それはそうと、レージさま」

 アデリーヌが俺ににこやかに教えてくれた。


「申し遅れましたが、ここのダンジョンは血肉の飛び散るリアルな洞窟などではなく、あくまでもそう見えるだけのゲーム的なものです。痛みはありますし、HPがゼロになると死ぬのも事実ですが、訓練するのにそこを省くわけにはいきませんので、そうなっているだけなのです。それに今回、ユメちゃんだけは、痛みと死亡判定を省いてありますわ。さらに、危ないと思えば一瞬で戻れますし。ですから、ユメちゃんが同行しても大丈夫でございます」


「……ゲーム的なもの」

 つまり、オンライン体感型3Dゲームみたいなものだろうか。

 まあ俺は、強くなれるならなんでもいいんだが。

「ちょっとレージ」

 サクラがふいに俺の腕を掴み、隅へ引きずっていく。

「なんだよ、いきなり」


「ここの人達、なにか裏があるでしょう?」


「えっ」

 うお……俺がずっと思ってたことを、いきなり指摘されたぞ。

「なぜそう思う?」


「見ればわかるわよっ。メイドの人数が尋常じゃないのは置いても、みんなレベル高いはず!」

「まあ……可愛い子ばっかり揃ってるのは確かだな。器量もよさそうだし、スタイルいいし」

「誰が容姿とかスタイルの話なんかしてるのっ」

 

 サクラが「あんた、馬鹿なのっ」的な目つきで睨みやがった。


「そうじゃなく、戦士としてのレベルを言ってるのっ」

「ああ、そっちな」


 それならそうと、言ってくれんと!

 俺はおまえと違って、そこより容姿重視なんだから。


「実際、みんなむちゃくちゃレベル高いぞ。おまえより上なのが――」

 言いかけ、俺は口を噤んだ。

 こいつに「ここは強キャラがザクザクいるぜっ」とか教えると、相手構わず、試合申し込んだり、喧嘩売ったりしそうだ。


「なによう、言いかけたら最後まで言いなさいよっ。誰が強いのよ!」

「やかましい、強面で迫るなっ。おまえに教えると意識するから駄目だっ」


「くぉらああ、パパをいじめちゃだめえっ」


 いきなり大声がして、ユメが走ってきた。





 問答無用で、来るなりサクラの足を蹴っ飛ばす。あ、パンストに土が付いた。


「ブレイブハートは帰れっなのよっ、塩まいちゃうもんっ」

「こ、こらこら、そんな風に言うもんじゃない」


 俺は慌ててユメを抱き締めて止めた。

 どうでもいいが、今の可愛い罵声、なんか既視感あるな……気のせいかもしれないが。


「まさかこの子がそうなの?」

 呆然としていたサクラが、俺を見る。

「馬車の中でちょっと聞いたけど、ギルドに広告出してた子?」

「まぁな。それより、俺達は早速、ダンジョンアタックするぞ。あまり時間を無駄にしたくない。おまえも来てくれるなら嬉しいが、無理強いはしない」


「――行くわよっ」


 サクラは大きく息を吐き、俺や周囲のメイドさん達を見回した。

 全員、しんとなってサクラを見返していたな……なぜか。


「そんな高レベル者を対象にするダンジョンなら、行かない手はないわ」

「よし、決まりだ!」


 俺は破顔して手を叩いた。


「まずは、最高レベルから少し下の者を対象にしたトコなっ」


 ついでにはっきりと自己主張もしておく。

 最初から最高レベル対象のダンジョンアタックとか、死にに行くようなもんだ。


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