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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第二章 ご神体(のごとき)扱いのレージ
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全ては、我が大いなる君のために


「……う」

 そういや、俺は今や闇の軍勢の一員ってことになるのか……ユメの応募に応じたんだし。

 しかし、ブレイブハートってサクラみたいなヤツのことだろ。

 あんなのが向かってきたら、俺なら速攻逃げるって。

 そこで俺は、肝心なことを思い出した。


「いや、待て。確かギルドでサクラに聞いた話だと、もうあいつが最後のブレイブハートだったんじゃなかったか?」


『碧川サクラのことかな? 確かに現時点ではそうだね。彼女はこの世界で未だに健在な、最後のブレイブハートだ。君も聞いているだろうけど、過去世で邪神と戦った記憶を保持する、転生実力者でもある。しかし、ブレイブハートとは元々、闇の軍勢を倒す為に出てきた存在だからね。いわば、ゲームで言うところの、魔王に対する勇者のようなものだ。闇の軍勢が復活するなら、ブレイブハートもまた復活する運命にある』


「マジかっ」

『本当だとも』


 どこか愉快そうな声でカオル君は言った。


『特に君がいるからには、復活するに決まっている』


「なんでそこで俺だよ?」

『まあ、わからないならいいさ。それもおそらく君の意志だろうから。でも、君がどう思おうと、降りかかる火の粉は払うべきじゃないかな? 娘のためにもさ』

「そりゃそうだろうけど、今のところは平穏だぞ?」

 しかしカオル君は俺の思惑とかためらいなど、知ったことじゃないらしい。

 いきなり教師みたいな口調で、言いやがるのだな。


『じゃあ、早速始めよう』


「なにを?」


『もちろん、特訓さ。君が一刻も早く、懐かしい闇の力に覚醒できるようにね。全ては最初から君の中にある。僕はそれを引き出す努力をしてあげるよ』


 なんだよ、わけわからん。すげーいらねーし……と思ったものの。ユメの顔を思い出し、俺は我慢した。

 確かに、こいつの言うことにも一理はある。

 俺が無能のままではまずいだろうしな。




 



「全ては、我が大いなる君のために!」


 屋敷の地下牢獄では、既にメイド姿の部下がわたくしを待っていました。

 右手を左肩の下に当て、誇らしげに秘密の挨拶をする彼女に、もちろんわたくしも笑顔で応えます。


「全ては、我が大いなる君のために! 今回は、ご苦労様でした」


 せっかくのうたげの後に、このような場所へ降りてくるのは興ざめですけれど、スパイを捕まえてくれた彼女には感謝せねば。


「わたくしの部屋に忍び込んでいたというのは、この男かしら?」


 真っ先に尋ねると、控えていた彼女は緊張した顔で頷きました。


「左様でございます、アデリーヌ様」

「鍵を開けてちょうだい」

「はい」


 太い鉄格子の嵌まった牢の鍵を開くと、わたくしはそのまま中へ入ります。

 どうせ不埒ふらちな相手は、天井の鎖に両手をまとめて繋がれ、動けはしません。膝立ちにされた状態で、足も繋がれてますからね。

 わたくしに続き、うやうやしい表情のままメイド姿の三名の部下達が後から入ってきます。


「――公爵様!」

 

 もういきなり、シャツとズボンだけにされた下品な男が喚きました。

「帝国内に広大な領地を有する貴女が、しかも、ユリアノス皇帝陛下の覚えもめでたい貴女がっ、どうして屋敷の地下にこのような場所を」


「お黙りなさい!」


 一喝すると、たちまち驚いたような顔で黙り込んでしまいました。

 ……根性のない殿方ですこと。


「まず、わたくしを公爵と呼ばないで。そのような身分は元々、憎き帝国が無理に押しつけてきたもの。亡き我が母を含め、嬉しいと思ったことなど、一度もないわ。それより、おまえはなんの目的で屋敷に忍んで来たのからしら?」


 驚愕したのか、口を開けてわたくしを見上げる男を見下ろしました。

 帝国に対して反抗的な口を利いたのが、そんなに驚きますか? 笑止なことです。

「話す気がないのなら、盗みに入った不審者として殺害し、死体を帝都の軍警察へ引き渡しますよ? どうも忘れているようですが、現状おまえは、わたくしの部屋に忍び込んでいた、単なる不審者なのですから」


「お、お待ちくださいっ。私の失態ではありますが、こうなったら何もかもお話しします」


 たちまち折れてしまいました。 

 ますます、根性のない殿方ですこと……あの帝室にして、このスパイありですか。

 忠誠心の欠片もないのですね。


「じ、実は私は、皇帝陛下のご命令で、失礼を承知で貴女の身辺調査をしておりました」


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