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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第一章 落ちぶれた闇の軍勢
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パトロン希望者登場

「あんた、もっと驚けよ!」


 おっさんが不満顔で言いやがる。


「ホントにわかってるか!? 下級ドラゴンのHPが、だいたい一万前後だって話だぜ? リングマジックのHP計測はそれの十倍までカバーしてるのに、あんたはそれを越えちまってる。てことは、最低でもドラゴン十匹分以上のHP値ってことだぞ!?」

「そ、そこまで具体的に言われると、ちょっとは驚くが……しかし、他がショボいし、あんまり関係なさそうな気も」


「ねえっ」


 人が話しているのに、サクラが横から割り込んだ。

 見れば、ぎらぎらしたテンション上がりまくりの目で、俺を見てやがる。

 さっきまでのダウナーな気怠さが微塵もない上に、こいつ刀の柄に手をかけてるっ。


「体力値が本当なら、レージは多分、不死身に近いはずよ。この際、ちょっと首を落としてみていいかしら? 後学のために、再生するところが見たいわ」


「あ、あほかいっ」

「すぐ済むわ。わたしの腕なら、ほんの一瞬だから! 多分、痛くないと思う」

「い、痛いに決まってるわいっ。だいたい、首が落ちて生きてるわけないだろ、死ねっ」


 俺は慌ててこいつから離れた。

 この女は、見た目以上にヤバかった! どうも、本気でやりかねんっ。


「なにが後学だ、刀から手を放せっ」

「試させてくれたら――」




 しばらく考え、サクラは思い切ったように申し出た。


「あとで、ちょっとだけ手を握ってあげる!」


「……いらんっ」

「今、ちょっと返事が遅れたわね? なら、それ以上の条件ならオーケー?」

「違うっ。おまえの出す条件のショボさに呆れてたんだあっ。おまえの好条件は、その程度なのかよっ」

 しかもちょっとだけだしな、握るの。引き合うもんか。

 せめて、おっぱいくらい揉まないと……いや、それでも死んだら意味ないか。





「素晴らしいですわ!」


「わっ」

「――っ!」

「おっと」


 俺とサクラ、それに今の騒ぎを爆笑して眺めていた親父の三名は、いきなりの声に飛び上がりそうになった。

 特にサクラの変化は特筆もので、たちまち顔にブラインド下ろしたいに、表情がすっと消えた。スイングドアのところに立つ女を見て、警戒したらしい。


「こ、これはこれは、アデリーヌ様っ。広告のことなら、まだめぼしい希望者は」


 何か言いかけている親父をガン無視して、その子はしずしずと俺の前に来た。


「さすがのステータスですっ。このアデリーヌ、感激しました!」


 おお……これは、サクラとは別の意味でちょっと凄いぞ。

 サクラが麗しき鷹なら、この子は豪勢なペルシャ猫だな。

 漆黒のフリル付きゴシックドレスに、黒パンストが眩しい。おまけに、スカートは短いわ胸元は見えそうで見えないわで、色気もあるという。


 普通、ゴシックドレスのスカート丈なんか長い方なのに。

 それと、まだステータス画面が出たままなのに気付き、俺は手を振って消した。どうも、ずっと出てたままだったようだ。




「アデリーヌ・クローディア・ド・リュトランドと申します、どうぞ御見知りおきを」


 金髪碧眼の少女は、優雅にスカートを摘まんでお辞儀した。

 ていうか、リュトランド? それって、さっきのパトロン募集の広告で見たぞ。確か、『光の神以外の神に近しい方』とかにあてた、わけのわからない募集かけてた人だ。

 しかし、まさか相手が女の子だったとは思わなかったし、貴族お嬢様にしても、まだまだすげー若い。サクラとそう違わないぞ。


「失礼ながら、貴方様はレージ・マミヤさまとお見受けしますが?」


「うっ。どうして俺の名を?」

「やはりっ」


 アデリーヌは、駆け寄ってきて俺の手を握った。

 いきなり握られて硬直する俺に、真剣極まりない表情で囁いた。


「信者の一人として、連日のように夢に見ておりました……異世界から来たレージさま。今日も、ご神託を頂き、馳せ参じた次第! 失礼ながらこのアデリーヌ、心は既に貴方のしもべでございます」


 両手で俺の右手をがっちり握り、アデリーヌが泣かんばかりに感激して言う。

 はいはい、どうせ非モテの俺はすぐに騙されますよと思ったが……親父もサクラも「なにこの人?」的な寒い視線でこっち見てるし、これは冗談じゃなさそうだ。


 だいたいこの人、感激しつつも、話してる声が親父達に聞こえないようにしてるしな。





「あの……レージさま」

「は、はいっ」


 慌てて答えると、アデリーヌはぐっと迫ってきて、訴えた。


「どうか、我がリュトランド家を、貴方さまの臣下末席にお加えくださいませ」


 ……え~と。

 臣下って……俺のですか? 俺、ただのフリーターですが。

  


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