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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第一章 落ちぶれた闇の軍勢
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体力値(HP)計測上限越え――しかし


「子供の悪戯書きに見えるけど、でも文章は真剣そうね」


 サクラも気を引かれたようだ。


「だよな? 俺、すげー気になる……なんでだろう」

「不思議なのは、闇の軍勢よ。それって、もう百年も前に滅びているんだけど」

「そうなのか!?」


「まぁね」

 なぜか複雑な表情で、サクラはようやく、ブレイブハートという言葉の意味と、自分の正体を教えてくれた。

 簡単に言えば……元勇者が日本へ転生していたですとー。

 有り得んと言いたいところだが、こうして実際に異世界に来ている俺みたいなのもいるしな。だいたい、サクラはそんな嘘つかないだろう。


「なるほど、おまえの破格なステータスもこれで納得だが、しかしそうなると、闇の軍勢なんて、もうこの世界に存在するはずないことになる。じゃあ、この募集広告は悪戯なのか」


 呆然としていると、どこからか髭のおっさんが戻ってきて、俺を呼んだ。






「ほら、これだ! 最新のリングマジックよ」


 細くて黒いリングを、ドヤ顔で振る。

「あ、ちょっとその前に、この書き込みについて、何か知らない?」

 俺は子供の落書きみたいな募集広告を指差した。

 途端に、スキンヘッド親父が苦笑する。


「ああ、それな……剥がしても剥がしても、忘れた頃にまた来て貼るんだよな。近くのホーム(孤児院)の子なんだが、あまり怒るのも可哀想でな。最近じゃ、黙認している」


「……そうなのか。何歳くらい?」

「いやぁ、まだほんの子供だぞ、あの子は。おそらくすげーべっぴんさんだが、年は八~九歳前後じゃないか」

「ぬうう」 

 なんかその話も、俺の中で違和感が。だいたい、なんでおそらくだ。

 なんとなく、これを書き込んだのは中学生くらいだという、妙な予感があったんだがなぁ。

 でも言われてみれば、小学生あたりが書いた字だしな、これ。


「ほれ、それよりリングマジックだ!」

 

 子供の広告など、もう忘れたような顔で親父がリングを振る。

 やっぱり、忘れてなかったか!

 俺は顔をしかめて、金属製リングを見た。

「そんなので、サクラみたいな数字がわかるのかい?」


「おうよ! 付与魔法で一発だぁな。しかも、誤差も少ないぜぇ? 誤魔化しがきかねーから、これが出回って以来、この稼業も仕事がやりやすくなったねっ。ハッタリが通じねーからな」





 嬉しそうに言いやがる……今から俺のレベル見たら、あんた腰を抜かすぞ?

 

 あまりのショボさになっ。


 どうせレベル1とかに決まってるし。

 どきどきしつつも、どうせ逃げるわけにもいかないのだろうから、俺は素直にリングを腕に嵌めた。


「あと、どうすればいい?」

「簡単よ。五秒ほど待ってから、『ステータス前面表示』と声に出せばいいわ。それで、レージの実力が明らかになる。ワクワク」


「棒読み口調で、なにがワクワクだ! でも……やるしかないのか」


 未練がましく呟いた後、俺は言われた通りに声に出した。

 一瞬だけリングが熱くなった気がしたが、叫ぶほどではなかった。

 しかし、五秒どころか三十秒ほど待っても、全然何も起きない。


「故障か?」

「え、あれ?」


 親父は不審そうに首を傾げた。


「いやぁ……今朝方も使ったばかりで、そんなはずはねーんだが。なぜかあんたの場合、よほど計測に時間かかるのかもしれん」


「待って、出たわ!」

 サクラが指摘するまでもなく、俺にも見えた。

 しばらくじいっと見つめて、またしても首を傾げる。どう考えても、納得いかないからだ。

 それは俺だけじゃないらしく、親父もサクラも熱烈凝視中だった。


「なあ……これ、やっぱり壊れてるんじゃないか?」





「レベル66……やっぱりレージは怪しい奴だったわね」


 妙に嬉しそうにサクラが言いやがる。

 ちなみに、透過スクリーンみたいに表示された俺のデータは、こんなのである。 


【Lv66 HP99999 MP1356】


 もちろん、以下ずらずらと筋力値やら、敏捷値やらが続く。

 レベルとHPにMPは、あくまで一番メインの数字だ。


「あ、有り得ねぇ」


 ようやくぽかんと見てた親父が呟いた。


「体力値が、リングマジックの計測上限を超えてるってことだぞ、これ! 測定可能範囲以上だってことだ!」


 そうなのか? 

 しかし、他の数字は軒並みショボいわけだが。敏捷値なんて、サクラの3分の1くらいの数字だぞ。


 このレベル66って、ほとんどHPだけで稼いでるな、絶対。


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