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見つかった!

 

 じょ、冗談じゃないぞっ。

 俺は出来損ないのフィギュアみたいにコタツテーブルに足を突っ込んだまま、一人で冷や汗をかいていた。


 俺のポケットには、例のダークスフィアとやらがある。

 結局ここまで、俺はユメにこれを渡さずに来ちまっている。

 その挙げ句が、このザマだ。


 正直、この最終段階でも迷っていたが、それでも現地に同行して、ヤバいとなれば渡せばいいと思ってたんだよ、俺は!

 なのにこれじゃあ、もうどうしようもない。


 声すら出せずに口を半開きにしたまま、俺は必死でユメの呪縛――のようなものを解こうと努力する。

 これがまたむちゃくちゃ強力な術らしくて、小指の先を動かすほどの努力をするだけでも、とんでもない精神力がいった。

 ただ、身動きは皆目できないわけでもなく、じわじわ指先が動くことは動く。

 亀の歩みよりもトロい動きだが、こうやって無理にでも動かしていれば、そのうち立ち上がることもできるかもしれない。


 この呪縛がいつまで効果あるのかわからないが、制限時間前に元に戻ることも可能かもしれない。


 ただ……そんな気の長いことやってて、果たして俺は間に合うんだろうか。


 こうしている間にも、ユメは超スピードでサンシャイン60に向かっているのだ。いくらもしないうちに決戦の火ぶたが切られて、悲惨なことになるんじゃ――なにせ、向こうの方が大戦力なんだし。


 ――くそっ。

 俺は汗をかきながら、嫌な妄想を追い払った。

 今は余計なこと考えるな。とにかく動く努力だ努力――て、あれ。

 ……今、何か上で音がしたぞ?

 気のせいかと思って耳を澄ませたが、あいにく気のせいじゃない。なんかやたらとおおざっぱな足音がして、木造校舎の廊下を進んでいる感じだ。





 そのうち、明らかにこの地下に向かって足音が下りてきた……しかも複数!

 ま、まずいっ。まさか敵だったら。


「なあ、本当に見えたのかよ?」

 野太い声が微かにした。

「ホントだって。確かに大勢が低空飛行で飛んでいった。そいつらは、絶対にこの校舎から飛び立った気がするぜー」

 

 げげっ。

 二人分の足音と会話に、俺は戦慄した。 

 こりゃどう考えてもハンターか、それに属する連中だろっ。

 くそ、早く動け動け、なんとか呪縛を解かないと――

 などと、俺がいよいよ焦っている間に、問題の足音はどんどん近づき、ついに用務員室のドアが開けられた!


「おわっ」

「ちょっ!」


 慌てた声がステレオでしたが、しばらく待っても俺が動かないからだろう、そのうち、「なんだぁ?」と一人が呟く声がして、そいつらは中に上がってきた。

 わざわざ俺の前に回り込み、二人して眉をひそめる。

 どうでもいいが、土足かよ。


「こいつ……い、生きてる……よな?」

「多分なぁ……L字金具みたいな姿勢で固まってるけど、汗かいてるし」


 こ、これは参った。

 嫌な予感が当たった。こいつらは革鎧みたいなのを上半身に纏った、まともにハンターっぽい連中だ。まだ年若いから、多分下っ端だとは思うが――。


 俺にとっちゃ上だろうが下だろうが、危険度は似たようなものだ。

 そのうち、大柄な方が「ひょっとして、仲間割れでもしたのかもな。こいつ、いかにも無能そうだし」などと失礼なことをぬかしやがった。

 微妙に当たってるだけに、余計むかつくっ。




「ああ、そうかもしれない。ひょっとしてこれ、魔法による拘束かもな。だってこいつ、動きたそうな顔してるぜ。ただ、他にもいないかな?」

 小柄な少年っぽいのが、剣の柄に手をかけて警戒の声を上げる。

 大柄な年長者の方は、それを聞いて険しい顔になった。


「そうだな……よし、俺は一応、校舎の上まで見てくる。おまえ、見張っててくれるか?」


「わ、わかった」

 役割分担の話がまとまったのか、大柄な方はすぐに用務員室を出ていった。

 ラッキーだが、どうせ俺はまだ動けない。

 せいぜい、手が十センチほど最初より移動したくらいだ。


「おい、動くなよ。動くと殺すからな……」

 目つきの悪いガキが、わざわざ無駄な恫喝してくれた。

 言われなくても動けないわいっ。俺は焦燥感にまみれて考えたが……事態はさらにヤバくなった。

 なんとこいつ、不良みたいな外見のくせに、ヤケに真面目な奴だったらしい。


「し、身体検査もしとくか……あんまり触りたくないけど」


 なんて言いながら、俺に近づいてきた!

 しかも、ユニクロシャツとジーパンという格好の俺を見て、調べるとしたらポケットだと最初から思ったんだろう。もういきなり、ズボンに手を伸ばしてきた。


「どうせ動けないだろうけど、妙な真似するなよ……つか、おまえ気色悪いな。いくらなんでも、汗かきすぎだってば」


 文句を言いつつ、左のポケットを念入りに調べ、すぐに右のポケットに移る。見つかるなっ、と念じたが――無駄な祈りだった。


「あれ……なんだこれ」


 そいつは即、ポケットの中身に気付き、手で引きずり出そうとしやがった。


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