敵を探す
すると、待ってましたとばかりにマリアが話しかけてきた。
『マスター、お戻りですかっ』
「あ、ああ……誰か侵入したって?」
『はいっ。ご注意ください。第五階層より下の階層へと侵入者が逃げ込んだようです。侵入者の現在地は不明。第五~第十二までの、いずれかの階層にいると思われます。場合によっては鉢合わせになる可能性がございますっ』
ぶっそうな警告に、俺達は思わず顔を見合わせた。
『途中の階層にはまだ私の目が届きませんが、それでもエレベーターは健在ですので、遭遇を避けるためにも、指令センターのある第一階層まで急いでお戻りになることをお勧め致します』
「武装メイドさん達はどうしてる?」
俺はマリアの意見には答えず、逆に質問した。
『現在、指令センターに残っていた半数が、敵発見のために最後に反応があった場所へ急行しています!』
「第五階層から上の第十二階層までの……どこかってことだったな。それで、敵の正体はまだ不明?」
『不明ですが、私が発見した時の熱源は、一人分だけでした。それより、敵の破壊工作でエレベーターが止まらないとも限らないので、急いで』
「いや、俺は戻らない」
悪いとは思ったが、俺はにべもなく遮った。
「逆にこの階層から上へ上へと順次上がっていって、どこかで敵を見つけられないかやってみる」
『マスターが自ら戦われることは――』
「いやいや、そうもいかないさ。なにせ、俺が一番死ににくいらしいから。このことで議論するのはやめとこう。とにかく今から上の階層を見てみる。なにか進展あったら教えてくれ……と言いつつ、よく考えたら上の階層ではまだマリアに通じないか。じゃあいいや。またな、マリア!」
俺は肩をすくめ、勝手に会話を打ち切った。
それから、黙って聞いていたレジーナ達メイドさんと、サクラとユメ、それにアイナを順番に見やる。
特にサクラをとっくりと見た。
「ユメを連れて戻れといっても、おまえは首振るだろうなあ」
「首振るどころか、はっきりと意思表示するわよ。い・や・よ!」
相変わらず、見も蓋もなく言いやがる。
じゃあメイドさんに頼むかと思ったが、レジーナを含めた三名のメイドさん達は、『ご一緒します!』と早速、声を合わせやがった。
き、綺麗に一緒に言わんでも……。
「ああ、わかったわかった! 死なば諸共だよなっ。じゃあ、行くかっ」
どうせ俺だって一人で放り出されても困る。
ユメもぐんぐん力を取り戻しているし、俺は不吉なことを考えないことにして、そのまま進み出した。
ピンク髪のレジーナ曰く、「非常口的な階段がありますので、そこから上がれます」ということなので、俺達はエレベーターを使わず、そのシケた非常階段から上を目指した。
まあ、エレベーター使うとマリアが問答無用で第一階層まで戻す恐れがあるので、この方がいいかもしれない。
第十二階層のドアを開けると、本当に真っ暗な通路に出てしまい、レジーナ達が早速、明かりの魔法で照らしてくれた。
「敵のせんめつ作戦かいしー」
景気よく片手を上げたユメは相変わらずだが、俺はかなりおっかなびっくりで先頭に立っている。
メイドさんの誰かが「私が先頭を歩きますっ」と主張したが、それも俺が却下した。
一番HPの高い奴が前衛を務めるべきだしな。
「その理屈だと、私が一番頑丈な気がしますが」
不思議そうにバトルスーツのアイナが主張する。
どうでもいいが、純白の髪って、やっぱり薄暗いところでは映えるなあ。
「まあそうかもしれないけど、もう先頭歩いてるし」
一瞬だけ振り向いてアイナにそう言ってやった。
「それより、各種センサーを最大限活用して、敵の所在を探ってみてくれ」
「了解です!」
大して期待してなかったが、アイナは張り切って答えてくれた。
「しかし……反応が一人だけあったってマリアの情報からして、今侵入してきたのって、やっぱりあいつかねぇ」
「そりゃテレサでしょうね」
俺があえて名前出さなかったのに、サクラが例によって平然と言いやがる。
あと、わがままなこいつは、いつも通り、人の言うことも聞かずに俺の隣を歩いていた。
「ユメぇ、ユメがパパの右隣ぃいいっ。サクラはあっちいけ!」
とユメがしきりにサクラのスカートを引っ張っていたが、「危ないから我慢しなさい」の一言で無視。
「なまいきなのよおっ」
一言で却下されたユメが喚いた。
「そのうち、後ろからパンツ下ろしちゃうもんっ」
その罵声に、思わず脱力した俺である。
復讐の仕方が俺と大差ない……まあ、俺の場合は思うだけだが。
しかも結局、ブツブツ言いながらも、ユメは俺の左隣にくるわけで……左右の違いで喧嘩することないだろうに。
それはともかく、歩き出していくらもしないうちに、アイナが叫んだ。
「マスター!」
緊迫感満載の声に飛び上がりそうになった途端、いきなり爆発音がして、通路が大揺れに揺れた。
「な、なんだ!?」
数日前から「創造主がキャラを愛でる」という新作書いてますので、よろしくです。