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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第七章 次の覇者は誰だ?
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財宝と対面……か

「闇の種族の一員であることを証明って……そんなのあるの?」


 サクラが振り返って俺達に訊いたのは、まあ当然と言えよう。今は味方とはいえ、こいつは元はブレイブハートだったからな。 

 しかしあいにく、俺はもちろん、ユメも武装メイドさん達も全員揃って首を傾げるという。


「誰も知らないのっ!?」

「というより、だいたいその合い言葉って、遥か昔に定めたものでしょうから、今の時代と関係ないと思います!」


 呆れたようなサクラの言い方に、エレインが尖った声で返す。


「もう、みんなで突入してあの二匹倒して、早くお宝ゲットでカラムーチョ食べたいのよっ」


 ユメがひときわでっかい声で叫んだ途端――

 例の割れ鐘のような声が応えた。


『それは合い言葉ではない。あと二回間違ったら、マジックドラゴンを解放する』






「わあ、ユメの叫び声を、勝手にカウントされたああっ」


 衝撃のせいで、俺はきっちり呻いてしまった。

 それでも、またカウントされないように声を低めたのは、上出来だったろう。

 まあ、チャンスが一度じゃなくて、助かったということころか。

 さすがのユメも目を丸くして、自分で自分の口を押さえてるし。


「めんどくさいから、合い言葉なんか無視して、あのドラゴンを殺っちゃいましょうよ? なんなら、わたしが先頭切るわ」


 既に全員の先頭にいるサクラが、相変わらず戦闘的なセリフを吐いてくれた。


「待て待て、刀の柄から手を離せって! せっかくチャンスがあと二回あるんだから、使わない手はないだろうっ。わざわざ、あんな物騒なドラゴンとやり合わんでも! なにか、闇の軍勢風のスローガンないか?」

「レージ様、わたしが試してみても構いませんか?」


 エレインがお伺いを立てたので、俺はしっかり頷いてやった。


「もちろん。外れた時はみんなで戦闘だから、気にせず試してくれ」




「世界が平和でありますように!」


 エレインではなく、いきなりサクラが叫び、俺達はぎょっとして見た。


『それは合い言葉ではない。あと一回間違ったら、マジックドラゴンを解放する』


 おまけに外れてるぞ、くそっ。


「か、勝手に命のカウント減らすなよな、おいっ」


 しかも、微妙に宗教入ってたし、今の!


「そうですよっ。抜け駆けはよしてくださいっ」


 自分が試すつもりだったエレインが、小声で文句をつける。


「早い者勝ちだわよ、そんなの」

「外れは黙っとれ!」

 

 サクラに言い返し、俺はエレインを促した。


「これ以上邪魔が入らないうちに、頼む。それとみんな、最後も駄目だった時に備えて、戦闘準備っ」

「はいっ」


 俺の号令に、みんな小声で応じてくれた。

 緊張漂う中、エレインは数歩前へ出て、大きく息を吸い込むと凜とした声で叫んだ。


「全ては、大いなる君のためにっ」





「いや、それはメイドさん達の挨拶だろっ。さすがに違うくないかっ」


 完全に失敗を予感した俺は、やむなく自分も前へ出る。

 遺憾ながら、俺が最高レベルで一番HPが高いんだから、高見の見物は許されんっ。

 しかし――驚いたことに、どうも今のが正解だったようだ。


 というのも、今にもこっちへ向かってきそうだったドラゴン二匹が、その場ですうっと消えてしまったからだ。

 アレはどうやら名前の通り、本気で魔法の産物だったらしい。


「うおっ。でかした、エレインっ」


 掌を返して激賞した俺は、勇んで入り口に駆けつけようとした。

 しかし、その頃には他のメイドさん達が――いや、誰よりも先にサクラとユメが揃って猛ダッシュを決め、奥の入り口まで辿り着いていた。


 軽く扉を押して見たサクラが俺を振り向く。


「鍵は掛かってないわ!」

「よ、よしっ。みんな揃うまで待て!」


 俺の返事に、みんな歓声を上げてサクラ達の元へ走った。

 こういうところは、さすがに年頃の女の子達である。


 ……ていうか、今度こそお宝と対面できるんだろうな?


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