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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第七章 次の覇者は誰だ?
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前進あるのみ!

「よぉし、到着!」


 一番下まで下りきり、俺はかまぼこ型の出口をくぐって飛び出した――が。


「おおっ」


 勢い余って、その正面の壁にぶち当たりかけちまった。

 一応、ここにも照明設備はあるらしく、壁際のランプみたいなのが次々と点灯していったが……なんだつまらん、ここも見るからにただの地下通路だ。


「階段の壁と似た、ブロックみたいなのを積み上げた通路だが……なんだよ、この施設は。こんなところに籠もって、何と戦ってたんだ」

「おそらく、もっと文明の進んだ、上層階のダルムートの施設と同じ敵かと」


 素早く周辺を警戒してくれているアイナが、冷静に指摘した。


「時代が進むにつれて、ここから上の階へ移り、さらに設備も増強されてダルムートの施設になったんでしょう」

「そ、そんなに長年、同じ敵と戦い続けたのかっ」

「しかも、結局決着がつかなかった可能性もあるわね」


 考え深そうにサクラが言う。


「ブレイブハートの全盛期だった百年前には、既にそんな謎の敵の情報はなかったんだから、先史時代のいずれかの時点で、敵の攻勢は途絶えたんでしょうけど」


「それより、お宝はぁあああっ」


 ユメがあっさり、皆の推測を遮ってくれた。

 まあ、今問題ないんだったら、確かにどうでもいいっちゃいいな。

 とはいえ――気になることもある。


「なんかここ、妙に臭くないか?」


「はっきりと臭いますぅ」

「なんというか……生肉が腐ったような臭いでしょうか」


 レジーナとエレインが、二人して頷き合った。

 他のメイドさん達も全員、顔をしかめて周囲を見渡していた。

 まあ、今の通路の状態だと、左右のどちらかへ進むしかないんだが。


「よ、よし……とりあえず、臭いがキツくなると思う方へ進もう。別に根拠はないが、そっちが正解の気がする」


 俺の号令で、皆が一方向へ進み始めた。





 しかし……歩き始めるとすぐにわかったが、この通路はどうも、想像以上にヤバいらしい。 足元の石床が、妙に色とりどりに見えるなと思ったら……よくよく観察すると、獣の血液とか普通に人間の血の跡だったりする。


「――っ! げげっ」


 俺などはぞっとして呻いちまったが、サクラは逆に「これは波乱の予感がするわねっ」などと急にテンションがアップしてやんの。

 ったく、どんだけ戦闘向きなのか、この転生ブレイブハートはっ。


「あの、レージ様」


 呆れてる俺に、エレインが声を掛けた。


「どうかしたか?」

「いえ……先程から、分岐に出る度に、迷わずに進む方向を選んでおられますが、なにか指針があるのでしょうか?」

「えっ」


 俺は思わず立ち止まってしまった。

 そ、そういえば、この短い間にも、何度かT字路みたいな分岐に遭遇してたな。言われてみれば俺は、その度に特に悩まず曲がる方を選んでいる。


「う……指針なんかない……はずだが? カオル君の声も聞こえないし」

「でも、臭気は確かにキツくなっていますよぅ」


 レジーナが慰めるように言ってくれた。


「そ、そうだな。とにかく、臭いの元へ行けば何かあるだろう……多分」


 うう……しかし、進めば進むほど、足元の通路が破壊されていたり、血で染まっていたりして、エグくなっているような。


「あ、人の骨が落ちてるわっ。一部だけど」


 ふいにサクラが、しれっと言ってくれた。


「マジか!」

「……そう言いながら、なんで見もしないで急ぎ足なの?」

「いや、人骨が落ちてるのなんか見たくないだろ、普通はっ。少なくとも俺はノーサンキューだね!」


 きっぱりと言い返しつつ、俺はまたしても分岐を悩まずに右へと曲がる。

 うっ……めちゃくちゃ臭いがキツくなった。

 しかも今回、少し歩くと、もう行き止まりである。両開きのゴツい扉が前を塞いでいる。俺の身長よりでっかい扉だしな。


「鍵がなきゃ開かないって言うんじゃないよな?」


 押してもびくともしなかったので、俺は首を傾げちまった。

 とその時――扉の向こうからエグい声がした『グァアアアアアアアアッ』という、一種、異様な呻き声のような、鳴き声のようなものが聞こえた。


 しかも、二重奏で聞こえたぞっ。


「な、中に何かいるっ。こんな地下なのに!」





「……レージが謎の勘に従って辿り着いた場所なんだから、当然、何がいようと進むしかないわねっ」


 妙に嬉しそうに言ったかと思うと、サクラがささっと前へ出て、いきなり抜刀した。


「前進あるのみよっ」

「あ、馬鹿馬鹿っ」


 ここは一つ出直して――などと消極論を展開しようとしていた俺は、いつもながら、完全に出遅れた。

 

 サクラは魔力付与の長大な刀を鮮やかに一閃させて袈裟斬けさぎりに扉に斬りつけ、さらに目にもとまらぬ素早さで刀を返し、今度は下方から逆袈裟斬りにした。


 要は、左右から連続して斬りつけ、扉を大きく×の字に斬り裂いたわけだ。さすがはブレイブハート、こんなにゴツい扉だっつーのに、今ので見事に深々と傷がっ。


「はあっ」


 しかもこいつ、トドメとばかりに最後に豪快に回し蹴りを入れ、本気で扉を爆砕させちまった!

 なんつー荒っぽい中坊だっ。


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