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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第七章 次の覇者は誰だ?
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隠された入り口


「ていうか、俺が重傷負わせたはずだけど、もう元気に動き回ってるのか、あいつ!」

『そういうこと』


 カオル君はあっさり言ってくれた。


『不死身ぶりでは君に一歩譲るだろうが、でも並の人間とは比較にならない回復スピードさ。なにしろ、バックアップに光の神アフランがついてるからね』

「くそっ。神様を味方につけるとは、なんてエグい野郎……いや、女郎なんだっ。ふざけやがってからにっ」

『いやぁ……君だってたいがいだと思うけど、まあ自覚のあるナシの差は大きいのかな』

「俺はいつも言うように普通人だって。それより、テレサが何を狙ってどこへ向かったのか、わからないか? 予想でもいいんだが」


『今回は、本当に皆目不明だな。ブレイブハート達も置き去りってことは、よほど秘密にしておきたいらしいね。当然ながら、なんらかの事情でまたそっちへ向かった可能性もあるから、十分に気をつけてくれたまえ』

「くれたまえて……たまらんよな、しかし」


 このダルムートが狙いとすると……考えられるのは、向こうも財宝狙いだろうか。

 カオル君との会話を終えた後も、俺はしばらく考え込んでいた。






 とはいえ、対策といっても結局は人数増やして動き回る、今以上の用心は望めない。やむなく、俺はぶつくさ言いつつ、皆を連れて第十三階層を歩き回った。

 途中、比較的早くサブコンピューターらしきものを見つけたので、その電源を回復させてやった。すると、エリア全体がたちまち明るくなって、だいぶ安心感が増したな。


 しかし、静まり返った通路を散々歩き回り、あちこちの部屋を覗いて回ったが、財宝の欠片も見つからない。

 マリアに個人的に頼まれたタイプ012の戦闘サイボーグ達がいそうな場所もナシ。

 探索初めて数時間で、俺達は疑心暗鬼に駆られてきちまったな。

 もしかして、この地下最深部は外れか? 他の階層ってことか?


「……お宝はぁあああ!」

「そうイライラするなって、ユメ」


 機嫌を取る意味でも、俺はユメを抱き上げてやった。

 すると、考え込みながら歩いていたピンク髪のレジーナが、ふいに言った。


「先程のレージ様のお話だとぉ、そのカオルさんという方は、『先史時代のレジスタンスが隠した~』的なことを仰ったわけですよね?」


 可愛らしく小首を傾げて尋ねる。

 俺じゃなく、サクラがはっとしたようにレジーナを見た。


「そうだったわ! ということは、むしろこの施設よりさらに地下にあるという、隠されたレジスタンスの軍道を見つけるのが先ということね」

「その通りだと思います」


 黙々と周囲に視線を走らせているアイナが、同意するように頷いた。


「時代的には、この機械化された施設より、その地下軍道の方がさらに古い遺跡ということになるでしょう。見つけにくさから考えると、財宝もそちらにあるのでは?」

「あのさ、マリアも忘れてるみたいなんで、なんとなく訊きそびれていたが……その遥か昔に、祖先達は一体、何と戦っていたんだ?」


 俺はもやもやとした疑問を、そのまま口にした。


「ブレイブハート達と闇の軍勢との戦いとは、また別口だよな? 最初は、地球での世界大戦みたいなものか? と勝手に思ってたけど、この施設の規模があまりにも半端ないんで、どうも違うような気がしてきたんだが?」

「確かに、先史時代には大陸中で何度か戦争もありましたが、このダルムートの地下基地は同朋を仮想敵とした施設ではありません」


 おおっ、明確に否定されたっ。


「当時の私は生まれたばかりですし、なぜかメインコンピューターのマリアまで記憶が消去されているようですけど――私が眠る前にマスターから聞いたところでは、敵は異世界から侵攻してきた戦士達だそうです」


「……えっ」


 俺は思わず足を止め、ほぼ同時に武装メイドさん達もその場で停止した。

 腕の中に抱いていたユメでさえ、「ゆ、ユメのことじゃないよねっ」と心配そうに訊いたほどだ。


「もちろん、違います。女神ヴァレンティーヌの事件があったのは、せいぜい百年前ですから。この施設というか基地は、それより遙か以前の建造物です。私がここで眠りについてから、既に千年以上は過ぎていますもの」

「……そこまで遠い昔だと、もはやどのような外敵だろうと、関係ない気もしますが」


 エレインが控えめに割り込む。

 実際、俺も同じ意見だった。当時は大問題だったんだろうが、今やテレサを始めとするブレイブハートという、当面の敵がいるからな。

 千年音沙汰ナシの敵なら、もう関係あるまい。

 なんとなくほっとしたところで、いきなりマリアの声が響いた。


『マスター、ジェネレーターが復旧したので、その第十三階層を精査していたのですが――そこから五十メートルほど先の通路に、故意に隠されたと思われる、謎の入り口を発見しました』


「謎の入り口ぃいいっ」

 うつらうつらしていたユメが、いきなり大喜びで叫び、俺の腕から下りた。

「そこが、お宝への入り口ねっ」


「いや、そうとは限らんけど――まあ、当然行ってみるよな」


 俺は、自然と急ぎ足になっていた。

 なにせ、テレサの件もあるからな。


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