財宝で決まり?
幸い、今いる指令センター的な場所の近所に、最下層まで一気にいけるエレベーターがあったので、俺達はもういきなり第十三階層? まで下りてしまうことにした。
第四階層までは復旧してるらしいので、順番を守るのなら第五階層からになるが、なにしろ急ぐからな。
どうせ兵器であれお宝であれ、あるとしたら最下層のどっかだろうし。
そして、どやどやと引き連れてきた全員がエレベーターから下りると、到着した第十三階層は、当然のように真っ暗だった。
「サブコンピューターを起動しつつ、この階層を復活させていきますか」
呟いた俺が歩き出すと、例によって気配りのエレインさんが、また明かりの魔法を灯してくれた。
というか、今回付き添いの武装メイドさんが多いので、あちこちで同じように魔法の明かりが灯り、安心感が半端ない。
やっぱ、少人数より大勢だよな、うん。
「張り切ってお宝見つけようね~」
ユメも俺の隣で、機嫌よく歩き出す。
……だから、お宝とは限らないというのに。
『もう、地下に下りたのかい?』
「わっ」
俺は焦って立ち止まり、片手を上げた。
「みんな、ちょい停止。カオル君だっ」
カオル君の声は他の者に届かないにしても、この際、皆にも俺の声が聞こえるように、素のままで話してやった。
「おい、あれからどうしてた? 急に消えただろ!? ずっと気になってたんだが、俺と直接対面するとまずいってのは、どういう理由なんだ?」
『悪いけど、それは本当に今は説明できないんだ。というより、しない方がいい。時期がきたらどうせ嫌でもわかるから、勘弁してくれたまえ』
「む? 前にもそんなこと言ったな? いずれわかるなら、待ってもいいが。あ、そういや、ルナとレナードはおまえと合流するとかいって軍議の後で城を出たけど、合流できたか?」
後から仲間に加わった二人のブレイブハートは、あくまでもカオル君と一緒にいたいらしく、打ち合わせの後は城を出ていたのである。
『大丈夫、ちゃんと一緒にいる。むしろ、合流できたからこそ、連絡を取る気になったんだ。ルナ達よると、ダルムートの地下で財宝か武器の隠し場所を探すって?』
「そのつもりだ。おまえは、その手の情報持ってないのか? せめて、俺達がなにを探せばいいのかとか」
『多分、君が予感した探すべきモノとは、財宝の方だろう。先史時代にこの大陸のレジスタンス達が戦っていた際、軍資金を元の拠点に隠したはずだから』
「マジかっ。じゃあ、財宝は本気で存在するわけだっ」
俺はカオル君に断りを入れ、聞き耳を立てているみんなにも、手短に知らせてやった。ユメが万歳してピンク髪のレジーナを巻き込んでハイタッチしていたのはともかくとして、他のみんなもおおむね、ぱっと明るい顔になった。
まあ、財宝があると聞いて、がっかりする人もいないだろう。
ただし、全員がすっきり納得したわけじゃなく、サクラが実に疑い深そうな顔で見てくれた。
「ねえ! なんでその人、そんな秘密を知ってるわけ? 邪神と戦っていた時代に生きてたわたしだって知らないことなのにっ」
「さぁな? 先史時代にも生きてたんじゃないのか。おまえより何度も転生してたりとか?」
あっさり言った後、俺はカオル君にそのまま振ってやった。
「で、なんでそんな重要なことを知ってるんだよ? 説明できるか?」
『説明はできるが、その根幹部分は、君と僕が対面しちゃいけないってことと通じるものがある』
やたらと複雑なことを言ってくれた。
『つまり、今は打ち明けられない。ただ、僕の知識量は所詮、君の転生前の記憶を越えるものじゃない。君だって、本来はもっと多くのコトを知っているはずなんだ。ただ、生まれ変わったが故に、今は当時の記憶を持たないだけで』
「俺はその、自分がかつてこの大陸で生まれていたってだけでも、まだ信じ切れてないんだがな……まあ、証拠も多く出てきたから、疑いようないのかもしれんが」
『今はいいよ、気にしなくて。どうせいずれは、君の記憶も戻る……と思う』
カオル君にしては頼りないことを言った後、ふいに彼は口調を改めた。
『それより、今コンタクトを取ったのは、財宝以外の用件なんだ。……実は、僕の協力者はなにもルナとレナードだけじゃなくて、まだブレイブハート達の中に残っているんだが――その人から密かな連絡があった』
一拍置いた後、カオル君は緊迫した声で囁いた。
『いつのことかは不明だが――テレサが単独でこっそり拠点を出て、どこかへ向かったそうだ』
「なにっ」
俺は思わず息を呑んだ。
……なにしろ、あいつが動く時って、大抵、ろくでもないことのためだからなっ。