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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第六章 ブレイブハート達と激突
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忘れられていた人と、消えたカオル君


「ユメ、ユメは無事かっ」


 大声で呼びかけたが、幸い、後ろからサクラが答えた。


「あの子は、簡単に死んだりしないわよ」

「わっ」


 背後にいたのに気付かなかった俺は、その声に飛び上がりそうになった。


「おまえ、いつの間にっ」

「……前に、レージのためにも戦うって言ったじゃない。忘れたの?」


 囁くような声で言う。

 つか、なにそっぽ向いてしゃべってんだ、こいつ。


「自分の戦いだけじゃなく、ちゃんとレージのことも見てたわよ」

「そ、そうか……それはどうも」


 俺が頭をかいた途端、ちょうどユメの方からこっちへ走ってきてくれた。


「パパ、パパぁ~。かっこよかった~」


 軽快に走ってきて、俺の腕の中に飛び込む。


「よかった、無事だったか!」

「うんっ。アイナもエレインもいたし、ユメも強いしっ。ユメだって、一人倒したのよっ」


「ま、マジかっ」

「ホントホントっ」


 腕の中に抱かれたまま、きらきらした瞳で俺を見上げ、自慢そうに言う。

 いつもながら、「ねぇ、ほめてほめてぇ」と思っているのが、丸わかりである。




 こういう時、「おまえ、そんな風に人を傷つけたら駄目じゃないかっ」と怒るのが世の親だろうが……しかし俺も今、気安く人を斬ってたトコだしな。

 言えた義理じゃない。

 それにユメが遠慮してたら、向こうがユメを斬るだけだ。そういう流れは駄目だ、絶対!

 だから俺は、小言はぐっと堪え、褒めてやった。


「偉いな、もう一人で戦えるんだなっ」


 ――けど、なるべくメイドさん達と一緒にいようなっと最後に付け加えておく。

 聡いユメはちゃんと俺の言いたいことを理解したようで、真面目な顔でコクコク頷いた。


「無茶しないもん。だいじょうぶ、だいじょうぶ」

「よしよし」


 しかし……そうすると、目的を達したというのは。

 改めて周囲を見れば、もはやブレイブハートどもは撤退したらしい。

 代わりに、ブレイブハートの死体が十名分くらいと、メイドさん達の死体くそっが三名分くらい倒れていた。


 ……ていうか、輪切りになったブレイブハートの凄惨な死体が四名分くらいいるが、これ絶対、アデリーヌの仕業だな?


 サクラと同じく、いつの間にか俺のそばに控えているけど。

 ちなみに、俺が最後に手を握った子は助かったらしく、ちゃんと他の仲間に抱き起こされていた。今、潤んだ瞳でこっちを見られたので、俺は慌てて目を逸らした。


「となると、誰が――て、ああっ」


 今頃になって皇帝のことを思い出し、俺は焦って広間の隅を見る。

 見れば、大臣だか側近だかが、誰かを囲んでわーわー騒いでいる。多分、あそこだっ。





「うわぁ、そういや元々狙われていたのはあの人だった。俺、途中から頭に血が上って、そんなの完全に忘れてたっ」


 俺はユメを下ろし、自己嫌悪に塗れて頭を抱える。


「ガードするのが目的だったのに!」

「気にすることないわ。わたしだって、レージに気を取られて忘れてたし」


 サクラが堂々と吐かしやがったのはともかく、アデリーヌまで恥ずかしそうに俯いた。


「その……わたくしも途中で、レージさまの元へ駆けつけるのに気を取られまして」


 以下、周囲にいたメイドさん達が我も我もと申告する……どうでもいいが、なんでみんな言い訳が「レージ様に気を取られて」なんだよっ。

 自分も同罪なんで文句を言うわけにもいかず、俺がただ憮然としていると、気配りの子であるエレインが、当の皇帝達の方へ走り寄り、事情を訊いてきてくれた。


「皇帝はまだ死んでいませんっ。かなりの大怪我ですが、助かる可能性があります」

「そ、そうかっ」


 俺は俄然、希望を持った。


「誰か、治癒の得意な人、なんとかしてやってくれ!」


 俺の指示を聞き、数名が慌てて走って行った。

 ……ていうか、みんな皇帝は二の次なのな。他人事ながら、なんて存在感の薄い人だ。

 あと、忘れていたといえば、カオル君はどうした?

 俺がきょろきょろしていると、そのカオル君のそばに立っていた二人の美男美女が、こちらへ歩いて来た。

 ブレイブハートの登場に皆が緊張したが、向こうの方から低頭して挨拶した。


「お初にお目にかかります」

「僕は前に会ってますね」


 美貌の少女に気を取られていると、真っ白な髪の少年が照れくさそうに笑った。


「あ~、確かに覚えがあるな。サクラとやり合った……レナードさん?」


 よし、奇蹟的に名前を覚えていたぞっ。


「覚えていてくださいましたか」


 レナードが嬉しそうに頷く。


「……僕も、貴方がカオル君と呼ぶあの人のお陰で、すっかり目が覚めたんです」


 その言い分に、俺達は思わず顔を見合わせた。


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