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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第六章 ブレイブハート達と激突
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テレサを狙う


 しかし、テレサはもちろん、アデリーヌも大いに本気だったらしい。


「ならば、受けて立つまでっ! 全員、突撃ですっ」

 

 りんとした響きの声と同時に、右手に自分の身長ほどもあるごっつい真っ黒な剣が現れる。それを手に、一瞬だけ俺を振り向く。


「大いなる君は、常に我らと共にありっ」


 笑顔で叫んだかと思うと、もう駆け出した。

 とんでもないスピードで疾走しつつ、最後に高らかに叫ぶ。


「全ては、我が大いなる君のために!!」

『我が大いなる君のためにっ』


 当然、配下の武装メイドさん達も、一斉に声を合わせて駆け出す。


「ま、マジかっ。マジで全面戦争かっ」

「お先に、レージ!」


 俺を押しのけるようにして、サクラまで飛び出していく。


「覚悟ぉおおおっ」


 一陣の風みたいな疾走速度で、たちまちブレイブハートの集団に斬り込んでいく。

 こいつら、血の気多すぎだろっ。

 余裕で出遅れた俺は、内心で動揺しまくっていたが、それでもとっさにファミリアの召喚に入った。


「ケルベロス、レッドウルフ、我が召喚に応じて敵を討ち滅ぼせ!」


 たちまち俺の眼前に青き魔法陣が現れ、そこから頼もしい魔獣共が飛び出して駆けていく。

 俺の潜在意識とシンクロしているから、味方が襲われる心配はないっ。

 よしっ、あとはユメを守って戦うかっと思った瞬間、身をくねらせて俺の抱擁から抜け出したユメが叫んだ。


「来てぇ、対の魔剣ダークスター!」

「こらこらっ」


 泡を食って止めようとしたが、もう遅かった。

 ユメのヤツ、俺の制止を予想してやがったらしい。両手に例の魔剣が現れるや否や、なんとその場で躊躇なくジャンプしたのである。

 これがまた、嘘みたいな跳躍距離で、止める隙も暇もなかった。

 ドレスのまま空中でくるくる回転して、すたっと敵の真ん前に着地を果たしてしまう。


「パパの敵はユメがほろぼすのおおっ」

「ま、待て待てっ。アイナっ、ユメを頼む!」


 自分も走り出すと同時に、アイナに声をかけた。


「お任せを!」


 頼もしいアイナが同じくユメの後を追って飛び、すぐそばに着地した。もちろん、その場で右肘のレンコン型のレイガンを露出し、手近な敵に連射しまくりである。

 それを見て、ブレイブハート達が明らかにざわめいた。


「き、気をつけろっ。これは先史時代の――ぐあっ」

「くそっ。散れ、散開して倒せっ」


 たちまち、ユメの周囲の敵が散ってしまう。よ、よしっ。少なくとも彼女がついててくれれば安心だ。

 さらに、俺もユメの応援に駆けつけるべく、慌てて走り出した。


(俺が闇雲に斬り込んだところで、効果は知れてるっ。俺が今、成すべきことはなんだっ)


 自問した結果、テレサに挑みかかることに決めたっ。

 本当はユメが心配だが、最後に見たところじゃ、アイナを始め、数名のメイドさん達があの子に付き従っている。

 そうそう心配はないはず。

 ならば、俺は俺で戦うべきだろうっ。


「と思ったけど、畜生っ。数が多すぎる!」


 テレサの元へ行くまでが、まず大変であるっ。

 乱戦の中、なんとかそちらへ近付こうとしたものの、早速、イケメンの一人が斬りかかってきやがった。

 ていうか、こいつらって不細工なメンツってまずいないな、しかしっ。

 覚醒条件に「容姿」とかあるんじゃないだろうな!


「滅びるがいいっ、闇の軍勢っ」

「なにをっ」


 俺がそいつの剣撃を受け止めた途端、いきなりそばで複数の声がした。


「おのれ、無礼者おっ」

「私が相手よ!」

「不敬よっ。誰を相手にしているつもりなのっ」


 どうも密かに俺のそばでガードしていたらしく、エレインを始めとして三名の武装メイドさんが、一斉にそいつに襲い掛かる。

「ぐふっ」

 それぞれ疾風迅雷の動きを見せ、喉を裂くわ、脇腹を串刺しにするわで、さしものブレイブハートがあっさり殺られちまった。そいつも素早く気付いて逃げようとしたのに、エレイン達の方が数段速かった!

 しかも、余った三人目のメイドさんなんか、死体が倒れる前にそいつを蹴りどかしてしまう荒っぽさ!


「邪魔よっ。レージさまの前で見苦しい!」


 さすがは強者揃いの武装メイドさんである。

 トドメに三名揃って、剣撃を受けただけの俺を気遣ってくれるという……。


「レージさまっ、ご無事ですかっ」

「遅れてすいませんっ、レージさまっ」

「レージさまっ。我らにお任せを!」


「いやいや、俺のことはいいから、ユメを守るか自分の身を守ってくれ」


 気兼ねして俺が指示した途端、いきなりカオル君の声がした。



『レージ、君なら可能だ! そこから跳びたまえっ』



 あとから考えても、なぜ俺がとっさにその言葉に従ったのかは、よくわからない。

 しかし、その時の俺は本当に一瞬でジャンプしていた。

 本当に、己が絶対に跳べないような距離を跳躍してのけたのだ。

 そして眼下にいたのは――本気で俺が狙っていた、テレサだった! もうどんぴしゃりだっ。


「来ましたね、諸悪の根源がっ」


 既に手近なメイドさんを斬って倒した(ちくしょうっ)ばかりのあいつが、俺を見上げてにんまりとほくそ笑んだ。


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