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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第六章 ブレイブハート達と激突
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総力戦

「なんとっ!?」


 飛び出しそうな目で、皇帝が俺を見た。


「ま、まことなのか、それは」


 おお、なんと流されやすい人か。たった一言で、もうグラグラだぜ。

 俺はがっかりしたが、それでも説得の真似事くらいはするかと思ったものの――ふいに聞き慣れた声が響いた。





「わたくしからご説明致しましょう、陛下」


「わっ」

「おお、アデリーヌっ」


 俺と皇帝がぱっと窓の方を見ると、武装メイドさん――つまり聖母騎士団の面々を率いたアデリーヌが、外に浮かんでいた。

 そのまま、全員が悠然と中へ入ってくる。


「レージ、まだ生きてる!?」


 まあ、忙しく飛び込んで来た、サクラみたいな例外もいるが。

 いちいちご挨拶だしなっ。


「生きてるわいっ。おまえこそ、遅いぞ!」

「どうやら、ちょうどいい時に来たようね。くくくっ」


 人の返事を無視し、ぎらぎら輝く瞳でサクラが言った。

 もはや頭の中は、宿敵と化したブレイブハート達へ斬り込むことで、一杯だろう。まあ、こういう時には実に頼もしい中坊である。

「陛下、よくお考えあれ」

 俺達の会話をよそに、アデリーヌが皇帝に向かって宣言する。


「今、陛下の目の前にある事実が全てでございます!」


 ぱっとテレサ達を指差す。


「ご覧下さいっ。ブレイブハートどもは、今や陛下を暗殺しようと集団で身構えております。対して、我々はどうでしょう? こうして陛下の危機をお救いすべく、駆けつけて来たのです。どちらが味方なのか、もちろん聡明な陛下ならおわかりのことでしょう?」


 最後に、色っぽい流し目きたー。

 しかも……ものの見事に、闇の軍勢の話は棚上げしたぞっ。論点のすり替えってヤツだな。

 だが、皇帝には実に効果のある説得だったらしい。アデリーヌの魅力に参っている彼は、「うむ、うむっ」と何度も頷き、ぐらぐらしてた心が定まっちまったようだ。


「そなたの申す通りだっ。危うく殺されそうになったばかりか、そやつらは王宮に火まで放ちおった! あの者達が味方のはずはないなっ」


 憤然と言い切り、さっきから他人事全開のカオル君の方を見る。


「あのロベールが駆け込んで助力してくれなんだら、危なかった! もちろん、彼もそなた達の味方だったのだな?」

「その通りですっ」


 俺は誰よりも先に答えてやった。

 つか、カオル君ってロベールだったのか! 俺は以前、アデリーヌに聞いた情報を思い出した。光の聖戦士と呼ばれる凄腕のブレイブハートがいて、名前をロベール・サンピエールというそうな。

 それがカオル君だったとは。


 幸い、俺の返事に対し、カオル君は皇帝に対して軽く会釈してみせた。否定しない限りは、もう味方確定である。

 まあ、俺の贔屓目もあるけどな。


「心強いことだっ」


 すっかり意を強くした皇帝は、もうだいぶ機嫌がよくなっていた。

 まだ勝ったわけでもないのに。





「愚か者どもめっ」


 テレサがすらりと魔剣を抜き放ち、皇帝に向かってびしっと剣先を突きつける。そのまま、ゆっくりと剣先を動かし、俺やアデリーヌへと向けていく。

「正義に背を向けるというのなら、皇帝もろとも全員を倒すまでのことっ」


「馬鹿野郎っ、正義の味方が暗殺のために王宮に押しかけた挙げ句、放火までするかよっ。寝言いってんじゃないぞおっ」


 俺はすかさず怒鳴り返してやった。

 俺だって、味方が大勢いる時は強いぜっ。


「さすがでございますっ」

「その通りですね!」

「光の軍勢はみんな敵なのよっ」


 しかし、俺の言い分に対し、少なくとも味方は思い思いの声を上げ、賛意を示してくれた。いや、こういうのっていい気分だなっ。

 しかし、テレサは舌戦なんぞ最初からする気がないらしい。


「問答無用ですっ」

「ならばこちらもっ」


 テレサに応じるがごとく、アデリーヌがメイドさん達に合図を出す。


「全員、戦闘準備っ」

『はいっ』


「うおっ」

 いや、思わず声が出た!

 だって、武装メイドさん達が一人残らず、自らメイド服を豪快に破いて脱ぎ捨ててしまったからな。そして……服の下に着ていたのは、なんと競泳水着みたいなバトルスーツだった。防御効果あるのか、あれ?

 胸が目立つところは個人的に嬉しいが。


 あと、当然ながら、もはや全員が抜剣した魔剣を手にしている。

 ……あ、なんかみんなが脱いだせいか、甘い香りが漂ってたまらん。

 緩んでるの、俺だけかっ。


「本性を現しましたねっ」


 テレサもまた、即座に全ブレイブハートに号令をかけた。


「余さず、皆殺しにせよっ」

「おぉおおおおっ」


 総勢百名近いブレイブハートの集団が雄叫びを上げる。

 うおっ。ちょっと正気に戻ったが、いくら広さは十分とはいえ、ここで殺し合いするのかっ。


 しかも、総力戦でっ!?


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