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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第六章 ブレイブハート達と激突
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ロクストン城の炎


 俺は心底慌てて、手近な壁に身体を擦りつけたり、上着を脱いで服に引火した火を消したりして、なんとか消し止めることに成功した。


 そして、「ふうっ」と息を吐いて周囲を見れば……全員が俺の慌てぶりを見物しているというね!

 一緒に戦っていたアデリーヌやサクラでさえ、もはや自分の相手を倒したのか、遠回しに眺めてやがるっ。

 さらに驚いたことに、増援要請に応えたのか、屋敷で留守を守っていたはずのメイドさん達が到着して、山のように俺達の周囲を取り囲んでいた。




「ちょっと! 人が焼死しそうになっているんだから、誰か助けてくれよっ」


「いえ、あの」

 アデリーヌがなにか言いかけるより先に、サクラが指摘した。


「でも、レージったら無傷じゃない。焦げてるのは、服だけよ?」


「ええっ」

 んな馬鹿なっと思って自分の服を点検すると……た、確かに俺、別になんともなってないな? おろ? 直撃した時、多少熱を感じた気がしたのに、焦げてるのは服だけらしい。

「ゆ、ユメのパワーか!」

 俺はニコニコと俺を見上げるユメを抱き上げた。


「いやぁ、いつも悪いなあ。良い子だぞぉ」

「ふふふっ」


 髪を撫でてやると、ユメはくすぐったそうに笑った。


「ユメじゃないけど、ユメでもいいのよ~。幸せな気分だからぁ」

「またまたぁ~」


 俺が一緒になって緩んでいると、またしてもサクラが俺をつついた。


「レージの不死身は置いて、それより城の方はどうしたのよ!? さっき、罠がどうのって言ってたでしょっ」

「そ、そうだっ、カオル君は!」


 思い出した俺は、即座にロクストン城がある方角を見た。

 暗い上に、さすがにこの距離だとなにも見えんよな? と思いかけたが……いや、そうでもないぞ。

 なんか、陽炎みたいなのがゆらゆらと――


「レージさま、煙がっ」

「それだっ」


 アイナの声に、思わず大声で賛同する。


「いかん、俺の危惧が当たった! ホントに二重の罠だったらしい。みんな、今からでも城の方へ急ごうっ」


 俺はよほど慌てていたのか、ユメを抱えたままいきなり走り出した。

 しかし、すぐにアイナが追いつき、いとも簡単に俺達を小脇に抱えた。器用にも、ユメと俺を左右に分けて!


「お急ぎのようなので、私がお運びしますっ」

「す、すまない――おわっ」

「きゃははっ。高い高いっ」


 途中でアイナが大きく跳躍し、民家の屋根の上に飛び上がり、俺はまた声を上げてしまう。

 ユメは喜んでいるようだが、なんとアイナは、屋根から屋根へとバンバン飛んでいきやがる。そりゃまあ、直線コースが一番早いのは確かだけどっ。


「大丈夫です!」


 俺の声に反応したのか、アイナが言う。


「お連れの方達も、全員、ついてきますわ」

「ええっ」


 無理な姿勢から振り返れば、これもマジだった。

 アデリーヌを始め、サクラや他のメイドさん達全員が、僅かな遅れのみで俺達に追従している。つまり、同じく屋根の上を飛んでいるんである。

 こいつら、いちいち人間離れしているなっ。

 普通人の俺は、ついていけない世界だぜ……。


「加速します!」


 途中でアイナが一声叫び、俺達はさらに後続を引き離して、城へと急いだ。






 城に着くと、アイナは俺が指示するまでもなく、軽々と城壁を跳び越え、ロクストン城の敷地内へふんわりと降り立った。

 幸い、誰も見ていない。

 まあどうせこの騒ぎじゃ、仮に今が真っ昼間で、誰かに見られたとしても、全然問題なかったかもな。

 なにしろ、城の王宮に当たる本館の半分が炎に包まれている。


「じょ、冗談! ひょっとして殺られた後かっ」


 あの女好きのひょろりとした皇帝を思い出し、俺は戦慄した。

 仮に殺されたとしたら、このままブレイブハートのクーデターが成立してしまうかもっ。


「いえっ」


 うっすらと光る瞳で本館を眺めていたアイナが、首を振った。


「熱源探知すると、本館五階で二手に分かれた集団がいるのが見えます。そこへ向かいますか?」

「頼む! て、ああっ」


 頼んだ後で、ユメのことを思い出したが、もう遅いっ。

 ユメと俺はアイナの小脇に抱えられたまま、豪快に跳躍して、直接五階の窓に飛び込んでいた。


短編書いたので、お暇な方はどうぞ。

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