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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第六章 ブレイブハート達と激突
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二重の罠か?


「エレインっ、ユメを見てやってくれ!」


 当然、走りながらも、ユメのことを頼むのは忘れない。


「レージ様っ。敵なら私が片付けますからっ」


 エレインの心配そうな声が聞こえたものの、悪いが無視させてもらった。

 まさかとは思うが、アデリーヌを失うわけにはいかないっ。

 彼女ほど知勇兼備な戦士って、希少だしな。まあ、仮に希少じゃなくても、俺は助けるけどっ。しかし、通りを横切る寸前に、脳裏で声が聞こえた。




『レージ、これは罠だっ』


「うお、カオル君かっ」

 当人から連絡が来て、否応なく通りの途中で止まった。

 しかも、俺のセリフを取りやがるっ。


『こっちはこっちで交戦中――なんだ! カフェに向かう途中で襲われたのさっ』


 なにやら緊迫した声でカオル君が言う。

 途中、声がぶつ切りになったのは、どうやら奮闘中のためらしい。


「じゃあ、こっちに来てるあのイケメンは誰だよっ」


 今や、店内で睨み合っているアデリーヌと元カオル君を見つつ、俺は喚く。


『わからないが、誰かが擬態の魔法で僕の姿に似せたんだろうっ。どうやら僕は、マークされていたらしい。こちらを片付けたら、すぐに応援に向かうよ!』

「いや待てっ」


 ふいに閃いた俺は、そこで声を抑えて要請した。

 とっさに感じたことだが、意外と俺の閃きが当たってそうな気がする。

 なにせ、あのテレサって女は、めちゃくちゃ陰険そうだったからなっ。


「こっちに来なくていい! おまえは敵を片付けたら、王宮の方へ急行してくれっ。俺が思うに、これは二重の罠の気がする。俺達がこっちへ戦力を集中している間に、敵は皇帝を暗殺するつもりと見た!」


 珍しく、カオル君が息を呑む気配がした。


『――そうかっ。そもそも明日暗殺決行という、事前情報すら嘘の可能性があるかっ。わかった! ちょうど敵は片付けたから、僕はこのまま城へ向かうっ。君も気をつけてくれたまえっ』

「おうっ。おまえも達者でな!」


 ささっと話し合いを終えた俺は、速攻でエレインを振り向いた。

 いや、慎重かつ対応の早い彼女のことだから、なんらかの形で屋敷へ援軍を要請すると思ったので。もしそうなら止めないといけないっ。

 さっき俺がカオル君に言ったように、今この瞬間、ここに全戦力が集中する事態は避けるべきだっ。


 ……と思ったのだが、あいにく遅かったらしい。


 おそらく魔法だろう――エレインはちょうど、上空へ炎の塊みたいなのを打ち上げた直後であり、夜空が一瞬、赤く染まっていた。


 同時に俺に向かって「今、援軍を呼びましたっ」と報告してくれたし。

 早い、早いよっ。


「そ、そうかっ。ホントに、これが二重の罠じゃないといいんだが」

「えっ」


 ユメの肩に手を置いたエレインが、はっとしたように俺を見た。


「いや、こっちの話さ!」


 今更、彼女に苦情をねじ込んだところで、遅い。

 だいたい、俺の勘が必ずしも当たるという保証もない。

 もう気分を変えて、反撃に出るしかあるまいよ。どのみち、アデリーヌには加勢しないとな。店内の連中、今にも襲い掛かりそうだしっ。


「こっちはこっちで行くぞ――て、先を越された!」


 例によってサクラの立ち上がりは早いっ。

 一応、俺とカオル君が会話しているのを察して、結果待ちはしてたみたいだが、「戦闘続行」とみるや、とっとと走り出したらしい。

 蹴り開けるようにしてカフェの入り口から飛び込むと、抜刀して手近な男に斬り込んだ。


「覚悟おっ」


 き、気合い入りすぎだろ、あの中坊っ。一旦動くと、雷光みたいなスピードだし。

 でも、今回ばかりは俺も見習うぞっ!


 幸い、借りてそのままだった刀は、ズボンのベルトにぶち込んできている。

 俺は入り口を駆け抜けるなり抜刀し、アデリーヌを囲む輪の中に斬り込んだ。





「死んでも恨むなああああっ」

「むっ、新手かっ」


 誰かが喚いて振り向きそうになったが、俺が突っ込む方が先だ。


「おおよ!」


 喚きつつ、躊躇なく斬りかかる。

 まだ奥の手には早いっ。まさかのために取っておくべきだろうな!


「レージさまっ」


 アデリーヌの驚いたような声がしたが、そっちを見ている暇はない。

 早速、唸りを上げて襲ってきた剣撃を、必死で受け止めたところだったからだ。

 こいつ、マジ速いっ。さすがにただのハンターとはレベルが違うな。ブレイブハートが相手とは、嫌過ぎるっ。


 自分の無謀さに泣きたいところだが、なんとか押し返して、その隙にアデリーヌの元へ駆けつけることができた。


「無事かっ」

「わたくしのために――レージさまっ」


 感極まったように彼女が抱きついてきて、俺はたちまち緊張感がすっ飛んだ。

 あ、胸が当たるから、ちょっと今は控えてほしい……ちょっと惜しいけど。


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