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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第六章 ブレイブハート達と激突
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アデリーヌを尾行

 翌日、俺達はさらに施設内探査と地上周辺探査を続行して、例のテレサが侵入した場所をついにみつけた。見つけてみれば簡単で、地上の遺跡から少し離れた古い洞窟の奥に、地下のここへ繋がる細い通路があった。


 なぜテレサがそんな場所を知っていたのかは謎だが……アデリーヌ曰く、「あの女は、転生戦士でもあるようですから、百年前の前世記憶の中に、この進入路の情報もあったのでしょう」ということらしい。


 とりあえず、その進入路は塞いだが――。

 これからそんな奴らを相手にすると思うと、たまらんなっ。


 そう、俺に皇帝暗殺の情報をリークしたカオル君のお陰で、俺達は――というより、この俺は、皇帝暗殺を阻止することを決断した。

 軍議とかでみんなで決めればいいやん? と思うのだが、そもそもこの聖母騎士団という団体の指揮官であるアデリーヌからして、俺の決断が全てと思っている節がある。

 日本じゃ社会からレールアウトした落ちこぼれで、バイトすらろくに見つからなかった俺に、全ての判断を委ねるとは……度胸よすぎだろっと思わずにはいられない。


 しかも、アデリーヌ以下、メイドさん達のほぼ全員が、俺の日本での実情をよく知った上でのことだからなっ。


 というわけで、つい先日まで「やぁ、貴族の美人パトロンさんが見つかって、今後はいろいろ楽できるなぁ」と喜んでいた俺の思惑は、はかなく消えた。

 金の心配も住居の心配もない代わりに、全員の命の心配と責任が、ずっしりと双肩にかかってるという……。

 いつの間にか俺は、アデリーヌ以下全員に命令を下す、最高指揮官的な役割を押しつけられているわけで……正直、先が危ぶまれる。


 なにしろアデリーヌは、「レージさまがおられる限り、決断の全てはレージさまにお任せします!」と豪快に丸投げ宣言してくれたんで。

 そもそも今までからそうと口にしなかっただけで、出会った最初から、そのつもり満々だったそうな。ユメですら「うん、パパが司令官なのよー」と言いやがる。


 立場を全然理解してなかったのは、俺一人だけらしい。


 内心で青ざめた俺は、体よく断ろうと思って「じゃあ、俺が溶岩の中へ飛び込めと言えば、黙って従うわけか?」とふて腐れて訊いてやったが、あいにく敵の方が上手だった。

 アデリーヌと――たまたまそこにいたエレインの二人が同時に深く頷き、『ご命令とあらば、喜んで!』などと声を合わせやがる。


 ……神風特攻隊じゃないぞ、くそっ。


 全力で遁走したいところだが、俺の第一目標が「ユメの安全」にある以上、この組織とおさらばするわけにもいかない。

 はるばる日本までユメを狙ってきた奴らがいたわけで、絶対に戦力は必要だろうしな。

 それを考慮しても、俺の判断一つでこの組織の運命が決まるわけで、今から胃が痛い。


 せめて、アデリーヌやサクラなどの、戦闘経験値高そうな連中の意見をたくさん聞くことにしよう。




 

 というわけで、テレサとやり合ってからきっちり二日後、留守を守る部隊は別として、俺達はまたしてもロクストン帝国の帝都に舞い戻っていた。

 もちろん、例の転移の魔法陣のお陰だ。


 ダルムートの地下施設にも、アデリーヌの屋敷にあるのと同じ魔法陣を描き込んだ部屋を用意したので、もはや帝都までちんたら移動する必要はなくなった。


 今や軍議も済んで、当日はメイドさんが普段着に変装して、各持ち場で待機するということも決まった。奴隷市とやらは、不謹慎なことに演劇場を借り切ってやるらしいので、襲われるとしたら城からその劇場までのどこかだろうと。


 ただ、本番は明日としても、今夜は今夜で仕事がある。

 ……例の、カオル君との会見である。

 既に場所と時間は決めたので、後は人選だけだ。




「というわけで。ぜひ頼んだ、アデリーヌ」


 別に仕返しではないが、俺はカオル君と会見する相手として、アデリーヌを指名した。


「なんたって、組織内じゃ最高レベルだしなあ」

「……最高レベルはレージさまだと思いますが」


 アデリーヌはくすっと笑うと、俺の手を握った。


「ですが、ご命令を頂き、嬉しゅうございます。このアデリーヌ、身命を賭して任務を果たしましょう」


 一階ホールまで見送りに来た俺を、アデリーヌが潤んだ瞳で見る。

 ……今日のドレスも、胸の谷間が深い。

 いや、今はそれどころじゃないな。


「別に戦う必要ないんだよ。もしなにか予期せぬ問題でもあれば、さっさと逃走してくれ。アデリーヌの命の方が大事だ」

「……もったいなきお言葉」


 頬を染めて深々と一礼した後、アデリーヌは意気揚々と出発した。


「よし、俺達も行くぞっ。こっそり後をつけるっ」


 一応、彼女が門を出るまで屋敷の前で待ち、俺は背後に声をかける。

 ふふふ……俺とて、たまには動くのだ。カオル君だって、別に遠くからこっそり見るなとは言わなかったしなっ。



「了解です、マスター!」

「はいっ」

「おーーっ」

「任せなさい! 先日の借りを返してやるわっ」



「……は?」


 後ろを見て、俺は愕然とした。

 柱の陰に隠れて待機していたのは、俺が指名した戦闘サイボーグのアイナだけではなかった!

 色っぽいタイトミニとマント姿のエレインもいたし、なぜかユメもいた。おまけに、回復したばかりのサクラまで鼻息荒く立っていたっ。


 しかもこいつ、絶対なにか勘違いしている気がする!


「こらこらっ。ユメ達は呼んでないぞっ」


 俺は思わず喚いちまった。 


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