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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第六章 ブレイブハート達と激突
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釘を刺す


「どうした? 会うと具合の悪いことでもあるのかっ!?」


 俺がいささか苛立って尋ねると、向こうはあっさり言ってくれた。


『具合の悪いことは確かにあるね。ただそれは、君の想像するような理由じゃないんだ。僕らが今のタイミングで会うと、かなりまずいんだよ。その代わり、君以外の誰かなら、別に問題ないんだけど』 


「俺以外なら会えるけど、俺とは無理ってことかよ?」

『正確には、無理というか危険なんだ。今は理由を言えないけど』


 謎の返事に、今度はこっちが黙り込む番である。

 これは、どう判断すりゃいいんだろう。


『どうする、レージ? 僕は君以外の誰かになら、会見に及ぶことにもやぶさかじゃない。それに、皇帝暗殺の件も、ぜひとも防がないと。もちろん、僕は僕で動くつもりだが』

「動けばなんとかなる立場なのか?」

『それはまあ、今はノーコメントかな』

「じゃあ、暗殺計画の具体的な日取りは? それはわかるのか?」

『今のところ、次の奴隷市の日だと聞いている。つまり、三日後の帝都内かな』


「ど、奴隷市ぃぃい?」

『そのまんまの意味だよ。ユリアノス皇帝は、年に二回ほどの頻度で開かれる、帝都内での奴隷市を、毎回非常に楽しみにしているし、何名も買って帰るんだ。もちろん、買われるのは全員、女の子さ』


 気のせいか、カオル君の声に微かな嫌悪感がまじっていたような気がする。

 まあこいつは、潔癖そうだしな。





「むううっ」


 俺はあまりのことに、素で唸ってしまった。

 カオル君の謎は置いて――そこまでして女を漁ってるのに、なおかつアデリーヌやサクラまで落とそうとするとは。どこまで女好きなんだ、あの人っ。


「助ける気合いが下がるが、しかし今集まっているブレイブハート達が国を乗っ取るよりマシだろうしなぁ」

『その通り。女好きだという点はともかく、皇帝はあくまで無害で無能な人だけど、テレサ率いるブレイブハートは違う。有能な上に、有害この上ないね』


「わかった。確かにあのテレサって女は、とてもヤバそうだ。よし、俺からアデリーヌに伝えて、対策を練るよ。おまえも、近々またコンタクトしてくれ。会見の設定をする」

『いいけど、くれぐれも君以外とだよ?』

「ああっ。約束はちゃんと守るさ」


 俺はカオル君との話し合いをやめると、その足でそっと部屋を出た。

 もちろん、廊下に出た瞬間、マリアにユメのことを頼んでおいた。

 暗殺の件も対策を急ぐ必要があるが、あのテレサだって、いつまたこっちを狙うかわからないしな。




 とはいえ、アデリーヌの部屋は俺の二つ隣なので、距離的にもほとんど離れていない。

 幸い、入り口にあるチャイムを押すと、彼女はまだ起きていて、すぐに俺を入れてくれた。

 なぜかむちゃくちゃ素晴らしい笑顔であり、「まさか、これほど早くお越し頂けるとは、感激でございますっ」なんて言ってたが、こりゃ絶対なにか勘違いしているな。


 ソファーに誘われた俺は、すぐに訪問の目的を話してやった。

 話の流れ上、やむなくこれまで黙っていたカオル君のことも打ち明けると、たちまちとろけるような彼女の笑みが消えた。


「レージさまには、なんらかの協力者がおられるような気がしていましたが、まさかそういう方だったとは」

「未だに謎だが、そっちは俺の指名する誰かに会見してもらうとして――問題は、目前に迫った皇帝暗殺の件だ」


 俺はあえて彼女の方を向き、はっきりと尋ねた。


「あいつも俺も、最悪の事態を回避するためにも、皇帝は助けるべきだろうと結論を出したけど、アデリーヌはどう思う?」

「わたくしの意見などは、問題ではございませんが……しかし、今回はわたくしもそのお方と同意見でございます」


 アデリーヌは風呂上がりの湿った金髪を撫でつつ、悩ましいため息をついた。

 うう……ドレスは既に薄い夜着だし、なんか香水みたいな香りはするし、ちょっと危ないな――俺の理性が!


「ユリアノスはいずれ倒す相手としても、今テレサ達が彼にとって代わるのは、我々にとってあまりよい結果とは言えません」

「俺もあの皇帝が好きってわけじゃないが、別に倒す必要はないだろ、俺達も?」

「それがレージさまのお心なら、わたくしに否やはございません」


 アデリーヌは神秘的な微笑を広げた。


「それでは、当面は敵の暗殺計画を阻止することについてのみ、考えましょう」


 あっさり折れたアデリーヌを見て、俺は日頃からの疑問がむらむら沸き立つのを感じた。ここらで、ちょっとはっきり言っておいた方がいいかもしれない。

 今はいいチャンスかも。


「レージさま?」


「ああ、うん。いや、ちょっと話が逸れるんだけど、俺も異世界でユメ関係のゴタゴタに巻き込まれてるから、『俺=ユメのパパ神説』があるってことくらいは、知ってるんだよ。ただ、今のうちに断言しておくけど、それは誤りだぜ? 俺の本質はあくまで、単なる間宮玲次なんだ。いい機会だから、はっきり主張しておくよ」


 きょとんとするアデリーヌに、ずばり告げてみた。


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