大浴場の夜
仮本部に戻るまでは、さすがにもうなにも起きなかった。
それに、俺達があの女に遭遇した話が既にマリアを通じて伝わったのか、途中から山のように援軍が駆けつけてきたしな。
そこでもサクラを下ろす下ろさないで揉めたが、結局俺は最後まで背負っていった。途中でサクラがまた寝ちまったようなので、起こすのも悪いし。
俺はマリアの指示でサクラを医務室的な部屋へ寝かせ、ようやく一息つくことができた。
その後、俺達はアデリーヌに、探査中の遭遇事件について話した。
アイナのことは朗報としても、あのやたらと冷酷そうな金髪女――ブレイブハートのテレサ・パラディーヌのことを聞くと、アデリーヌは見る見る顔を曇らせたな。
「もはや、この地下拠点まで見つけるとは……すぐに、手を打ちます」
「まあ、みんな無事だったんだからいいけど、進入路が何処だったのかは、突き止める必要があるかもなあ」
俺としては、そう言う他はなかった。
サクラは当分安静らしいので、俺も今日は休みということにして、自分の部屋――というか、自分の仮部屋につかっている部屋に戻ろうとした。
しかし、俺とユメの後ろを、当たり前のような顔でアイナがついてくるのには参った。
「そういえば、アイナの部屋も確保しないとなあ。まあ、そこら中で部屋が余ってるから、別に問題ないだろうけど」
「よかったねぇ、アイナ。お家賃もいらなくて、おとくなのよー」
ユメが所帯じみたことを言ってくれた。
ただし、アイナはなぜか驚愕していたが。
「えっ。……私はマスターと一緒の部屋でご奉仕するのでは? そう理解していましたが」
「ま、まさか!」
「パパの部屋は、ユメとパパの愛の巣だから、駄目なのよっ」
「ちょっ! そもそも本来は、おまえにも部屋があるんだぞっ。俺の隣だと決めたろっ」
「あそこはもう、アイナにあげるモンっ」
「おいおいっ」
俺は慌ててユメにも突っ込む。
そういやユメも、ずっと俺の部屋にいるしな!
今更、気付いたぜっ。
「と、とにかく」
俺は慌てて手を振った。
「俺は凡人なんで、大して世話する必要なんかないよ。それより、今日はアイナも活躍したんだし、早めに部屋を決めて、お風呂にでも入ってゆっくりしたら? 誰の趣味か知らんけど、浴槽付きの部屋が多いししな、ここ。そこら辺探せばあると思うぞ」
……ただ、俺の部屋の近辺は、なぜかささっと全部埋まってしまってんだがな。
「あ、それならっ」
胸の前で両手を合わせ、アイナが嬉しそうに言う。
弾みで、純白の綺麗な髪がふんわりと舞った。
「私、大きな浴場のある場所、知っています。ここから近いです、マスター」
「なんと!」
「おっきなお風呂、入りたいのっ」
俺とユメは思わず声を上げてしまった。
しかし、アイナってちょっとした仕草が、普通の女の子以上に女の子っぽく見えるな。
さすがは、最新型だぜ……いつの最新型だって感じだが、どうせこの子を上回る新型なんて、もう二度と出ないだろうからな。永遠の最新型だ。
「近いなら、行ってみるか」
俺もユメも風呂好きなので、速攻、方針が決まってしまった。
一度部屋に戻り、着替えやらタオルやらを持ち出し、俺達は再出発した。
マリアのコントロールを外れた区画だとさすがにヤバいが、どうやら俺達が知らなかっただけで、さらに地下に巨大な浴場があったらしい。
でもって、そこも現在進行形でマリアの管理下にあるとか。
よく考えたら入るまでに準備に時間がかかる気がしたが、マリアにもついでに訊くと、管理は常にしてあるので、「すぐに湯を張ります」とのこと。
……そういう美味しい設備があるなら、もっと早く教えてほしかった!
こういうトコ、やはりマリアはAIなのだなぁと思ったね。
で、アイナの先導で、俺達が存在すら知らなかった専用エレベーターでさらに地下に下りると、なんとそこは、もはや脱衣場みたいな場所だった。
入り口が二つあって、ちゃんと男女別に分かれている!
未来世界っぽい場所のくせに、内部は鏡台やら籠やらが並んでいるという……マジで、元の世界の銭湯みたいだな!
俺とユメは、大喜びでそのままいつも通り服を脱ぎかけたんだが、そこで俺はようやく気付いた。
……俺達の隣では、一緒になってアイナも脱いでいたっ。
「わあっ」
焦った俺は前を隠して、思わず叫んじまった!
ちらっと横向いた瞬間、もうホント、モロに彼女の胸の膨らみが全部見えたっ。
「ここ、男湯用の脱衣場だけどっ」
「はい。でも、わたしはマスターの持ち物も同然ですし」
きょとんとアイナが言う。
こっち見た瞬間に豊かな胸も微妙に揺れて、一気に俺の体温が上昇したし。
「それに、ユメちゃんだって、女の子ですわ」
「きゃははっ。アイナ、いこっ」
浴場への入り口が巨大なせいか、期待感満載のユメが歓声を上げて走り出した……アイナの手を引いて。
当然ながら、二人とも裸である。
うわ……ヤバいっ。ユメはともかく、アイナの曲線が素晴らし過ぎるお尻とか、一気に全部みちまったぞっ。