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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第五章 幻の地下都市
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サクラのサービス

「平気だってば!」


 人が心配してやってるのに、サクラは俺の手を邪険に振り払う。

 腹を押さえてじろっとアイナを見た。


「ところで、この子は?」

「仮名、アイナ。向こうの部屋で見つけた、プロトタイプのヒューマノイドさんだ」


 俺の間抜けな紹介にもかかわらず、アイナは微笑して低頭した。


「マスターのしもべでございます。よろしくお願いしますね」


 ……この手の女の子は受け入れられるかな? と思ったが――。

 少なくとも俺の心配は、ユメに関しては杞憂だったな。

 走ってきて手を伸ばし、ユメがバトルスーツの足にぺたぺた触ったのだ。気を利かせたアイナが腰を屈めると、ユメは喜んでアイナの頬にまでぺたぺた触った。


「すごいねー、人間そのままだねぇ」


 きゃははっと陽気に笑う。

 笑ってる場合じゃないけど、心が和むな。


「な、良い子だろ? おまえも、この子にはのっけからキツいこと言うんじゃ」

 言いかけたところ、サクラが俯せに倒れているのを見て、俺はぎょっとした。

「お、おいおいっ」


 抱き上げて膝の上に抱えたが、もう全然意識がないっ。

 おまけに、顔色も真っ青だった!


「エレインっ、治癒を!」

「わかりましたっ」


 さすがに彼女の行動は素早く、意識を失ったサクラを横たえ、早速治癒魔法を使ってくれた。

 ……こいつはホント、気絶するまで意地を張るからなっ。





 さすが高レベルのエレインの治癒のお陰で傷だけは塞がったが、サクラはまだ目覚めない。

 やむなく、後は俺が背負って仮本部まで戻ることになった。

 仮本部というのは、あの戦艦の司令室みたいなのがあったところだ。


 ちなみに、俺が背負って運ぶことについても揉めそうになったのだが、俺は断固自分が運ぶと言って譲らなかった。

 口が悪いのはアレだが、サクラには世話になってるからな。


「パパがぁ、ユメ以外の女をおんぶしてるぅうう」


 不平そうにユメが頬を膨らませていたが、俺は苦笑して言い聞かせた。


「まあ、そう言うなって。昔はブレイブハートでも、もう今は仲間なんだし。俺にとっちゃ大事な戦友だよ」


「マスター、本当に私が運びますが?」

「いえ、むしろ私が」


 アイナとエレインにも首を振り、俺は「それより、周囲の警戒頼む」とだけ言っておいた。

あんまりしゃべると息が上がる。





「……太股に触ってる」


「わっ」

 いきなりサクラの声がして、俺はまたしても飛び上がりそうになった。

「目が覚めたかっ」


「まあね……まだダルいけど」


 確かに、少し声に勢いがないな。

 身体もぐったりしたままだし。


「治癒魔法の影響だろうな。でもまあ、そのお陰で傷が塞がったんだし、エレインに礼を言っとけよ」

「……迷惑かけたわね」


 珍しく、サクラが本当に礼を述べた。


「お礼などいいですが、もう歩けるのでは?」


 エレインはらしくもない意地悪な言い方をしたが、俺はあえてサクラを下ろさなかった。治癒魔法使われた後のダルさは相当なものらしいからな。あの傷じゃ血も大量に失ったし、すぐ歩かせるのはまずいだろ。


「おまえも、また意地張って無理に下りようとするなよ? いいな」

「……身体が密着してるわね」


 返事がそれかい。


「密着してないと背負えないわいっ。あと、おまえの太股も、触らんとどうにもならんっ。別に襲わないから、文句言うなっ」

「冗談よ」


 サクラは微笑を含んだ声で囁いた直後、どういうつもりか、自ら両足をきっちり俺の胴に絡め、あまつさえ両手でしっかり抱きついてきた。

 まさかそんなことをされるとは思わず、俺はこいつの正気を疑ったほどだ。


「おい……本当に大丈夫なんだろうな?」

「戦友だと言ってくれて、ありがとう」


 俺にしか聞こえない声でサクラが囁く。


「聞いてたのかよ」


 耳に温かい息がかかって、くすぐったい。……それと、今更ながらに背中に押しつけられた、胸の膨らみを意識してきたりして。

 どういうわけか、手足を必要以上に絡めておぶさってるしな。


「お礼に……少しはサービスしてあげる」


 こっちの疑問を読んだように、また俺の耳元で囁きやがった。


「けっ。むしろ、おまえがそうしたいんじゃないか?」


 たまには俺だって、言い返すのである。すぐに返事はなかった。

 よほど時間が経ってから、サクラはようやくぽつりと答えた。


「そうかもしれないわよ?」


 ごくごく小さな声だったが、確かにそう聞こえた。

 こいつ……寝ぼけやがって。

 一人で焦っていたら、本当にサクラの身体からガクッと力が抜け、微かな寝息が聞こえた。


 なんだよ、本当に寝ぼけてたのかよっ。ちょっと期待しちまっただろうが! 



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