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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第五章 幻の地下都市
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ご命令をどうぞ

 俺はとっさに、その子の武器――つまり、どう見てもライトセーバーにしか見えない物騒なビーム剣みたいなのを取り上げようとしたが。

 しかしなんと、この子はいきなり息を吹き返したように動き出し、俺の腕を取った。


「待ってください! 貴方は人間なんですね?」


 話しかけるのと同時に、ぶっそうなビーム剣の刃は収めてしまった。


「わっ」


 この子、俺の動きに追従したぞっ。まさか時間の鈍化ができるわけじゃないだろうから、動きをこっちに合わせたってことか!? 

 そんなことが可能だなんて……どれだけのスピードで動けるんだよ。


 だいたい、ただ速いだけじゃなくて、普通は思考速度も合わせる必要があると思うんだが。

 ぶったまげている間に、発動時間はあと四秒だしなっ。



「ちょ、ちょっとこっちへ!」


 たまたまその先の部屋のドアが少し開いていたので、俺はその子を伴ってささっと部屋に入り、手でドアを閉めた。


 自動ドアだろうが、今の状態じゃ勝手に閉まらないからな。

 閉めきったところでちょうど時間切れになり、歓声を上げながらサクラ達が走って行く音が聞こえた。


「敵、敵はどこぉおおおお」

「ユメ、うるさいっ。わたしが先よっ」

「レージ様ぁ!」


 お、お祭り騒ぎだな、あいつらっ。

 なんか勘違いしてないか!

 まあ、とりあえず揉めごとは回避したので、改めてこの子をじっくりみた。


 ……全身一体化した濃紺の競泳水着みたいなのまとってるが、これはアレか、戦闘スーツ的なものか? ところどころラインが入ってたりして、それっぽいし。

 長い髪は光沢のある純白で、瞳は薄赤い。

 どこの人種だよって感じだが、まあここは異世界なので、不思議はないのか。


「俺は最近、マザーコンピューターのマリアのお陰でここに移ってきた者だけど、君は?」





「私は、プロトタイプヒューマノイドの、タイプ013です」


 ……今さらっと、とんでもないこと聞いた気がするぞ。


「旧型モデル、タイプ012の改良版で、最新鋭の実験機です。より人間に近い挙動と思考ができますし、性能も旧型より五割以上はアップしているはずです」


 ちょっと誇らしげに言われたが、俺はそれより、意外すぎて思考が追いつかない。

 つまりこの子……ロボットとかアンドロイドとか、そっちの系統かっ。


「ところで――貴方は今、極端に動作速度が落ちましたが、今の動きが標準ですか?」


 小首を傾げて訊かれた。

 ……本当に、人間にしか見えないんだが。


「動作速度? ああ、パーフェクトタイムのことな。それは異能力であって、普段の俺はあんな速く動けないよ。ていうか、そもそもいじってるのは時間の方なんだけど。それよりだ――カプセルがあった部屋を見つけたけど、君はあそこにいたのか?」


「はい。元々、この時代に目覚めるようにセットされていました」

「どういう理由で、誰が!?」

「完成した直後に私を眠らせたのは、マスターです。もちろん、理由は私もお尋ねしましたが……しかし、マスターはお答えくださいませんでした。『その時、きっと必要になるから』とだけ仰って」


 少し考え、付け足した。


「こうも仰いました。『マミヤ・レージという名の異世界から来た男が、必ずおまえを見つけるだろう』と。……もしかすると、貴方がそうですか?」


 期待感たっぷりに訊かれたが、俺は度肝を抜かれてあんぐり口を開けていた。

 マザーコンピューターのマリアが『先史時代の貴方を知っている』的なことを告げ、あっさりと俺をマスターだと認めたが……正直、今の今まで信じてなかったのだな。


 あくまでも俺は、ユメという存在のお陰でここへ来た、単なる元日本人だろうと。

 しかし……こうやって別のガチ証拠に遭遇してしまうと、その自信もちょっと揺らいだりして。本気で俺は、かつてこの世界で生きていたのだろうか。

 とそこまで考え、まだこの子が大人しく返事を待っていることに気付き、俺は慌てて頷いた。




「あ、ああ。俺は確かに間宮玲次だ。呼び方はレージでいい」

「やっぱり!」


 初めて表情が緩み、女の子は胸の前で両手を合わせた。


「では、なんの問題もありません……今から貴方が私のマスターです、レージ様」


 彼女はそう言うと、その場で片膝をつき、うやうやしくこうべを垂れた。


「ご命令をどうぞ」

「いや、そんな堅苦しい挨拶はいいよ」


 俺は慌てて彼女の腕を取り、もう一度立たせてあげた。


「それより、十分ほど前に向こうの通路で俺達を監視していたのは、君にとってのマスターを見分けるためかな?」

「私は監視していません」


 彼女は即答した。


「私がマスターに本当の意味で出会ったのは、つい先程、レージ様が角を曲がってきた時です。足音だけを聞いて先に戦闘態勢を取っていましたが、まだお連れの方達の顔も見ていません」

「……なんだって」


 俺は思わず息を呑んだ。



 つまりなにか……サクラが見たって奴は、この子とは別口なのかっ。


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