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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第五章 幻の地下都市
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ゴジラのごとき女の子達

「マリア、不審者の現在地は?」

『そのまま、まっすぐ進み、次の突き当たりを左へ行ってください。今は、そこで立ち止まっています』


 俺達は顔を見合わせた。


「近いじゃない! 突き当たりなんてこの先に見えてるし」


 サクラが言うのも道理で、今は通路が明るくなっているから、見通しが利く。

 実際、突き当たりは百メートルほど先だ。


「下手したら、こっちの声も聞こえてるかもですね」

「あの角を曲がったら、敵なのね~……わくわくっ、わくわくっ」


 冷静なエレインもアレだが、全然怯えないユメにも困ったもんだな、しかし! 

 警戒しているのは俺だけかよっ。

 おまけにユメはいきなり両手をまっすぐに伸ばしたかと思うと、張り切った声で叫んだ。




「来てっ。対の魔剣、ダークスター!」


「おわっ」

 いや、久しぶりなんで驚いたっ。

 呼びかけに応じて、ちゃんとあの真っ黒な刃の剣がユメの両手に出現したという……相変わらず、刃に星の光がきらめくような、不思議な光芒を放っている。

 もう自分の武器を呼び出せるほど、力が戻ったのかっ。


「きゃははっ。見て見てぇパパ、Darkness is coming!」


 俺を見て足を止め、嬉しそうにわざわざ双剣をびしっと構えてくれた。


「かっこいいでしょ!?」

「あ、ああ……それは疑いようがない。おまえは天性のスターだ」


 右手の魔剣は上段に、左手の魔剣は下段にという、ユメ独特の構えだ。めちゃくちゃ防御力高そうなのはいいが……いつもながら、なんで英語だよ。


「パパを守ってあげるぅ~」


 俺の横でニコッと笑われると、文句も言いにくいな。

 笑顔可愛いし、ゴシックドレスで双剣持つと、ヤバいほど決まってるし。コスプレ会場とか行くと、あっという間にカメラ小僧に囲まれそうだ。




「悪いけど、ユメの分なんか残らないわよ。あたしがいるもの」

「いえ、敵を倒すのは私の務めです」

「ユメの見せ場なんだから、みんなえんりょするのよーーっ」


 サクラとエレインが凜々しい声で宣言し、慌てたユメが足早になるという……この集団、女子率高いのに、殺し合い好きな奴多すぎだろっ。


「ま、待て待てっ。なにも見るなり襲い掛かる必要はないんだよっ。話し合いが先だろ、話し合いがっ。登場するなり、街を破壊して回るゴジラじゃないんだからっ」

「話し合いはレージに任せるわ。わたし、説得とかめんどくさいの苦手だから」


「いや、俺もおまえに話し合いは期待してないっ」


 俺はサクラにきっぱり言い切ると、集団の先頭に無理矢理立ち、自ら足早に歩き出した。こいつらに任せると、絶対、いきなり殺し合いになるからなっ。

 しかし、俺が足早になると、みんな負けじと足早になり、サクラなんかしまいには駆け足も同然になるという。


 くそっ、なにがなんでも、こいつらに任せてはいけないような気がした。

 相手を見つけるなり、絶対わっとばかりに襲い掛かりそうだ。


「そこで、いきなり俺の猛ダッシュ炸裂!」


 この際、自分からスタート切ってやった。

 自慢じゃないが、俺は逃げ足の速さだけは自信あるのだ。遁走させたら、最速だからなっ。





「甘いわね、レージっ。足の速さなら、そうそう負けないわよっ」

「レージ様っ」

「ユメが、ユメが倒すのぉお!」


「わっ」

 振り返ると、三人と全然距離が開いてなかった! こいつらみんな、速すぎっ。

 しかも、凄みのある笑みを浮かべたサクラが真後ろに迫っていて、ぞっとした。ヤバい、もう曲がり角はすぐ先だ。


「甘いのはおまえだ、サクラっ。俺の奥の手を忘れたか、パーフェクトタイム!」


 もう距離も近いし、問答無用でスキルを発動し、独走態勢に入ってやった。


「それはずるいわよっ――」


 例によってガギィンッというエグい音がしたかと思うと、スキル発動を察したサクラが喚きかけた声が消え、周囲の全てから色彩が抜け落ちていく。

 ハウリングみたいな音のみが小さく満ちる中、俺は余裕の独走態勢で走りきり、見る見る分岐に迫る。発動時間九秒のうち、残りあと六秒!

 興奮していたせいか、俺は話し合いの精神をころっと忘れ、素早く抜刀して怒濤の勢いで角を曲がった。


 そして、見えた人影に向けて刀を――て、待てっ。

 危ういところで刀を引く。



 こいつ……いや、この子……武器は持ってるけど、女の子じゃないか!


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