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引き取った女の子は邪神の転生体でした  作者: 遠野空
第五章 幻の地下都市
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怪しい痕跡

「誰かって……ここにか?」


 俺は我ながら怖じ気づいた声で周囲を見た。

 エレインの明かりがなければ、今だってこの周囲は真っ暗なはずなのだ。


 それに、マリアの管理が行き届いている区画と違い、この廃棄されたままの通路だと、さすがに足元にもうっすらと埃が――




「――おわっ」


 俺は通路の床を見て、ぶったまげた。


「足跡がある!」

「ほら、ご覧なさいっ」


 サクラが偉そうに胸を張った。


「いや、俺は最初から疑ってないっ。でも、実際に足跡なんか見つけたら、驚くだろうが! 下手すると、千年くらいは放置されてたかもしれない場所だぞ、ここは」

「この足跡は」


 早速、有能なエレインがその場にしゃがみ、足跡を調べた。

 こういう時、速攻で前へ回り込んでスカート覗きたくなる俺は、やはりどこか駄目人間だな。まあ、今更だが。


「……サイズからすると女性ですが、でも足跡がついたのは、まだ新しいですよ」

「ということは、パパの拠点に、誰か勝手に入ってきたの?」


 ユメが不服そうに言ったが、エレインもサクラも首を傾げた。


「まだ、そこまではわからないわね」

「侵入してだいぶ経つのなら、もっと足跡が残っているはずよ」


 サクラは既に刀の柄に手をかけていた。

 いつもながら、喧嘩っ早い。まあ、侵入者が本当にいるなら、俺達に友好的だとは思えないのも確かだが。

 サクラが人影を見たという前方を眺めると、少し先で突き当たりになっていて、Tの字に分岐している。


「そいつ、どっちへ行った?」

「右の角からこっちを見てたわ」

「女だったわけか?」

「長い髪がちらっと見えたから、女でしょうね。でも、そこまで明かりがほとんど届いてなかったから、髪の色までは見えなかったわ」


「……うう、気が進まないが、確かめるしかないな」

「私が先行して確かめましょうか?」

「わたしが先へ行って確かめてもいいわよ?」


 やる気満々の女性二人が同時に言えば、ユメまで「ユメが見に行って、あやしいのがいたら、こらしめてあげるぅ」などと俺の腕を引っ張った。


「ユメは、女の子にしては物怖ものおじしないよなあ」


 俺はユメの頭を撫でてやったが、きっぱりと言った。


「今は単独行動とるより、全員で動いた方がいいと思う」


 珍しく、誰も俺の意見に異を唱えず、俺達はそろそろと先へ進んだ。





 当然、サクラが「何者か」を見かけた、右の角へと曲がり、警戒しつつ歩いて行く。

 通路自体は非常に広くて歩きやすいのだが、なにしろ俺達が歩く音以外、何一つ物音がしないわ、行く手は真の闇が広がっているわで、緊張感が半端ない。


「追うつもりで同じ角を曲がっても先は真っ暗ってことはだ、そいつは明かりもなしに動き回ってるってことだよな。いよいよろくな目的の気がしないな」


 俺が呟いた瞬間、エレインが「あっ」と声を上げた。


「どうした!?」

「いえ……少し先に、明かりが洩れている部屋があるようですわ」


 彼女が指差す方向を、俺達は慌てて見やる。

 言われてみれば、ずっと先でごくごく微かな明かりが見えていた。


「ここの動力が何かは知らないが、それはもうずっと切れたままだったはずだよな? そのために、俺達がこうしてサブコンピューターとやらを起動しに歩いてるわけで」

「そんなの、あそこへ行ってみればわかるわよっ」


 いつもの強気発言と共に、サクラがずんずん先へ急ぐ。

 一人で行かせるわけにもいかないので、俺達も必然的に急ぎ足で進み――そして、問題の場所へ着いた。


 元は自動ドアだったのだろうが、今は金属ドアが半ば開いた状態で、止まっている。明かりは、そこから洩れていたらしい。


 サクラを先頭に、俺達が中へ入ると―― 





「なんだ……これ」


 驚いた俺は、むしろサクラに並ぶようにして、部屋の奥へ向かった。

 そこには、大型コンピューターの四角い筐体みたいなのに囲まれるようにして、人型をした楕円形のカプセルが設置されている。

 しかも、上部の透明カバーが、開きっぱなしになっていた。

 明かりは、そのカプセルが光っているためだったらしい。


「ここにも、今し方ついたばかりのような足跡があります」


 エレインが早速、カプセル前の床を指差す。


「誰かがこの中にいて……ついさっき目覚めたのかもしれません」


 こ、こんな場所に、誰がいたんだ?

 俺は思わず周囲を見渡したが、相変わらず静まり返っていた。


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