上級ダンジョンに住まう男
TIT Top:頂上 Iatent:潜在 TurnOver:覆すの頭文字を取ったその言葉は国家に認められた多大なる恩恵と恐怖を与える人物を指す言葉だ。生まれついた時から体に紋章を刻まれ、ある人は重力を操りまたある人は万人を同時に癒す力を持つ。迫害を受けそうな異常とも言えるその力が国家や多くの人に羨望や畏怖を持たれているには理由があるそれが迷宮の存在だ。近代国家を支える魔法具や生活を潤す道具はダンジョンからもたらされる魔物の素材や魔素核によって作られるている。命を落とす確率が高いダンジョンでチートの存在はその国単位で必要不可欠になっている。決してチートの存在を無駄にしてはならない、引きこもりにさせるなどもっての外なのである。
部屋でテレビに映る女性のインタビュー見ている男がいる、その男の名は沖田誠司。5歳の時に初級ダンジョンを単独で2つ、中級ダンジョンを1つ制覇して天才少年としてその名を轟かせた男だ。テレビやCMにはひっぱりだこCDを出せばミリオンセラーにまでなった。この国いやこの世界はダンジョンに如何に関わったかによってその人物の価値が決まるのだ。
つまり、5歳の時にダンジョンで偉大な功績を作ろうと12年間ぱったりダンジョンに関わらなければその価値はゴミ屑と同等なのである。沖田誠司は今、国家にとってそんな存在となっていた。
『斎藤零さんは昨日あの中級ダンジョン【黄昏の迷宮】を単独で制覇されました』
ムジテレビの人気女子アナウンサーが頬を高揚させながらその女にインタビューをしていた。
「けっ、そんなの俺は5歳の時にしてるってーの」
コンソメ味のポテトフライを食べ炭酸飲料を飲み干した後に誠司はそんな悪態を付いた。でも顔は悪くねぇなと内心思いその人物をテレビの画面を通してマジマジと見る。
顔は目鼻立ちがしっかりしながらも強い印象を持たない優しくて可憐という言葉がぴったりでありながら体はメリハリのついた妖艶さを纏わせていた。
「C、いやDはあるな。すばらしい」ぽつりとそんな言葉が思わず出るほどだ。
ドンッドンッと誠司の部屋のドアを叩く音がした。せっかくテレビを見て楽しんでいたのにと邪魔をされイラつきながら布団を頭までかぶる。
「聞こえていますか?私は国家迷宮対策事務次官の花園です。沖田誠司君出て来て話し合いませんか?」
また来たのかと思い溜息を吐くと誠司は男と女がカラミ合ういわゆる大人な映像を大音量で再生させる。しばらくドアを叩く音が続いていたが諦めたのかけたたましい音は鳴り止んだ。
今日はやけにあっさり引き下がったなと思って布団から顔を出すと女の声が聞こえてきた。
「もういいです。やはり私が実力行使で引っ張り出します」そんな言葉が誠司の耳に入ってくる。誠司は声を押し殺して笑った。俺の部屋を実力行使で開ける?そんなの事は不可能だと誠司は思っているのだ。
国家には迷宮案件というファイルがありそこには初級、中級、上級、最上級、神級とあり誠司の部屋はなんと迷宮案件の内の一つ上級ダンジョンに数えられていた。絶対に侵入不可能、物理攻撃不可の部屋、それが誠司の部屋なのである。ドアが数回叩かれた後
「誠司さん聞こえますか?これからあなたの部屋を壊しますご容赦して下さいね?」
そんな言葉が聞こえてきた。誠司は久しぶりにそんな挑戦者が来たことに興味を覚え
「あぁ、やれるものならやってみろよ。出来きたら話ぐらい聞いてやろじゃねぇか」
部屋の外にそんな誠司の大声が聞こえてきた。大音量で今だ大人の映像が流れている為そのの反応がよく分からずにいたが
「失礼」
そんな言葉がドアの向こう側から聞こえてくると誠司は目を見開いて唖然とした。なんと目の前の壁がドアごと消えてしまったからである。そこには一人の少女が微笑み立っていた。さっきまで見ていたあの可憐な顔と妖艶な体を持つあの少女が。
「始めまして、元【時空のチート】沖田誠司。私は【消滅のチート】斎藤零と申します」
少女はそう言いながら深々とお辞儀をした。