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ここはなにかが欠けている

人気のお仕事(一部では)

作者: 浮月重月
掲載日:2026/08/24

貴族は家系を繋ぐ事で苦労しているが、平民も様々な苦労がある。

経済的な面に限るなら、むしろ平民の方が苦労は多いであろう。


子供達も成人前には大抵気づく。己が身の今後を考えないと、と。

そして子供達は探すのである。自分の出来る事、やりたい事を。


実家の家業を継げる者は、選択の余地こそないが悩む事は少ない。

一獲千金を求めたり、浪漫を求め続けたりする者は冒険者を志す。

堅実な道を歩みたい者は、例えばどこぞの職人や商会で修行する。

飛び抜けて賢い者ならば国や領の公職を目指す者もいるだろう。

体力だけには自信がある、なんて者は兵士に志願する者も多い。


平民の次女三女以降は、嫁入りという永久就職の方法があるが、

こればかりはお相手がいなければ出来ないので、ある意味難しい。

次男三男の婿入りは、さらに難しい。家業付きの一人娘は少ない。

さらに貴族にはあまり問題視されない「恋愛感情」も絡んでくる。

年頃になれば、彼ら彼女らはその狭間で大いに悩むことになる。


だが、こうして悩むことが出来る者達はまだ幸せなのである。

行末を他者に押し付けられた者達が、かつて大勢いたのだから。



王国は近年、農業と畜産業の急速な伸び、治安の向上などによって、

人口増加が著しい。出生率はやや上がって餓死者傷病者が激減した。

職業さえ選ばなければ、街道整備や農地開拓など仕事が増えている。


大半の町では規模の大小はあるものの、一角には貧民街が存在した。

そこでは行き場をなくした者、育てられない子供が捨てられていた。

しかし経済の底上げが達成された今、そうした者は激減している。


本来喜ぶべきであるが、そうした者を雇いあげる者達は困っていた。

具体的に言えば、犯罪組織や娼館などである。


犯罪組織はまあ正直、極一部の者以外は存続されても喜ばれまい。


だが娼館のほうは…新人が補充されなければ店は立ち行かなくなる。

かと言ってなくす訳にもいかないのだ。求める者が絶えないので。

では新人の娼婦を大々的に公募出来るか?と言えば、難しかろう。

このまま放置していて、人身売買などに走られてしまっても拙い。


当初意識もしていなかった各地の貴族家は、この問題に悩まされる。

おそらく娼館がなくなれば、表向きの町の雰囲気は改善される。

しかし不満…いやそれ以外も溜め込む者が確実に増加していく。

犯罪がらみの非合法な娼館が人知れず増えてもらっては意味がない。


公立娼館を作っては?という案も出されたが、猛反発を受けた。

主に貴族のご婦人方、ご令嬢方から。ある意味当然である。


最終的に反発を受けながらも、公立娼館が新設される事となった。

その従業員、というか娼婦達は、実は犯罪奴隷や借金奴隷である。

例えば結婚詐欺、悪質な横領事件などの女性犯罪者達が採用された。

他者を踏みにじった罰は踏みにじられる事で償うがよい、と。


幸いと言って良いか疑問だが、こうした女性犯罪者は絶えなかった。

捕縛しても捕縛しても、あぶくの如く後から後から湧いてくるのだ。


気になって調査した文官がいたのだが、その結果にあきれ果てた。

罪を償ったとされた者が、なんと同様の罪を犯して舞い戻っていた。

娼館に戻った女達数名に面会して、その疑問の答えを聞いてみると、


「ここでは好きに飲み食いできるし、夜もまあまあ楽しめるから」


と返ってきた。罰のはずが罰になっていない。しかも若い娘が多い。

確かにここで衣食住は保証され、宝飾品も貸し出してはいるのだが。


文官は上司たる領主達に報告したが、領主達も考えるのを諦めた。

表向きは問題も見えないし、もうこの結末でいいか、と。

元の濁りの田沼恋しき。ちなみに男の犯罪奴隷は過酷な強制労働。

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