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女装して悪役令嬢を助けたら、ロックオンされて逃げられなくなった件  作者: 新田青


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8/8

最終話


 二年後。


 俺は念願叶って王立学園に入学することが出来た。


「剣術試験主席、アレン・シュバイツ!」


 名前が呼ばれ、俺は「はい!」と大きな声で返事をする。


 ここまで本当に長かった。日々剣術の鍛錬と、勉強の日々だった。


 朝早く起きて剣術を磨き、頭にハチマキを巻いて机に向かう。


 そして、カナリアの呼び鈴に忠犬のように従い、時にサーカス団の真似事をさせられ、時に事件の尻拭いをさせられ、心がすり減る毎日だった。


 その我慢がようやく身を結んだのだ。しかも、剣術試験において俺は主席だ。


 これからカナリアのいない輝かしい学園生活が始まるのを想像すると、ガラにもなく涙腺が熱くなる。


「次は筆記試験主席」


 そんな事を考えていたら、筆記の主席が呼ばれる段階になった。


 原作では聖女がここで登場するのだが、俺は今まで一度も彼女を見たことがない。


 まあ、どうせ主要キャラは全員イカれてるから関わりたくもないのだが。


「セレスティーナ・ガーデイン!」


「んえ?」


 俺は思わず変な声を出してしまった。


 主席って聖女だよな? いや、まて。セレスティーナだと?


「はい!」


 高いが、張りのある声をあげて一人の女子生徒が壇上に上がってくる。


 白い制服に身を包み、凛とした格好のセレスティーナを見て、俺は思わず固まった。


(誰だよ!?)


 セレスティーナは二年前とは違って縦巻きロールじゃなくなってるし、身長も伸びていた。


 歩き方も大人びていて、壇上に上がった彼女に男子生徒の視線が集中する。


 俺は訳のわからない状況に頭を抱えたくなった。


 そもそもセレスティーナは聖女とは一年遅れで入学する筈である。


 彼女がこの年に学園に入学するのはありえないのだ。


 ──いや、まさか。飛び級?


「皆さん。セレスティーナ・ガーデインです。この度は名誉ある新入生代表スピーチを任せていただいてとても嬉しく思います」


 セレスティーナがスピーチを始める。


 そこには昔の孤独に苛まれていた彼女の姿はなく、成長した貴族令嬢の姿があった。


 俺の額には冷や汗が伝う。


 彼女は人よりも努力したのだろう。それはわかる。だが、ここまでポテンシャルを秘めた存在だったのか。


 幼いセレスティーナは騙せたが、今はその自信がない。


 いや、待て。


 そもそも関わらなければいいのだ。今の俺はただの男爵家のアレンとしてここにいる。伯爵家の令嬢と接触することなんてないだろう。


 俺はため息をついた。


(何を神経質になってたのか)


 俺はもう状況に振り回される男ではないのだ。自分の力でカナリアから離れてこの学園に入学した、立派な逃亡者なのだ!


(セレスティーナも主要キャラも全員無視して学園生活を楽しむぞ!)




 ――――――――――――――――――


「あら、あなた剣術試験の主席よね。アレンでしたっけ?」


「は、は、は、はい」


「どうしたの? なんか凄い汗だけど」


「い、いやぁ。ちょっと暑くて」


 教室の席に座ったら、隣にセレスティーナがやってきた。


 そして今、彼女と関わらない様に置物に徹していたはずが、急に声をかけてきたのだ。


 この女。2年間で社交性も身につけてやがる。


「そう? 暑いならハンカチ貸しましょうか?」


「いえ。大丈夫です。ハンカチ嫌いなんです」


「そ、そう?」


 もう少し気の利いた返しをすればよかった。ハンカチが嫌いってなんだ。


「──それより貴方」


「え?」


 セレスティーナの視線がやけに鋭い。顔に穴が空きそうなくらい凝視してくる。


「凄く……綺麗な、青い目をお持ちなのね」


 心臓が口から飛び出るかと思った。


「あ、ありきたりな目ですよ? な、なんですか? もしかして口説いてるんですか?」


 そういうと、セレスティーナは顔を赤くして目を釣り上げた。


「なっ!? そ、そんな訳ないでしょう!?」


「そ、そうですよね? はは。すみません。勘違いしちゃって」


 少し恥はかいたが、これでセレスティーナも俺に関わろうとは思わないだろう。


 セーフだ。俺はあのカナリアから逃げきった男なのだ。自信を持て。


「いいわ……それより、貴方ってシュバイツ家のご令息なのよね?」


「そ、そうですけど」


 頬杖をついて俺を見るセレスティーナ。俺は、思わず顔を背けた。


「ちょっとっ。なんで顔を背けるんですの?」


「あ、いや、はは。ちょっと寝違えちゃって」


「こっちを向きなさい」


 いきなり頭を掴まれて、強制的にセレスティーナの方を向かせられる。


「な、なんでしょう?」


 じっと見てくるセレスティーナに、俺はただ問いかける事しかできない。


「うーん……」


「あ、あの」


 まさか何か勘付いてるのだろうか。もしそうだとしたら、俺の学園生活は終わったも同然だ。


 死刑宣告を待つ囚人の様な気持ちで言葉を待っていると、セレスティーナはついに手を離した。


「ま、いいわ。それよりよろしくねアレン」


 いきなり呼び捨てである。年下のくせに。


「え、ええ。よろしくお願いしますセレスティーナさん?」


「セレスって呼びなさい」


「え、えっと……それは」


「私は命令したのよ?」


「はい……セレス?」


「うん。それでいいわ」


 それっきりニコニコしたまま俺から視線を外したセレスティーナ。


 その様子に俺はカナリアに虐められていた日々を思い出して身震いする。


 これから始まる学園生活は、きっと上手くいかないだろう。


 暗雲立ち込める未来に、俺は頭を抱えた。






 


 

もう少しボリュームある中編を目指していたのですが、なかなかままならないですね!

引きがある終わりになってしまいますが、ここまでお付き合いいただきありがとうございましたm(__)m

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