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八人の最狂ポンコツヒロイン、最強の絆で世界を護るらしい ~結果的にS級冒険者、でもポンコツしかおらん!~  作者: ざつ
本編

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第7話 家出令嬢と最強の友情 -2

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3. 作戦説明、しかし…

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フィーネの錬金工房は、武器や資料、得体の知れない錬金素材で足の踏み場もないほど散らかっていた。その中央に置かれたホワイトボードには、複雑なアークライト家の家系図と、リリア父の過去の事業報告書がびっしりと貼り付けられている。


フィーネは、真剣な顔でマーカーを握り、七人のヒロインたちに熱弁をふるっていた。


「というわけで、今回の任務は、リリアの実家であるアークライト家との関係を改善し、リリアを正式な形で家に戻すための『交渉材料』集めです!」

「なるほど」

「この書類を見る限り、アークライト騎士団長には隠れた弱点があるはず……!

 その弱点を探し出して、交渉を有利に進めるんです!」


フィーネは、全員の顔を見回した。その瞳には、リリアを救うという使命感と、同時に「大儲け」という下心が見え隠れしている。だが、会議室の空気は、フィーネの熱意とは裏腹に、どこかズレていた。


リリアは腕を組み、冷たい視線でフィーネを見つめている。その隣では、アキナがリリアを気遣うように立っていた。


「何を馬鹿なことを」

「私が自分で決めたことよ。あなたたちの助けなど……必要ないと言っているでしょう! 私は父上の……指図など受けないわ!」

「リリア……」


リリアは頑なに反発する。その言葉には、家出を決意した彼女自身の強い意志が込められていた。


「でも、このままじゃリリアの居場所がなくなっちゃいますよ!」

「そうですよ!」

「ご両親だって、本当は心配してるはずです!

 それに、このままじゃギルドの評価も……!」


フィーネは必死に説得しようとするが、リリアの態度は変わらない。その時、イリスが口を開いた。彼女は手に持った古文書に目を落としながら、アークライト家の家系図をちらりと見た。


「ふむ。アークライト家の歴史と、リリアの魔力無効化能力の関連性について、興味深いデータが取れそうね」

「おおっ!」

「私に協力できることがあるならば、惜しまないわ。

 特に、人間関係における『弱点』の解析は、私の研究にとっても非常に興味深いテーマだわ」

「イリス様、ありがとうございます!」


イリスの言葉に、フィーネは飛びついた。アリスがイリスを「先生にしか」とおだてた時と同じ、知的好奇心とプライドがくすぐられた表情がイリスの顔に浮かんでいた。


「リリアのためなら、俺、何でもするぜ!」

「隠し事なんて、正義の剣でぶった斬ってやる! リリア、俺に任せとけ!」

「アキナ……」


アキナはリリアに満面の笑みを向け、胸をドンと叩いた。その言葉に、リリアは居心地悪そうにプイとそっぽを向く。


「だから、あなたたちに頼むことなど何もないと言っているでしょう!

 勝手な真似はよして!」


リリアの反発は続く。しかし、彼女の視線がアキナのまっすぐな瞳と重なった時、ほんの一瞬、その表情に迷いがよぎったように見えた。


ルナは、フィーネの用意した資料を小声で読み上げていた。


「データによると……リリアさん……お父様は……怒っている……とても……」

「えっ、怒ってる?」

「はい……しかし……その怒りには……別の感情が……隠されている……強い……秘密の感情……」

「秘密、ですか!」


ルナの言葉は、まるでどこか遠い世界から聞こえてくるかのようだ。その声を聞いたセラは、目を輝かせた。


「隠された感情……!きっと新しい魔装具の材料になります!」

「感情を視覚化する魔装具です!」

「おお、それは面白い!」

「感情ですか。とりあえず、解体してみますか。どんな構造をしているのか……」

「えっ、解体!?」


エルミナは無表情で、セラの発言に続き、感情の「解体」という恐ろしい言葉を口にした。


フィーネは、頭を抱えて唸った。この個性豊かなポンコツヒロインたちをまとめるのは、至難の業だ。彼女の胃は、すでに警鐘を鳴らし始めていた。


「皆さん、ちゃんと聞いてますかーっ!?」

「聞いてますよー」

「誰がですか!?」


フィーネの叫びは、虚しく錬金工房に響き渡るだけだった。




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4. 追っ手との遭遇

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王都郊外の森は、静寂に包まれていた。木漏れ日が地面にまだら模様を描き、鳥のさえずりが耳に心地よい。リリアは、相変わらず地図を逆さまに持ち、首をかしげながら先頭を歩いていた。


「この道を行けば、アークライト領の隠し抜け道に……あれ?この紋章、うちの騎士団じゃない!?」

「なんだあれ?」

「なぜこんなところに……!?」


リリアが地図を凝視しながら、ふと顔を上げた。その視線の先には、森の奥から現れた、見慣れた紋章の騎士団員たちが剣を構えている。彼らは森の木陰に身を潜めていたようだが、アキナの直感が、ルナの感知が、あるいはリリアの方向音痴が引き寄せたのか、偶然にも遭遇してしまったのだ。


「見つけたぞ、リリアーナ様! 大人しく我らと共に戻っていただく!」

「抵抗すれば、強制執行も辞さない!」

「なっ……!」


騎士団員Aが、剣の切っ先を突きつけながら言い放った。その声には、冷徹な響きが伴っている。


「まさか、リリアを捕まえに来たのか!

 卑怯な手使いやがって! 正義の剣が許さん!」

「アキナちゃん! 待って!」

「待てません!」


アキナは、怒りに燃える瞳で剣を構えた。彼女の真っ直ぐな正義感が、目の前の状況に激しく反発していた。


「くっ! まずいです! まさかこんなところにまで追っ手が!」

「皆さん、作戦は変更です!

 あくまで交渉材料集め……決して武力行使は避けてください! 

 特にエルミナちゃん!」

「わ、分かってます!」


フィーネは顔色を変え、慌てて指示を出す。彼女の脳裏には、損害賠償の文字がチラついていた。


ルナは騎士団員たちを見て、顔色をさらに悪くした。全身を震わせながら、小声で呟く。


「データが……感情が……彼らの……記憶が……強い……隠された秘密が……」

「秘密……?」

「はい……」


森の空気が、一瞬にして凍りついたように感じられた。



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