第36話 海賊との宝探し -3
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9. 無自覚な連携、海賊壊滅
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セラの奇妙な魔力操作、エルミナの破壊魔法、アキナの猪突猛進、リリアの方向音痴、ルナのフリーズ寸前の情報、アリスの混乱の歌……これら全てが複雑に絡み合い、海賊船は完全にカオスと化した。
「……え?船が……沈んでる……?」
「な、なんだって!?」
フィーネは、その光景に呆然と立ち尽くした。イリスが驚きを隠せない顔で眼鏡をくいっと上げた。
「信じられないわ……セラの魔力操作による浮遊効果と、エルミナの破壊魔法、そしてアキナの暴走が、偶然にも船の構造を限界まで歪ませてしまった……」
「ありえないわ……!」
「これって、もしかして……」
「ええ。そして、アリスの歌声による海賊たちの戦意喪失が、彼らの抵抗を完全に無力化したわ。カオス理論における予測不能な収束の典型例ね」
イリスの言葉に、セラは目を輝かせ、船の沈没を見つめる。
「やりました!船が分解できます!これで研究できます!」
「(食い気味に、セラの手を掴み)だから分解はダメですーっ!これは売るんです!売るんですよ!」
フィーネが必死にセラを止めようとする。アキナは、周囲を見回しながら首をかしげた。
「よっしゃー!やったな、みんな!海賊を倒せたぜ!……って、宝はどこだ?」
「宝はまだだよ、アキナ」
アリスは呑気にアキナに答えた。海賊たちは、混乱の中で次々と海に落ちていく。
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10. 宝は想像とは全く違うものだった
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海賊船が沈没し、海賊たちが壊滅したことで、フィーネは宝の回収に向かった。海賊船のマストの頂上にあったという「伝説の宝」を手に取り、その輝きを見つめる。
「これが……伝説の宝……!さあ、どんなすごい機能が……!これなら高値で売れる……!」
フィーネは目を輝かせながら宝を手に取る。だが、イリスの解析結果は彼女の想像を大きく裏切ることになる。
「解析完了。この宝は、特定の魔力反応を持つ者の感情を増幅させる効果があるわね」
「用途は!?」
イリスの淡々とした言葉に、フィーネはごくりと唾を飲み込んだ。他のメンバーは、イリスの次の言葉を興味津々で待っている。
「ただの、感情増幅器ね。それ以上でも以下でもない」
「……え?」
フィーネの顔から血の気が引いていく。呆然と立ち尽くすフィーネを他所に、他のメンバーはそれぞれの反応を見せる。
「感情増幅器……すごいね!これでみんなのやる気を上げられるぞ!」
「あはは、アキナは単純だな」
「ええ、まさに理想的な精神操作装置です。研究のしがいがありますね!」
イリスが冷静に解説し、アキナが目を輝かせ、アリスが笑い、セラは宝を興味深そうに眺めている。
「はあああ!?感情増幅器!?こんなもの、どこで売ればいいんですか!私の計画がーっ!」
「ただの感情増幅器をこんな大金で買う人なんていませんよ!私の利益がーっ!」
フィーネは絶叫した。その横で、セラは宝を分解しようと動き出す。
「感情増幅器……でも、こんなに美しい魔力生成器は見たことがありません!研究のしがいがあります!イリス様、分解しましょう!」
「だから分解はダメーっ!売るんです!売るんですよ!」
「だーめー!」
フィーネはセラを必死に引き止める。リリアは腕を組み、呆れたようにフィーネを見ている。
「全く、こんなものに大金使って騒ぐなんて」
フィーネだけが絶望の淵に沈む中、他のメンバーはそれぞれに宝の「可能性」を見出し、どこか楽しげな空気を漂わせていた。
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11. 騒動の収束と新たなコネ
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海賊が壊滅し、港の安全が確保されたことで、フィーネは港の責任者から感謝の言葉を述べられた。
「フィーネ様、そして皆さま。この度は、海賊を壊滅させてくださり、誠に感謝いたします」
「おかげで、海の交易路の安全が確保されました。これで、港の経済も活性化することでしょう」
「滅相もございません!これもギルドの、いえ、わたくしの手腕でございます!」
フィーネは、内心で「大赤字なのに!」と叫びながらも、誇らしげに胸を張る。港の責任者は、にこやかに微笑んだ。
「つきましては、ささやかではございますが、報奨金をお渡しいたします」
「報奨金!?」
フィーネの目が輝いた。しかし、その報奨金は、海賊船の損害賠償と、港の修繕費で、あっという間に消え去った。
「まさか……報奨金が、損害賠償で消えるなんて……」
「私の利益がーっ!」
フィーネは頭を抱え、その場にへたり込んだ。しかし、イリスは冷静に分析する。
「ふむ。海賊を壊滅させ、海の交易路の安全を確保したことで、ギルドの評価は格段に上がったわ。これは、金銭では測れない価値があるわね」
「イリス様、データどころじゃないです!」
アリスは、そんなフィーネの様子を見て、リュートをかき鳴らし、高らかに歌い出す。
「〜♪海賊は壊滅し〜、港の安全は確保され〜、ポンコツだけど最強の絆で〜、世界を救う物語は続く〜♪」
フィーネは、その歌声を聞きながら、再び胃を押さえるしかなかった。
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12. ギルドでの収支報告とエルザの腹黒い笑み
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冒険者ギルドの受付カウンター。フィーネは、頭を抱えながら、今回の宝探しの収支報告書をエルザに提出していた。
「エルザさん!信じられますか!?伝説の宝が、ただの感情増幅器でした!」
「まさかの大赤字ですよ!私の苦労が報われません!」
フィーネは机に突っ伏し、半泣きで訴える。エルザは報告書をちらりと見て、にこやかに微笑んだ。
「ふふふ……でも、海賊を壊滅させ、海の交易路の安全を確保したことで、あなたたちの名声は確実に上がりましたわ」
「えっ!?」
「目に見える利益だけが全てではないわ、フィーネ。長期的な視点で見れば……大成功ですわよ」
エルザの言葉に、フィーネは顔を上げて食い下がった。
「名声!?こんな大赤字なのに名声ですかーっ!」
「ええ。あなたたちの名は、今や王都中に響き渡っていますもの。金銭では測れない価値ですわ」
「そんな抽象的なもので、私の胃の痛みが治るんですかーっ!?」
ギルドの奥からは、アリスの歌声が響いてくる。
「〜♪伝説の宝はただの増幅器〜、それでも海賊は壊滅し〜、ポンコツだけど最強の絆で〜、世界を救う物語は続く〜♪」
アリスは、今回の冒険をすでに伝説として美化し、高らかに歌い上げていた。フィーネは、その歌声を聞きながら、再び机に突っ伏すしかなかった。
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