第27話 魔法学院での特別講義 -2
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3. 講義開始とイリスの暴走
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翌週、ついにイリスの特別講義の日となった。
図書館の魔女と呼ばれる大賢者の特別講義ということで、王立魔法学院の講義室は、多くの生徒たちで埋め尽くされていた。イリスは教壇に立ち、眼鏡をくいっと上げ、知的な光を放つ瞳で生徒たちを見渡す。フィーネは、完璧な計画を胸に、講義の開始を告げる。
「それでは、イリス・ヴィクトリア様による特別講義を開始いたします!皆さま、静粛に!」
「ふむ。諸君。本日の講義は、世界の真理、そして魔法の根源について、わたくしの研究成果を基に解説していくわ」
「おお……!」
生徒たちがざわめく。イリスは、そんな生徒たちの反応に満足げに頷くと、講義を始めた。しかし、その内容は、生徒たちの想像をはるかに超えるものだった。
「まず、先日わたくしたちが経験した『神獣討伐』の事例を挙げましょう。あの時、アキナの猪突猛進、エルミナの広範囲破壊、セラの魔道具暴走、リリアの方向音痴、ルナの情報過多、そしてアリスの歌による魔力攪乱が、偶然にも神獣の弱点を突き、完璧な討伐へと繋がったわ」
「えっ……?」
「な、なんだって!?」
生徒たちが困惑の声を上げる。フィーネは、イリスの言葉に顔を青ざめた。
「イリス様!そんなこと話さないでくださいーっ!講義の内容が違います!」
「静かに、フィーネ。これは、『カオス理論』における予測不能な収束の典型例よ。つまり、不完全な個々の行動が、全体として完璧な結果を生み出すという、新たな法則の発見なの」
「カオス理論……?」
イリスは、生徒たちの困惑を他所に、得意げに解説を続ける。その言葉は、まるで学術論文を読み上げているかのようだ。
「さらに、先日行われた『料理対決』の事例も挙げましょう。あの時、セラが魔装具を暴走させ、エルミナが食材を破壊し、アキナが危険なモンスターを狩り、ルナがフリーズし、アリスが歌で会場を混乱させたわ」
「えええ!?」
「それが、まさかの『前衛芸術料理』として優勝するとは……」
「これは、既存の味覚の概念を破壊し、新たな味覚の可能性を提示した、まさに革命的事件よ」
イリスの言葉に、生徒たちは呆然とする。フィーネは、すでに胃がキリキリと痛み始めていた。
「イリス様!もうやめてくださいーっ!私の胃が……!」
フィーネの悲鳴が、講義室に響き渡る。だが、イリスの暴走は、誰にも止められない。
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4. エルミナの「とりあえずやってみる」実演
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イリスの講義がカオスと化す中、エルミナが無表情で教壇に上がった。イリスの抽象的な概念を、具体的な実演で示そうというのだ。
「ふむ。イリス様の仰る『カオス理論における予測不能な収束』について、わたくしが実演してみせましょう」
「エルミナちゃん!?」
エルミナは、そう言うと、講義室の壁に向かって、広範囲破壊魔法を放った。轟音と共に壁が崩れ落ち、土煙が舞い上がる。生徒たちは悲鳴を上げ、パニックになる。
「きゃあああ!何事だ!?」
「壁が!壁が崩れたぞ!」
「エルミナちゃん!何してるんですかーっ!講義室がーっ!弁償代がーっ!」
フィーネが絶叫するが、エルミナは全く気にしていない。
「これは、不完全な個々の行動が、全体として完璧な結果を生み出すという、新たな法則の発見を実演したものです。効率的な破壊ですね」
「効率的じゃないです!」
イリスは、そんなエルミナの実演に、目を輝かせている。
「素晴らしいわ、エルミナ!まさに、私の理論を具現化したものね!」
「イリス様まで!何言ってるんですか!」
フィーネは、もはや絶望の顔でその場にへたり込んだ。講義室は、一瞬にして瓦礫の山と化していた。
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5. ルナの記憶読み取り実演とフリーズ寸前
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エルミナの破壊的な実演で講義室が混乱に陥る中、イリスはルナに記憶読み取りの実演を促した。
「ルナ。君のサイコメトリー能力は、まさに『情報の収束』を体現するものだわ。生徒たちに、その可能性を示してちょうだい」
「ひっ……わ、分かりました……」
ルナは緊張しながら、生徒の一人にそっと触れた。その瞬間、ルナの顔が青ざめ、全身を震わせ始める。生徒たちの膨大な情報が、一気にルナの脳に流れ込んできたのだ。
「ひっ……たくさんの……情報……感情……記憶……情報過多……!だ、だめです……フリーズ……しそう……!」
「ルナさん!?」
ルナは、大量の情報に脳が処理しきれなくなり、その場にうずくまってしまう。生徒たちは、ルナの異様な様子に困惑する。
「な、なんだあれ……?」
「あの娘、大丈夫なのか……?」
フィーネは、ルナの様子を見て、頭を抱えた。
「もう、本当に見てられないわ。ほら、早く頭を冷やしなさい!あんたが機能停止したら、この状況をどうするのよ!」
リリアがツンデレながらもルナを叱咤激励する。その言葉に、ルナはかすかに反応する。
「……先生……ごめんなさい……」
「無理しないでください、ルナさん」
イリスはルナの様子を見て、冷静に分析する。
「ふむ。生徒たちの情報量が、ルナの処理能力を超えたようね。これは、情報過多による脳機能の停止、興味深いデータだわ」
「イリス様!データどころじゃないです!」
フィーネの悲鳴が、講義室に響き渡る。講義は、もはや完全に破綻していた。
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