第22話 料理対決と幻の調味料 -1
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1. 料理対決へのエントリーと幻の調味料
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王宮の一室。ルチアナ姫は、にこやかに七人のヒロインたちを迎え入れた。今回の依頼は、王都で開催される料理大会への参加だという。
「皆さま、この度、王都料理大会への出場をお願いしたく、参りましたの」
「料理大会、ですか?」
「はい。そして、優勝賞品は……フィーネ様が喉から手が出るほど欲しがると伺っております、『幻の調味料』ですわ」
「幻の調味料っ!?」
ルチアナ姫の言葉に、フィーネの目が輝いた。その名は、錬金術師であるフィーネにとって、まさに伝説の秘宝。報酬計算機が、脳内で爆音を上げて稼働し始める。
「姫様、喜んでお引き受けいたします!このフィーネ、必ずや優勝してみせます!」
「ふふ、頼もしいですわね。そして、イリス様」
「はい、姫様」
「わたくし、イリス様の『伝説の料理』の再現に、ぜひとも挑戦していただきたく思いますの」
「伝説の料理……?」
「ええ。古文書に記された、失われた至高の味。イリス様の知識をもってすれば、きっと再現できるはずですわ」
「ふむ……伝説の料理、ですか。私の知的好奇心をくすぐるわね」
「イリス様、ありがとうございます!」
イリスはルチアナ姫のおだてに乗りやすい性格を発揮し、眼鏡をくいっと上げ、知的な興奮を隠せない様子で頷いた。フィーネは、イリスが乗ってくれたことに安堵の息を漏らす。
「幻の調味料か!どんな味がするんだろうな!」
「アキナちゃん、それは秘密です!」
「へへん、料理対決か!あたしの歌で、会場を盛り上げてやろうか?」
「アリスさん、歌はまだです!」
アキナが目を輝かせ、アリスがリュートをかき鳴らす。ルナは心配そうに、料理大会の会場図を眺めていた。
「ひっ……たくさんの……食材が……情報過多……」
「ルナさん、大丈夫ですか!?」
「大丈夫です……」
リリアは腕を組み、呆れたように呟く。
「まったく、また面倒なことに巻き込まれるわね。料理なんて、私には無縁だわ」
「リリア様、そんなこと言わないでください」
セラは、料理大会のルールブックを熱心に読み込んでいる。
「この魔装具を使えば、どんな食材も最高の状態にできますね!実験のしがいがあります!」
「セラちゃん、暴走させないでくださいね!」
フィーネの胃は、すでにキリキリと痛み始めていた。しかし、幻の調味料という獲物を前に、その痛みさえも甘美な刺激に変わるのだった。
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2. 作戦会議とフィーネの完璧な計画
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フィーネの錬金工房は、再びホワイトボードが占拠された。今度は料理大会の審査基準と、幻の調味料の予想図、そして「完璧な料理計画」と書かれた文字が乱雑に貼り付けられている。
フィーネは、マーカーを手に、熱心に料理計画を説明していた。
「というわけで、今回の料理対決は、幻の調味料を獲得し、王家とのパイプをさらに太くすることが最重要目標です!」
「はいはーい!」
「報酬は破格ですし、これを機に王家御用達の冒険者パーティになれば、莫大な利益が……ぐふふ」
「おお、いいじゃん!あたしも乗ったぜ!
ついでに審査員をあたしの歌で魅了して、裏口入学ならぬ裏口優勝も狙っちゃうか!へへん!」
「アリスさん!?」
「フィーネ、顔が怖いですよ」
ルナが小声で指摘するが、フィーネはアリスの悪ノリに一瞬たじろぎつつも、その「可能性」に目を輝かせた。
「いいですか、フィーネ」
「はい!」
「前回、ルチアナ姫様との個人的なパイプができましたわね。
あれは、あなたたちの『ポンコツ』なやり方が生んだ、まさに奇跡」
「は、はい……」
「今回はそのコネをさらに強化する、絶好のチャンスですわ!絶対に勝ちなさい!
ギルドの、いえ、わたくしのメンツにかかっていますからね!」
「ひっ……!エルザさん、鼻息が荒すぎますって!」
フィーネはエルザの気迫に押され、思わず後ずさった。エルザの完璧な笑顔の裏に、獲物を狙う猛獣のような鋭い眼光が宿っている。
「料理ってことは、敵はいないのか?」
「悪い奴らがいるなら、正義の剣でぶった斬ってやるぜ!」
「今回は、ぶった斬っちゃダメです、アキナちゃん!あくまで料理が最優先!」
フィーネは慌ててアキナを止める。エルミナは無表情で料理計画図を見つめている。
「食材の破壊は禁止ですね。残念です。
しかし、効率的な下ごしらえは許可されるのでしょうか?」
「許可されません!絶対に!」
フィーネはエルミナの言葉に、思わず叫び返した。イリスは、ルナから渡された幻の調味料に関する古文書を読み込んでいる。
「ふむ。幻の調味料は、特定の魔力反応を持つ食材と組み合わせることで、真価を発揮するようね。姫の行動原理を分析すれば、料理の手順もより効率的になるはずよ」
「ルナ、何か情報ありますか?」
「えっと……調味料は……とても……繊細で……予測不能な……」
ルナは緊張しながら、断片的な情報を口にする。フィーネは、すでに頭を抱えていた。
「わ、分かってます!もう!
皆さん、お願いしますから、今回はちゃんと計画通りに動いてくださいね!」
フィーネの叫びは、虚しく錬金工房に響き渡るだけだった。
それがどれだけ無駄な言葉かということを、彼女は痛すぎるほどわかってはいた。
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