第11話 幻の魔道具とダンジョン探索 -2
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3. ダンジョン突入とセラの暴走
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薄暗いダンジョンの入り口。足を踏み入れた途端、ひやりとした空気が肌を包み込んだ。フィーネは、緊張した面持ちで指示を出す。
「よし、ダンジョン突入!
皆さん、くれぐれも作戦通りに……無傷でお願いしますよ!」
「はーい!」
「特にセラちゃん、勝手に魔装具をいじらないでくださいね!」
しかし、フィーネの言葉は、セラには届いていないようだった。彼女は目を輝かせ、手にした魔装具を興奮気味に起動させる。ダンジョン内の魔力が、セラの魔装具に吸い込まれていくのが感じられた。
「わぁ!このダンジョン、魔装具の気配がします!素晴らしいです!」
「これで、ダンジョンを隅々まで探索しましょう!『自動魔力収集器』起動!」
セラはフィーネの言葉を遮るように、瞳を輝かせながら叫んだ。奇妙な形をした魔装具を頭につけ、ダンジョン内の魔力を無差別に吸い込み始める。
「セラちゃん!それは何ですか!?
勝手に魔力を吸い上げないでくださいーっ!ギミックが暴走しちゃう!」
フィーネが悲鳴を上げた。その不安を裏付けるかのように、ダンジョンが微かに震え始める。
「ふむ、この魔装具、ダンジョン全体の魔力を均一化しようとしているようね。
これはデータ採取には最適だわ。しかし、制御が不安定だ……」
「そうなんですか!?」
イリスはセラの魔装具に興味津々で分析を始めた。ルナは心配そうにセラの様子を見つめる。
「セラ様……危険です……記憶では……この魔装具は……暴走しやすい……ダンジョン全体の魔力バランスが……崩れて……」
「えっ、本当に!?」
ルナの言葉に、フィーネの顔がさらに青ざめる。だが、セラの暴走は止まらない。
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4. エルミナの「とりあえず」破壊
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セラの暴走した魔装具が、ダンジョン内のあちこちのギミックを無差別に作動させてしまう。
フィーネは
「まずいです!セラちゃんの魔装具がギミックを全部作動させちゃってる!
このままじゃ罠だらけに…!」
と叫んだ。
その時、エルミナが無表情で口を開いた。作動したギミックの周囲にいる魔物を見て、微かに口角を上げる。
「邪魔ですね。とりあえず……破壊します」
「エルミナちゃん!?」
強力な破壊魔法を魔物と、その周囲の壁に放ち、道を切り開くエルミナ。轟音と共に土塊が舞い上がり、ダンジョンが揺れる。
「エルミナちゃん!それじゃあダンジョンが崩れちゃうーっ!
魔道具の回収に支障が出るーっ!
お願いだから、壊さないで!」
フィーネが悲鳴に近い声で懇願する。だが、アキナはエルミナの魔法で開いた壁を見て、目を輝かせた。
「お!道ができたぜ!さすがエルミナ、話が早いな!」
「よし、突っ込むぞ!」
「アキナちゃんまでーっ!作戦は無視ですかーっ!私の計画がーっ!」
フィーネの絶叫がダンジョンに響き渡る。彼女の計画は、もはや見る影もなかった。
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5. アキナの猪突猛進とルナの心配
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アキナは新しい道に突進するが、その先には別のギミックが待ち構えていた。心配性のルナがそれを予知し、顔色を悪くする。全身を震わせながら、小声で呟く。
「この先に『生命の炉』があるはずだ!俺の勘がそう言ってるぜ!正義の魂が燃えるぜ!」
「だ、だめです……その先には……情報が……多すぎます……!」
「ルナさん!?」
「大きな……罠が……!そして……炉から……不穏な……思念が……!」
ルナはフリーズ寸前で、その場にうずくまる。アキナはルナの警告にも気づかず、勢いよく駆け出す。
「ったく、心配性にもほどがあるわね。ほら、しっかりしなさい!」
「リリア!」
「あんたがフリーズしたら、このパーティ全体が動けなくなるのよ!」
リリアはルナの様子に気づき、舌打ちをしながらも、彼女のフリーズを軽減する。ルナは辛うじて、罠の具体的な情報を絞り出した。
「……巨大な……押し潰す……罠……罠が……」
「そんなもの、私の双剣でどうにでもなるわよ!アキナ、止まりなさい!」
「えっ!?」
リリアはアキナを止めようと、剣を構えて駆け出した。
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6. リリアの方向音痴と偶然の回避
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リリアはアキナを止めようと走るが、方向音痴のせいで別の方向へ進んでしまう。だが、それが皮肉にも、アキナを罠から遠ざける結果となった。フィーネとイリスは、その偶然に気づき、驚きを隠せない。
「アキナ!そっちじゃないわよ!回り道しないと危ないでしょうが!
こっちよ、こっち!」
「リリア、どこ行くんだよ!炉はこっちだろ!?俺の勘は間違ってないぜ!」
アキナは困惑しながらも、リリアの声に釣られて進路を変えてしまう。
「リリア、そっちは行き止まりですよーっ!
って、あれ?
結果的にアキナちゃんが罠を回避してる……!?」
フィーネは呆然と呟いた。イリスは眼鏡をくいっと上げ、冷静に分析する。
「ふむ。予測不能な変数によって、危険を回避したか。
これは興味深いデータね。
リリアの方向音痴が、まさかこんな形で機能するとは……」
「リリアのポンコツが役に立った、ってことか!?」
「そういうことになるわね」
イリスの言葉に、フィーネはさらに頭を抱えるのだった。彼女たちの冒険は、いつも計算外の「ポンコツ」によって、思わぬ方向へと転がっていく。
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