第8話 家出令嬢と最強の友情 -3
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5. アキナ、無鉄砲に突撃
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フィーネの制止の声も虚しく、アキナは騎士団員に猛然と突撃した。その動きは素早く、剣の軌跡が光となって森に閃く。
「リリアは渡さない!俺が正義の剣で守ってやる!」
「アキナちゃん!」
「悪い奴らは俺がぶった斬る!」
「な、なんだこの速さは!?見えないぞ!避けろ!」
騎士団員Bが叫ぶが、アキナの勢いは止まらない。森の木々が、アキナの動きに合わせてざわめいている。
「ちょっ、アキナちゃん!まだですーっ!交渉が、交渉がーっ!」
「これじゃあ交渉材料どころか、損害賠償になっちゃう!」
「アキナ!落ち着きなさい!私が自分で何とかするわ!」
「あなたは巻き込まれる必要はない!」
「リリア……!」
リリアが慌てて叫んだ。彼女はアキナをこれ以上危険な目に遭わせたくない一心だったが、アキナの正義感は誰にも止められない。
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6. エルミナの破壊とセラの魔道具
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アキナの突撃で森が荒れる中、エルミナが無表情で広範囲の破壊魔法を放った。轟音と共に土塊が舞い上がり、騎士団員の陣形は一瞬で崩れ去る。
「邪魔ですね。とりあえず……」
「エルミナちゃん!?」
エルミナは、アキナと騎士団員の戦いを見て、微かに口角を上げた。その瞳には、純粋な破壊への興味が宿っている。彼女が召喚した巨大な岩が、騎士団員の退路を塞ぐように落下した。
「ぐあああ!岩が降ってきたぞ!退避ーっ!」
騎士団員Cが悲鳴を上げ、四散する。その混乱に乗じて、セラが怪しげな魔装具を構えた。
「素敵です!私もこの魔装具で、みんなを足止めできます!」
「おお!」
「『聖なる粘液』起動!」
セラは目を輝かせながら、怪しげな魔装具からねばつく液体を生成し、騎士団員に浴びせた。騎士団員たちは足を取られ、互いにぶつかり合う。その光景は、まるでスライムまみれのダンスパーティのようだった。
「エルミナちゃん、セラちゃん!それはやりすぎですよーっ!
交渉の余地がなくなっちゃうーっ!」
「そ、そんな!」
「損害賠償がーっ!」
フィーネの絶叫が森に木霊した。彼女の頭の中では、すでに莫大な修繕費と賠償金の数字が、踊り狂っている。だが、ヒロインたちの暴走は、誰にも止められない。彼女たちの「ポンコツ」な特性は、皮肉にも最強の力を生み出していくのだった。
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7. イリスの分析とルナのフリーズ
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混乱する戦場で、イリスは冷静に事態を分析しようと試みていた。彼女の視線は、アキナの突撃、エルミナの広範囲破壊、そしてセラの魔道具の副作用による魔力の乱れを捉えていた。
「ふむ、この状況……アキナの突進、エルミナの広範囲破壊、セラの魔道具の副作用……これらの相互作用によって、敵の戦術は完全に崩壊しているわね。予想外のデータが取れそうよ」
「ほうほう!」
「特に、ルナの脳波に異常な活動が……」
イリスの横では、ルナが顔を青ざめ、全身を震わせながら、小声で呟いていた。多くの情報が流れ込み、コミュ障と心配性がマックスになり、フリーズ寸前になっているのだ。彼女はリリアの父の感情の波を強く感じ取っていた。
「だ、だめです……!大量の情報……混乱……恐怖……
そして……隠された感情が……!」
「ルナさん!?」
「騎士団長から……強い……秘密の感情が……!」
ルナの悲痛な声に、フィーネが焦った声を上げる。イリスはルナの様子に気づき、興味深そうに観察している。
「ったく、心配性にもほどがあるわね。ほら、しっかりしなさい!」
「リリア!」
「あんたがフリーズしたら、私が困るでしょう!」
リリアはルナの様子に気づき、舌打ちをした。ツンデレな彼女だが、仲間を心配する気持ちは本物だ。
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8. リリアのツンデレと能力発揮、ルナの感知
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リリアはルナの肩を叩いた。
その瞬間、彼女の魔力無効化能力が発動し、ルナの精神的な負荷を軽減する。ルナの体が、わずかに落ち着いた。
「ほら、バカなこと考えてないで。私の能力で少しは楽になるはずよ」
「あ……り……がとう……リリアさん……」
「まったく、手のかかる妹ね」
ルナはハッと息を吐き、少し落ち着いて、かすかに言葉を絞り出した。彼女は辛うじて、リリアの父が抱える「ある秘密」の存在を感知する。
具体的な内容はまだ不明だが、その「秘密」がリリア父の行動原理に深く関わっていることを示唆していた。
「今……騎士団長から……強い……隠蔽の感情が……秘密……がある……それが……彼の……行動原理……」
「秘密だと!?よし、そこを攻めるぞ、リリア!」
「えっ!?」
「悪い奴らの隠し事なんて、正義の剣で暴いてやる!リリア、お前も手伝え!」
アキナはルナの言葉を聞き逃さず、目を輝かせた。その言葉に、リリアは慌てて反論する。
「なっ……!別にあなたのためじゃないんだからね!勝手に突っ走らないでよ!」
「そうか?でも、秘密なんだろ?」
「……でも、秘密、か……」
リリアはプイとそっぽを向いたが、その表情にはかすかな動揺が見て取れた。
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