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絶望者たちのポータル

戦争への日々が迫りつつあった。

全ての王国の魔導師たちは、闇への報復のために準備を整えていた。その中には、ロザリア魔法学園も含まれている。


「くそっ! あの仮面の忍者め、絶対に許さない!! なんだこの有様は!」

「私、片付けなんかしないからね。」


本に溢れた部屋。壊れた窓からは、仮面の男が逃げた跡がうかがえる。渋々散らかった部屋を前にする二人の少女のもとへ──ドンッ、と扉が蹴破られた。


「まだ片付けていないのか!? ……待て、お前たちは掃除係じゃないな。ここで何をしている!」


「こ、コフカ隊長!! あの……ビ、ビニェドスが本を少し……ははは。」


彼女たちは学園の一年A組の生徒。

本をこよなく愛し、丸眼鏡に短い茶髪が特徴の少女──カーラ。

そして、すぐ癇癪を起こし、授業をサボりがちな赤髪碧眼の少女──エリカ。


「ここは立ち入り禁止区域だ! もう一度だけ聞こう。」


エリカはカーラに視線を送り、申し訳なさそうに肩をすくめた。


「……わかったわよ。毎週一冊だけ本を借りに来てるの。」

「この部屋は閉鎖中だ。……だが、面倒だ。今日だけは一冊だけ許可してやる。ただし気をつけろ、妙な奴らが現れるかもしれんからな。」

「は、はいっ!!」


──かくして、コフカ隊長には新たな任務が課せられた。

生徒たちを戦士へと鍛え上げ、迫りくる〈ドラーケン〉との戦に備えさせるのだ。



二日後。冒険者一行はダルタルピ王国へと辿り着いた。

そこは凍てつく地でありながら、人々は薄着で日常を過ごしていた。すでに寒さに慣れ切っているのだ。


街には様々な種族が混在し、トーマスとエリックはその光景に思わず目を奪われる。


「俺とエミリーで門の商人を探す。お前たちは港で休める場所を見つけてくれ。」


二人は従うが──ほどなくして、フードを被った女に声をかけられる。

報酬は千ビル。彼女曰く、異世界換算で二百レアルに相当するらしい。


「トーマス、俺たちは宿を探さなきゃ──」

「何言ってんだ! 千ビルだぞ!? 俺たちなら誰にだって勝てるさ!」


結局、エリックは折れ、二人は怪しい地下室へと案内される。そこは闘技場──賭け試合の熱気が渦巻く場所だった。



一方その頃、デュークとエミリーは転移門の管理者ダリウスと話していた。

だが、門は二ヶ月前に使用され、未だ修復中。よほどの緊急事態でなければ、再利用は不可能だという。


「……頼む、今夜だけでも通してくれ。」


切迫するデュークの願いを、ダリウスは険しい表情で受け止める。


その時だった。

ダルタルピの空を覆う氷雲が、不気味に黒ずみはじめる。

濃霧が王宮の上空に集まり、一筋の光が放たれた。


「こ、これは……災厄か!?」

「神々の怒りだというのか!」


瞬間、雷光が宮殿を直撃し、街に混乱が広がる。


「王を狙ったぞ!! 王を護れ!!」


騎士たちが盾を掲げ、必死に主君を庇う。だが──外門はすでに〈サッバーズ〉と呼ばれる闇の軍勢に包囲されていた。



「……ちくしょう、あと少しで勝てたのに。」

闘技場から戻ったトーマスは顔を腫らしていた。


「避けられたはずだ。でも今はそれどころじゃない! 何かが起きてる。」


混乱の中、エミリーは必死に二人を探し──そして見つけた。


「ガ、ガイズ!!」

「エミリー!? 何が起きてるんだ!?」

「王国が攻撃されてる! 今すぐデューク様の元へ!」


霧に覆われた街を駆け抜け、若き冒険者たちは──運命に導かれるように、学園への旅路を急いだ。


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