解き放たれた暗殺者
プロローグ
闇は追いかける。光を見ない者には、生き続ける希望はない。愚かなる者よ、わずかな偽りや嘘、そして人間の最も醜い面でしか生きられぬ者たちよ。
どうしてこれほど多くの争いの中で共存できるのだろう。戦争、疫病——
「私の望みは、永遠に生きることだ!」
「未来を見通し、すべてを支配する。すべては私のものになる!」
人類の希望は、最も強き者たちから生まれる。行動力と野心を持つ者たちこそがその希望だ。強き肉体は、強き精神をもたらす。
「メッタ」というエネルギーは、まさにこれに最適だ。魂の奥底から湧き出し、感情を超えて溢れ出る力。モッソンの街の数多の暗殺者たちも、この未知なるエネルギーに影響されているに違いない。
——私は転生しなければならない!体が必要だ!ここは新たな神が生まれるにふさわしい世界だ!!
モッソンの街は、暗殺や自殺の件数が最も多い都市として知られている。人々は深夜になると、最も野性的な姿を表すのだ。
1944年10月31日——この地に生まれた最強で残酷な魔術師、ジェイコブ・フラモンが禁断の魔法を使った罪で処刑される日。公開処刑の絞首台に立つ、長い黒髪に紅の瞳を持つ男は、空を見上げて大きく息をつく。
「まだ終わってはいない……私はお前たち全員を転生させる…… ごほっ、ごほっ……愚かな人間よ。強者の時代が訪れるということを、理解できないのか!!」
魔術師の最後の言葉は、周囲にいた人々に衝撃を与えた。彼が再び戻ってくるのではないかという恐怖——
それでも上位の魔術師たちは、彼の死を宣告した。しかし、未来に何が待ち受けているのか、彼らは知る由もなかった。
第1章:放たれた暗殺者
2022年、雨の降る日。モッソンの街に静かに雨粒が落ちる中、午前8時55分、一人の男が命を落とした。地元の販売員だったその男――周囲の人々は皆、彼に何が起きたのか理解できずにいた。
男の頭には穴が開き、両目も失われていた。恐ろしい光景だった。販売員の娘は、何が起きたのか分からず、絶望の涙を流す。長い間、こうした事件はなかったモッソンの街に、再び殺人が蘇ったのだ。
「彼、何を間違えたの……?いい人に見えたのに……」
「もしかして、薬物に関わってたのか?」
人々はこの出来事に困惑していた。販売員の娘は警察に連れられ、打ちひしがれたまま現場を離れる。少女は、事件の夜に暗殺者を見たと信じていた。
その夜、モッソンの最も恐ろしい闇を歩く、背の高い短髪の金髪の人物がいた。警察に話した後、少女は少し落ち着きを取り戻す。
「すみません、通してください!」
そこに現れたのは、長い黒髪で、片目が黄色がかった若者。少女と同じくらいの年に見える。右手にはパンを持ち、どこかパン屋から来たようだった。
「落ち着け、君は亡くなった男性の知り合いか?」
「ロベルト……亡くなった彼は僕の友人だ。子どものころ、何度も面倒を見てもらった。今は彼の娘、タリアと同じクラスで勉強している。」
涙でいっぱいの少女は、若者に必死に呼びかける。若者は警官を無視し、彼女の元へ駆け寄り、強く抱きしめた。少女は少し落ち着きを取り戻す。
「落ち着け、タリア。僕がいる。君のお父さんがこんな最後を迎えるなんて、思ってもみなかった……」
若者は少女の涙を拭い、事件の夜に見たことをすべて話してもらう。しかし、なぜ暗殺者はロベルトを狙ったのか、理解できずにいた。若者は考え、タリアを数日自分の家に泊めて、心を落ち着けさせることを思いつく。
タリアはエリックの手を強く握りしめる。
「エリック、本当に迷惑じゃない?でも……あの男が戻ってくるかと思うと怖い……」
エリックは笑みを浮かべ、タリアの目をじっと見つめる。
「もちろんだよ。君は子どもの頃からの大切な友達だろ?忘れたのか、はは!あの人が君に危害を加えることは絶対にさせない。」
警察は現場から遺体を撤去した。時刻は10時12分、アゼヴェド家の家の中。雨はやや止みかけ、台所にはお茶の香りが漂う。心地よい冷気が部屋を満たしていた。少女は、事件の前には来週の試験勉強をしていたと語る。
だが時折、父親が「肉」の借金について話す声や、意味不明な言葉を口にするのを耳にしていた。こうしたことは昨年末から続いている。若者のエリックは思いに沈む――街にはまた奇妙な殺人事件が次々と起きているのを、自分自身も知っていたのだ。
テレビでは毎日のように、新たな殺人事件のニュースが流れていた。小さな街では異常な連続殺人――多くは奇妙な仮面をつけ、不可解な名前を持つ者たちだ。中でも有名なのは「パタリム」と呼ばれる組織で、未知のエネルギーを求めているという。
エリックは学校を休み、幼馴染の少女を手伝おうかと考える。二人はお互いを見つめ、温かく安心できる抱擁を交わした。ソファに座りながら、次の行動について話し合う。
20時31分、二人の女性が首を切断され、腹部には槍が刺さった状態で発見された。事件は通りかかった住人によって伝えられ、テレビでも報道され、モッソンの夜道には注意を促された。
闇の中、あるビルの上に奇妙な影――黒いマントをまとった男がいた。鋭い耳、重い吐息、弱き魂の嘆きを聞き、殺意を巡らせる。
「マッタのエネルギーを持つ者を見つけ、奴隷として従わせねば……」
月光の中、黒マントの男はさらなる犠牲者を求めて姿を消した。
一方、エリックはチュクス――ミルクで食べる甘い砂糖菓子を食べようと立ち上がる。しかし冷蔵庫を確認すると、今朝買い忘れたことに気づく。仕方なく、家の近くの店へ向かうことにする。
「タリア、今は寝てるか……急いで買って戻らなきゃ。チュクスを食べずには寝られない……」
モッソンの密集した街を歩きながら、エリックは警戒を怠らず、恐怖を悟られないよう全力で走る。深い呼吸、燃えるような視線――道は長く、深く感じられる。突然、奇妙な声が彼を呼んだ。
歩道の中央に、深い瞳を持つ少女が立っている。じっとエリックを見つめ、声をかける。エリックは身動きが取れず、まるでトランスにかかったかのようだ。少女は何度も呼び続ける。意識がぼんやりし、視界はかすみ、鼻血が出始める。世界は歪み始めた。
「何が……起きてる?う……うわ、俺……狂いそう……この少女は誰だ?なんだか……見覚えが……」
少女はさらに近づく。
「エリック、私についてきて。怖いことはしないから。」
エリックは腹に手を当て、何かが欠けていることに気づく。手を見下ろすと――
「血……血が……胸に穴が!?暗殺者に……捕まった……今日は運が悪いな!はは……」
エリックは、何が起きたのか分からぬまま倒れた。だが、彼は大量の血を失っていた。見上げると、あの黒いマントの男が――エリックは連続殺人鬼の新たな犠牲者となったのだ。
21時56分――胸に穴を開けられ、若者は絶命した。
全身は冷たく硬直していたが、それでも指先はわずかに動いていた。
序章
この世界には、闇がひそんでいる。光を見失った者には、希望など存在しない。人々は日々、嘘や偽り、弱さに溺れ、己の欲望に溺れて生きている。
だが、その闇の中でこそ、真の強者は生まれる。力を求め、野望を抱き、時に残酷に生きる者たちが、世界の行く末を左右するのだ。
今、静かなる街モッソンの夜に、新たな恐怖が忍び寄る。目に見えぬ力、魂を揺さぶる未知なるエネルギー、そして人間の本性――全てが交錯する時、誰もが自らの運命に抗うことはできない。
これは、弱者のための物語ではない。
力を求め、恐怖を超え、闇に立ち向かう者たちの物語である。