スキル選択はミスれない
どれくらいの月日がたっただろう。
筋トレだけでは無く、自己流の鍛錬を重ねた結果レベルは5になった。
現時点で前世では不可能だった動きも出来るようになった。
例えば垂直跳びで2メートル跳べたり、両壁を蹴って天井にタッチ出来たり。ただレベルが上がる毎に獲得出来る経験値は減衰しているようで、今では鍛錬を一日中しても経験値は1も入手出来なくなった。
片手で倒立腕立てジャンプをしながら、僕は次の段階に行くためにはどうすべきかと思案を重ねていた。
数週間後やっとレベル6に到達したところでなんとスキルポイント10を入手した。
ポイントは割り振れば新たなスキルを使用可能、所謂職業を選んで割り振るシステムのようだが、、、
今選べるのは
「戦士、魔法使い、僧侶、学者か、、、」
何より不便なのはどんなスキルを覚えるかは割り振るまで不明なところ。再分配も出来ないようだ。不親切設計のク◯ゲーだ。僕の大嫌いな仕様だ。
定石なら学者は論外だろうが、今の状況は違う。モンスターとのステータスに差があり過ぎる状況では通常スキルを覚えたところで全く通用しないだろう。
ならば、定番でないスキルを覚える可能性のある学者に賭けてみようと思う。例えば経験値取得ボーナスとか。これ以上この閉鎖空間で孤独に鍛錬するにも限界があるしね。
「頼む」
藁にも縋るように願いながら僕は学者スキルに1ポイントずつ振って行く。
5ポイント割振ったところで習得したのは
“各種図鑑解放”
10ポイント使い切ったところで
“知識の神の守護”
効果は、
“モンスター図鑑とユニークアイテム図鑑を埋めた数に応じてダメージボーナスを付与する(ただし例外モンスターあり)”
やっと一筋の光が見えたような気がした。
ステータスボーナス出なくてダメージボーナスか。
そのボーナスの付与率や計算方法はデータが少なすぎてまだまだ検証出来ないが、どんなモンスターにも必ずダメージを与えられる可能性がある。
その可能性が僕に希望を与えてくれた。
「与えたダメージに倍率でボーナス(仮に1%)が付与されるのなら、(0×1%=0)で意味がない。でも付与ボーナス(仮に1)が加算なら(0+1)でダメージ1を確定で与えられる」
「つまりあの地獄級の高レベルモンスターにダメージが入り経験値を得られる可能性がある」
逸る気持ちを抑えて解放された図鑑を確認してみる
「アイテム図鑑は、初期装備3点セットと素材不明のインゴットの4種類か、、、」
「モンスター図鑑は、ケイオスドラゴンのみの1種類、恐らく最初に僕が瞬殺されたあのドラゴン、つまり戦闘もしくは出会った段階で図鑑登録される」
「討伐しなくても登録自体される仕組みなのは助かった」
一瞬だったが僕の目に焼き付いたあの場所では少なくとも十種類以上のモンスターがいた。
「出会えるモンスターを片っ端から全て登録する」
「即ちそれは僕の死の回数に比例するのだろうけど」
今しばらく僕が戦わなければいけないのは死に伴う痛みと恐怖とそれに打ち勝つ為の自分自身といった事になるようだ。