04
立って歩ける程度に回復したのでそこらじゅうを歩き回っていいよと言われたので、歩いて回ることにした。
「というか歩きまわってもらったほうがリハビリになるからどんどん歩いて頂戴ね」
と言われたので院内を探索している。
おそらくここは病棟だろうが、棟内はすべて木造建築であり、長い廊下に無数の個室が並んでいて、それぞれ襖で仕切られている。
当然だが、廊下から中の様子は見えない。
見えないが、部屋の広さは僕のいた小部屋と同じぐらいだろう。
しかし、ここで疑問が浮かぶ。
いってはなんだが、ここすごい窮屈である。
四畳半の部屋の真ん中に布団。
僕は荷物がなかったからいいのだが(カーロ氏に聞いたがあの女の子が僕を発見した時周りにそれらしきものはなかったそうだ)、
全員この小部屋に押し込むのは無理があるんじゃないか、と思う。
まあ、別にほかの病棟は広いのかもしれないし、そもそも聞くのもめんどくさいので言わないが。
ともかく、僕はリハビリのために動いていかなければならない。
言い忘れたが、脳に異常をきたしているせいか
四肢を動かすのに多少の支障が出ている。
気を抜いて歩いていると、すぐこけそうになる。
聞いただけでは大したことなさそうに聞こえてしまうが、本当に恐ろしい。
いつ目の前が真っ暗になるかわからない。
最悪死ぬ危険性もある。
僕は常に死と隣り合わせに生きているような状況になった。
先生曰く、治療にかなり長い期間を要するらしい。
なんで僕はこんなことになったのだろうか。
これを思いだせたらいいんだけどなあ。
病棟を抜け、通路を通って本棟に向かう。
しかしこの本棟、かなり小さい。
専門の医者が大量にいるのかと思ったが、思っているよりも診療室が少ない。
これは後で聞いた話だが、実はここの医者はカーロ氏を含め数える程度しかいないらしい。
救急隊員などを除けば、職員のほとんどは看護師なのだそうだ。
病院内に看護服着た人やたら多いなと思ったが、そういうことか。
そうして院内を歩いていると、
「おい」
後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこには中年の男性がいた。
青い半纏をまとい、放浪者というような恰好をした男性。
その男は、僕にこう話しかけてきた。
「お前、なんでここにいるんだ?」