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荒れた大国  作者: CC
3/7

02

僕が寝ている部屋に入ってきたのは、着物を着た女性だった。


深緑と灰色の織り交じった髪を持つ、翡翠のような澄んだ目を持った女性。

紺色の衣服に薄緑の袴を着ていた。

柔和な顔つきをしており、見るとなんとなく安心する。


「お目覚めになりましたかー?」

彼女は襖を開けるや否や、そう言った。

「あ、あの」

僕がしゃべる間もなく、

「あ、起きてますね、よかったよかった」

立膝をつき、僕の体へと近づいた。

「大丈夫ですか?痛くないですか?」

「いやまあ、何とか...」

「それならよかった、安静にしててくださいね」

落ち着いたしゃべり方の人だ。

見た目からして看護師の方だろうか。

「診療所の前で血まみれで倒れていたから、一時期どうなることかと」

診療所?

「あの、ここは一体...?」


「ここは夢の都市テンイキの辺境にある、カーロ診療所です。」


テン...イキ...?

そうだ、思い出した。


夢の都市テンイキ。

すべての者たちの夢がかなえられる、世界一幸福な街。

という謳い文句を聞いたことがある。

が、どう考えても胡散臭い。

すべての人の願いが叶うなんて、そんなことがあるわけがない。

どうせ、一部の人たちが富を独占する、典型的な格差があるのだろうと高をくくっていた。

そして、ここには絶対に行かないようにしておこうと思っていたのだが...

はて、なんでこんなところにいるのだろうか。


まあ、それは後から考えることにしよう。

それよりも、いつまでも寝転がったままというのも情けない。

と、動こうとしたところ、

「あ、あまり動かないでくださいね。ちょっとでも傾けると大変なことになりますから」

止められてしまった。

「この、頭が重いのは...」

「金属製のヘルメットを着けてますからね。かなり重いと思いますから、自力で立てないと思いますよ」

「え、僕ってどんな風に倒れてたんですか」

「それはもう、すごかったですよ。頭からすごい血を流して、頭が変形してましたから」

僕そんな重症だったのか...というかよく死ななかったな

「多分頭蓋骨われてると思うので、ほんとに危ない状態だったんです。ほんとに、助かってよかった」

「あの...あなたは?」

「私はここの職員、リンドウといいます」

見ず知らずの僕を、ここまで気に掛けるとは、優しい人だ。


ただし、ここにこういう人がいるのは、正直かなり珍しい。

先ほどにも言った通り、この町はどうにもきな臭い。

それで、こういうところには、たいてい精神を張り詰めて生きている人が多いものだ。

人助けなどしようものなら、一斉にたたかれてしまう。

だから、前で人が行き倒れていても、放置しておくというのが普通なのだが...

僕を何かに利用しようとしているのか、とも考えたが見た感じ本当にただ優しそうなだけの人だ。

どういうことなのだろうか。



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