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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第4章 剣術を学ぼう

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第86話 変わりない日々を送ろう

 月曜、火曜と学校へ行って特に代わり映えのない日々を送る。誰かが接触してくることもなくて、今村さんが言ったように、僕を巡ってクラスメイトが駆け引きをしているなどとはとても思えない。


 まあ、今グループに誘われても困るだけなんだけど。祝日ならともかく、土日の予定はアーリア関係で埋まっている。放課後は補習だし、一緒に遊びに行こうとか言われても断るしかない。


 なんて思っていたら昼休み、購買のパンを食べた後は教科書を広げていた僕のところに今村さんがやってきた。


「柊クン、ちょっといい?」


「えっと、うん、大丈夫だよ」


 カラオケでは結構話をしたが、こうして教室で話しかけられるとは思っておらず、僕はちょっと挙動不審になった。


「これって柊クンだよね?」


 今村さんがスマホを僕に向ける。そこに表示されていたのはインスタらしき画面で、大阪駅直結の商業施設で服を両手に持って体に当てているメルの姿があった。端っこのほうに確かに僕の姿が写っている。その画像は“美少女ともやし”というコメントと共に投稿されていた。


「他人のそら似じゃないかなあ?」


 僕がすっとぼけると、今村さんは無言で別の画像に切り替える。その画像にはよりハッキリと僕の姿が写っていて、どうやら言い訳はできないらしい。


「はい。僕です」


「やっぱり! じゃあこの娘って知り合いなん?」


「ええ、まあ、一応?」


 歯切れ悪く僕が答えると、今村さんは食いつくように顔を寄せてくる。


「めっちゃ可愛いじゃん! なになに、なんの知り合い? カノジョ? この画像すっごいバズってて、1000年に1人の美女とか言われてるよ!」


 1000年に1度って数年おきくらいで定期的に出てくるよな。まあ、メルが可愛いことには全くの同意なのだけれど。


「って、バズってるの!?」


「だって全然関係ないあたしのところにまで流れてくる感じだよ。相当バズってるよ。あたしも思わずシェアしたし」


「シェアしたんだ……」


 シェアってなんだ? と思いながらオウム返しする。とにかくメルの映った画像がもの凄い勢いで拡散されているのだということは理解できた。こういうのって肖像権の侵害とかで問題にならないのかな? 例え問題になるのだとしてもメルの肖像権ってどうなるんだ? そもそもメルには日本の戸籍も、滞在許可も無いわけだし……。


「え? なんかマズかった?」


「こういうのって盗撮にならないのかなって」


「別に変な写真じゃないじゃん。むしろ可愛いし」


 そう言う意味では無いのだが、今村さんには通じなさそうだ。


「まあ、そこに写ってるのは僕で間違いないよ。一緒にいる女の子は友だち」


「外人だよね? どこで知り合ったの?」


「たまたま道を聞かれてさ。それで教えてあげたら仲良くなった感じ」


 メルと一緒に作ったカバーストーリーがここでも役に立つとは思わなかった。


「ふ~ん、じゃあ柊クン、この娘と連絡取れるんだ」


「取れると言えば取れるけど、忙しいから中々返事は来ないよ」


「やっぱりモデルとかやってるの? でも雑誌とかで見たことないけどなあ」


「普通に飲食店でバイトしてる感じだよ」


 話の要点は何処だと思いながら会話を続ける。わざわざ教室で僕に話しかけてきたということは、何らかの決着点があるはずなのだ。


「飲食店で? もったいなくない? せっかくこれだけ可愛いのにさ」


「そうかな?」


「そうだよ! 芸能界も大騒ぎだと思うよ。素人がこれだけバズったんだから、どこの事務所も躍起になって情報集めてるんじゃない?」


「そんなにバズってるの!?」


「分かんないけど、きっとそう」


「でもまあ、その辺は本人が決めることだしね」


 と答えたが、メルが芸能界に興味を示したとしても、その道を用意するのは難しいだろう。なにせ異世界からの来訪者だ。

 そう言うネタなら受け入れられるだろうが、ガチだから困る。

 法律の壁とか越えなきゃいけない壁が多すぎる。


 それに僕のキャラクターデータコンバートの技能が知れ渡るのもマズい。知れ渡る前に国とかに確保される恐れもある。異世界の技術や技能が国に齎す恩恵は僕なんかでは想像もできない。


 実際、魔術という技能を他の国に先んじて知ることができれば、その国が得る優位性はとても大きなものになるだろう。


「こういうのって消せないのかな?」


「これだけ拡散しちゃうとなあ。元画像が消えたところで、増えるだけじゃないかな」


 ネット拡散における消すと増えるってヤツか。確かに起こりえそうであるし、あの日メルの姿をスマホに収めた人の数は無数にいたはずだ。それをひとつひとつ消していってもらうというのも現実的ではない。


「はぁ、参ったなあ」


 僕はため息を吐いた。

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