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GAMELIZATION ~ゲーマライゼーション~ NPCの生存戦略  作者: 二上たいら
第3章 アーリアのダンジョンに挑もう

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第82話 メルを送っていこう

 そうして120分が過ぎた。最後の30分くらいは2人で話をしていただけだったけれど。食べたい時に食べられる環境で時間を過ごすことができるというのが、ビュッフェの醍醐味だ。


「美味しかったぁ。また来たい!」


「そのためにはアーリアのダンジョンで魔石を手に入れないとね」


 僕が日本円を稼ぐ手段はそれくらいだ。表向きダンジョンには行っていないことになっているから、その代わりに親からお小遣いをもらっているけど、その額は月に5,000円だ。2回も仕入れをしたら、底を突いてしまう。


「明日はダンジョンだね」


「そのためにもメルには防具を買って欲しいんだけどな」


「……あの店はやだ」


「もちろんメルの選んだ店でいいよ。メルが嫌だって言うならもうあの店には行かない」


「別にそこまで言う気はないけど……」


 口元を尖らせるメルの顔を見れば本音では行って欲しくないと思っているのが丸わかりだ。僕も若い女性に触れられてデレデレしてしまったという自覚はある。悪い人では無いと思うし、腕も良いんだと思うけど、態度は褒められない。僕に必要以上に構ったのもメルを揶揄う意図だろう。


 たぶん、僕だけで行ったら塩対応なんじゃないかなあ?


 とは思うが、試してみてメルの不興を買っても嬉しくない。


「僕も即決が過ぎたと思う。他の店も見て回れば良かったね」


「そうだよ。目端が利くのなんか商売人じゃ当たり前なんだから!」


 僕らはJR大阪駅から大和路快速に乗って帰路に就く。家に帰り着くのは21時前になるだろう。土曜日の夜ということもあって、遅い時間だが乗客は多い。


「夜なのにぼんやり空が明るいね。お星様があんまり見えない」


「地上が明るいからなあ。大阪の夜は本当に眩しいくらい明るいんだよ」


「みんな眠らないの?」


「アーリアでは夜通し祭りをやるようなことはない?」


「それだったら夏至祭かな。大人たちはみんな朝まで飲んだり歌ったり踊ったりするの」


「毎日それをやってる人がいる感じかなあ。みんなじゃないけどね」


「だから灯りが途切れないんだね」


 益体もない話をしながら、僕らは電車に揺られる。地元の駅に到着したのはやっぱり21時前くらいになった。


「タクシーを使ってもいいけど、車の音で帰ってきたことがバレても不味いな」


 僕はメルを送り届けてから自宅に帰ることになっている。メルと一緒に家に帰ってきては不自然だ。


「歩いて帰るか。メルは大丈夫?」


「いっぱい食べたし、ちょっと歩くくらいがちょうどいいよ」


 そう言うわけで街灯に照らされた夜の道を歩く。夜と言ってもまだ21時くらいだから、人の姿はそこらに見かける。同じ駅で降りて、同じ方向に歩く人も少ないながらいる。流石に同じ住宅街に入っていく人まではいなかったけど。


 僕は音を立てないように注意して家の戸を開こうとすると鍵が閉まっていた。鍵を差し込んで回すのにも細心の注意を払った。玄関辺りに人の気配が無いことを確認して、扉を開ける。廊下にも誰もいなかった。


「静かにね」


 小声でメルに言って、2人で僕の部屋へ。アーリアにキャラクターデータコンバートする。転移先のアーリアの部屋は真っ暗で、僕はスマホのライトを付ける。窓を押し開けると、夜のアーリアは街灯こそ灯っているが薄暗い。


「宿まで送っていくよ」


「大丈夫だよ。酒場の仕事が長引くとこれくらいだし」


「それでも送っていくよ」


「じゃあお言葉に甘えちゃうね」


 僕らは夜のアーリアを歩く。1ヶ月ほど住んでみたから分かるけど、大通りに限ればアーリアの治安は悪くない。衛兵が頻繁に巡回していて、あんまり遅い時間じゃなければ女性の一人歩きも見受けられる。1本奥に入るとまったく違ってくるけれど。


 トリエラさんの宿は大通りに面しているので、そういう意味でもメルにとっては都合がいいのだろう。僕らは並んで歩きながら、今日という日の感想を伝え合う。


 朝からメルを連れて魔石を売りに行って、仕入れをして、売りに行って、防具を買いに行って、服を買って、ご飯を食べた。とんでもない密度だ。


「この服、大事にするね」


 メルはスカートの端を摘まんでそう言う。


「メルが自分で稼いだお金だよ」


「それでもひーくんが選んでくれた服だから」


 メルは嬉しそうに笑う。そうやって笑ってくれると僕も嬉しくなる。こうやって男は女の子に貢いでいくんだな。いや、メルのお金だけど。


 トリエラさんの宿の食堂エリアはもう閉店していて、カウンターも無人だった。


「送ってくれてありがとう。また明日だね」


「ああ、また明日」


 僕らは手を振り合って別れる。こうして10月30日は終わった。

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