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ユニークスキルで異世界と交易してるけど、商売より恋がしたい ー僕と彼女の異世界マネジメントー  作者: 二上たいら
第3章 アーリアのダンジョンに挑もう

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第74話 メルのご機嫌を取ろう

 これで金貨10枚が妥当なのか、ちょっと僕には判断が付かない。肝心のメルはなんだかへそを曲げてしまったようで、つーんと明後日の方角を向いている。金貨10枚と言えば、僕基準で日本円に換算して130万円くらいかな。決して安い買い物ではない。


 日本で130万円出したら、それなりのプロテクターが買えるだろう。多分、この装備より性能は高い。だけど日本円を稼ぐにはアーリアのダンジョンで魔石を手に入れるしか無い。そのアーリアのダンジョンでの安全性を買うのだから、アーリアのお金は惜しくない。


「買います」


「あざーっ」


 女性はカウンターの中に戻って金貨10枚をざらっと引き出しの中に入れた。


「ところで革製品ってのは手入れが大事でね」


「商売上手ですね」


「お安くしとくって」


 僕は銀貨5枚を追加で支払って革製品の手入れ用具一式を手に入れる。これくらいの動きやすさならメルも防具を買ったほうがいいと思うんだけど……。うん、完全にそっぽを向いてしまっている。


「修繕が必要になったらどうしたらいいですか?」


「ウチに持ってきてくれれば制作した工房に依頼できる。直接持って行ってもいいけど、部位によって工房が違うし、探すのも大変だろ。ウチに持って来いよ」


「分かりました。そうします。ありがとうございました」


「おいおい、客が礼を言うのかよ。まあ、いいけど。また来いよ」


 そう言って椅子に腰掛けた女性は半目に戻る。


「来なくてもいいぞ」


 どっちだよ。と、思ったが口にはしない。独特のスイッチを持った人だ。僕はメルを促して店外に出る。


「自分としては良い買い物だったと思うんだけど、メルはご機嫌斜めだね」


「だってあの人、なんかムカつくんだもん! 私嫌い!」


 誰とでも仲良くなるイメージのあるメルにしては珍しい強い拒絶だ。


「分かったよ。次からあの店に行くときは1人の時にする」


「それはもっとやだ!」


 まるで駄々っ子だ。うーん、困ったなあ。メルの防具もどこかで買いたいんだけど、そんな雰囲気ではない。かと言って第4層に挑むのであればメルも多少の防具は身に着けていて欲しい。


 水琴も小学生の頃はこんな感じで訳の分からない癇癪をよく起こした。慌ててお菓子を買いに走ったものだ。メルを水琴と同列に扱うのもどうかと思うが、他に女の子のご機嫌取りの仕方なんて知らない。


「日本にはケーキってお菓子があってさ」


 多分目的地も無く、ずかずかと足音も荒く歩いて行くメルを追いかけながら、その背中に声をかける。


「ふわっと柔らかく焼いた生地に、甘いクリームをたっぷり乗せて、フルーツなんかも添えるんだ」


 メルの足運びが少しゆっくりに変わる。


「見た目もとても可愛らしくて食べるのがもったいないくらいのものもある」


 ゆっくりにはなったがメルは歩みを止めない。それくらいじゃ釣られないんだからねと背中が語っている。


「日本にはそんなケーキが食べ放題のお店があります」


 メルはついに足を止めた。ぷるぷると肩を震わせていたかと思うと、ガバッと振り返った。


「連れてって!」


 はい、1名様ご案内。

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